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「韓国のアマゾン」創業者に国民の厳しい視線-火災や労働環境巡り

  • クーパンCEOのボム・キム氏に労組や顧客から批判
  • 6月の物流センター火災で消防士1人死亡-長時間労働の指摘も

「韓国のアマゾン」と呼ばれるクーパンの創業者ボム・キム(キム・ボムソク)氏が築き上げた富は一時89億ドル(約9770億円)に達した。韓国では経済を長年牛耳ってきた財閥(チェボル)一族に代わり、テクノロジー分野の起業によって一代で財産を成した新世代の資産家が台頭しており、キム氏はそれを代表する存在となっている。

  これら資産家は旧世代の経営者と異なり、社会への還元に積極的で、従業員への配慮がより行き届いているとされていた。ソフトバンクグループが出資する電子商取引大手クーパンは、スタッフや第一線で働く従業員に対し、3月のニューヨーク上場の際に約9000万ドルの株式報酬を約束した。

  しかし、大規模な新規株式公開(IPO)からわずか数カ月後、クーパンは一連の問題への対応に追われており、一部の国民はクーパンおよび同社の最高経営責任者(CEO)を務めるキム氏に対する態度を改めつつある。

Key Speakers At The 2019 Milken Conference
ボム・キム氏(2019年)
 

  クーパンは6月の物流センター火災を受け、労働環境について組合や顧客から新たな批判に直面している。火災後のボイコットもあり、クーパンのアプリはデーリーユーザー数が一時70万人余り減少する日もあった。キム氏がグローバル経営に専念するためクーパン取締役会の会長を辞任するとの発表が火災事故当日と重なり、責任を逃れるためだとの見方が広がったことも油を注いだ。

  ソウル大学行政大学院の朴相仁教授は、「たたき上げの起業家は特権階級に組み込まれつつある」と指摘。「新しい種類のチェボルとなりつつある」と述べた。

  ブルームバーグ・ニュースの質問に対し、クーパンは全ての従業員の福利に深い関心があるとし、「健康と安全を守る責任を真剣に受け止めている」とコメント。全従業員の資産形成のため多額の株式を付与することで、職場における一層の平等の達成に取り組んでいるとした。また、中小企業支援を通じた社会全体への貢献も挙げた。キム氏の会長辞任については、火災前に政府のウェブサイトを通じて開示されており、時期が重なったのは偶然だとした。

  韓国ではスキャンダルが続く家族支配のチェボルに対する国民の目が依然として厳しく、新世代の起業家はそれと異なり、社会に利益をより大きく還元すると期待されていた。例えば、メッセージアプリ「カカオトーク」で知られるカカオの創業者で、韓国一の富豪となった金範洙(キム・ボムス)氏は、資産の大半を寄付すると表明している。

カカオ創業者、保有資産でサムスン創業家トップ抜く-韓国一の富豪に

  クーパンの先行きは、物流センター火災と消費者態度の変化が事業に打撃を与えるかどうかに左右されそうだ。4-6月(第2四半期)決算では赤字が拡大した。火災の影響に加え、国内外での事業拡大に多額の資金を投じたことが響いた。株価は上場以来、18日までに7.5%下落している。

  ソウル生まれのキム氏(42)は子供の時に米国に移住し、米市民権を取得している。ハーバード・ビジネス・スクール中退後、韓国に戻りクーパンを創業した。純資産はピーク時から減少したが、ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、それでも57億ドルとなっている。

  6月17日に利川の物流センターで発生した火災では消防士1人が死亡。 火災警報器のスイッチをオフにし、スプリンクラー作動を遅らせた疑いで、同センターの防災などを請け負っていた会社の従業員が逮捕された。

  クーパンのサービスをめぐっては、顧客への翌日配送の保証が作業員に長時間労働を強いているとの批判も続いていた。

Inside Coupang Fulfillment Center As The E-commerce Giant Files for IPO
クーパンの物流センターの外を走る配送トラック
 

 

原題:He Built an $8.9 Billion Fortune. Then Controversies Began (1)(抜粋)

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