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東京五輪に残った遺産、施設運営は収益面に改善余地ーIR誘致も

  • 2900億円で7つの競技施設建設、大半は年間収支赤字の見通し
  • スポーツ施設単独の黒字化は難しい、ネーミングライツなどの方法も

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一日1万人超の新型コロナ新規感染者、期間延長・区域拡大の緊急事態宣言、猛暑に台風、無観客。異例ずくめの東京五輪は閉幕したが、競技のために建設された施設の多くは年間収支計画が赤字で、「負の遺産」に変わるリスクもはらむ。

Members of the Public Watch the Olympics Closing Ceremony as Games Conclude

閉会式の様子(8日)

  今大会では、約2900億円を費やして7つの恒久競技施設を新設した。だが、このうち民間企業に運営を任せる有明アリーナと、計画未定の国立競技場を除く5施設で、収支が赤字になると見込まれている。

  SBI証券の小澤公樹アナリストは、施設の赤字が続けば、会場周辺で不動産開発を行う企業などに負担が転嫁されるリスクもあると話す。都や区から、「巡り巡って恩恵を享受する住民やデベロッパーにつけが回る可能性がある」ため、施設運営には収益面の改善余地があると指摘する。

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  また、当初は仮設の予定だったスケートボードなどアーバンスポーツの施設も、恒久施設に転換する方向で都は現在、検討を進めている。

五輪向けに新設された恒久競技施設

会場

整備費

(億円)

年間経費

(億円)

年間収支

(億円)

開催後の用途
国立競技場156924未定

将来のサッカー・ワールドカップ誘致などを見据える

パラリンピック後にトラックを撤去、

8万人収容の球技専用競技場に改修

東京アクアティクスセンター5679.9▲6.4

競泳ワールドカップなど、年間100大会の開催が目標

子供水泳教室、エアロビクス教室など開催

海の森水上競技場3032.7▲1.6

カヌー、ボートなど世界大会年1回誘致が目標

ドラゴンボートやカヌーの体験会開催

有明アリーナ3708.93.6

バレーボールワールドカップなど、年間10大会開催が目標

eスポーツや、コンサート開催も

カヌー・スラロームセンター783.5▲1.9

カヌーなど水上大会年間7大会誘致が目標

カヌーやラフティングのレジャー体験会実施

大井ホッケー競技場481.5▲0.9

ホッケーの国内外大会など年間23大会開催が目標

サッカー、ラクロス、アメリカンフットボールの練習場にも

夢の島公園アーチェリー場0.2▲0.1

アーチェリー国内大会など年間20大会開催目標

都民憩いの場として自由に利用できる芝生広場

選手村1057(注)分譲・賃貸マンション

出所:東京都の資料、報道を基にブルームバーグが作成。▲は赤字 

注:選手村は建設工事費を記載

  小澤氏は、収支の改善は「スポーツ施設単独ではなかなか厳しい」と指摘する。考えられる方策は、民間への移管や、施設命名権(ネーミングライツ)の売り出し、スポーツ以外のイベント開催やインバウンド需要の取り込みなどだ。国内のネーミングライツとしては「味の素スタジアム」の導入例があるが、いまも所有企業は年間2億円超の収入を得ている。

  唯一、黒字経営が見込まれる有明アリーナは、都が電通グループらと46年3月までの25年間の運営権契約を結んだ。1万5000人の収容力を生かし、ライブコンサートなどの利用が見込まれている。

東京都の計画

  競技場が多く作られた湾岸エリアは、カジノを含む統合型リゾート(IR)の候補地としても注目が高い。負の遺産にしないためにもエリア全体の価値を維持する必要があり、小澤氏は「突き詰めれば、IRの誘致も価値を高める一つの方法」だと話す。

  UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント日本地域最高投資責任者の青木大樹氏は、有明エリアに「オリンピックのレガシー(遺産)特区」を作り、IRリゾートや国際会議施設の拠点にすることが考えられると話す。

  都の計画には、ベイエリアに約1000ヘクタールの土地となる新しい埋め立て地としてのポテンシャルがあると記されている。今年3月に策定した「 東京ベイeSGプロジェクト」によると、2030ー2050年にかけて地下鉄の延伸、羽田空港アクセス線などの事業化に順次着手するほか、区部中心部と臨海副都心を直接繋ぐ臨海地下鉄の事業化に向けた検討も行う。

Views of Ariake Arena at the Tokyo Olympic Games

有明アリーナ(6日)

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  同プロジェクトの前身の「東京ベイエリアビジョン」の官民連携検討会メンバーを務めた東京大学大学院工学系研究科の中島直人准教授(都市工学)は、「もともと東京の資産を生かした開催だったのが、膨大な建設費でかなりが新築された」と振り返る。新設された恒久施設を負の遺産にしてしまわないためにも、運営には工夫が求められる。

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