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LGBTQ活躍も性別二元論は重し-東京五輪は多様性掲げる

  • 「何がつらいかも分からないくらい、つらかった」-杉山文野氏
  • 「もっと当たり前に自然体でいられる世の中に」-齊藤夕眞選手
Tokyo Olympics Fires Ceremony Director Over 1998 Holocaust Joke

Photographer: Behrouz Mehri/AFP

性的少数者(LGBTQ)であることを公にするアスリートが東京五輪で大活躍する一方、多くの競技が男女別であるため、マイノリティーである彼らの機会は失われ続けているとの声がある。

  フェンシング元女子日本代表のトランスジェンダー、杉山文野氏は男女別が根付いた文化に従うよう求める圧力が一部のLGBTQ選手を疎外していると指摘する。

  杉山氏は自身の子供時代のスポーツ体験について、「一番最初は水泳、でも女性用の水着がどうしても嫌でやめた」と振り返る。「バレーボールは好きだけどブルマーは嫌だとか、テニスも好きだけどスカートはきたくないなと」と、インタビューで語った。

Fumino Sugiyama

杉山文野氏

  同氏は最終的にユニフォームに男女差がない数少ないスポーツの一つであるフェンシングに出会い、女子日本代表というレベルに達したが、その道をあきらめて、男性として生活することを選んだ。学校の部活や更衣室でのつらい記憶があるLGBTQは多いとも語った。

  東京五輪参加のLGBTQ選手は計182人と、2016年のリオ大会の56人を上回り過去最高。アウトスポーツのウェブサイトが示した。ここに日本チームの人数は含まれていない。開催国である日本では同性婚が現行法で認められないなど、理解を進める法整備が整っていない。

  杉山氏は自身の心と体の性不一致が知られてしまうのではないかとアスリート時代にしばしば不安を抱き、自信が揺らいだと振り返る。コーチにはショートヘアをからかわれ、ボーイフレンドはいないのか質問された。私生活についての情報交換がスポーツでチームビルディングの一部であるのに、自分の本当の姿を仲間に明かせないことで罪悪感にさいなまれたという。

  フェンシングを辞めた背景について、「チームメートとなかなか意思疎通ができなかったのが大きい」と杉山氏。「男性としていたかったら、競技者としていられなかったし、競技者としていれば、自分らしくいられない。両立できない。ホルモン投与はドーピングになったし、受け入れられるかも分からないし、人間関係もうまくいかないし、何がつらいかも分からないくらい、つらかった」と語った。

  女子サッカーの齊藤夕眞選手は26歳の時にいったん引退している。どちらのジェンダーにも違和感を感じていたためという。乳腺切除手術を受け、改名し、男性ホルモンのテストステロン投与も受け始めた。しかし、体調を崩したため、9カ月で投与を中止し、別の女子チーム「ヴィアマテラス宮崎」でサッカー人生を再開した。

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齊藤夕眞選手

  齊藤選手はインタビューで、「日本は特に性別二元論が残る社会」と語る。理解が進む国と比較した場合、「いろんなことを男か女かで判断することが多い。どっちでもいいんじゃないかというより、男なのか女なのかと。男らしく、女らしく、らしさはその人によって違うと私は思う」と続けた。

  また、26歳当時の自分が「今の自分から話を聞いていたら、本当の自分の気持ちをもう一度、考え直したかもしれない」とも述べ、ホルモン治療や一時的な引退がなかった可能性を指摘。「引退して、本当に大好きなサッカーをやめてまで男性になりたかったのかと自分に問い始めた。今の日本で今後生活するためには自分は男か女どちらで生きていくのが生きやすいのか?女性で生きていくイメージより、男性として生きていくイメージの方が自分に当てはまった。そんな感覚で自分の答えを出していたんじゃないのか」と振り返った。

  多様性は今回の五輪の大きなテーマの一つ。男性同性愛者で男子シンクロ高飛び込みで金メダルを獲得した英国代表トム・デーリー選手は、メダルもそうだが編み物する姿が日本ではソーシャルメディア上で話題を集めた。トランスジェンダーのクイン選手はサッカーのカナダ女子代表として試合に出場した。最も物議を醸したのはニュージーランドの女子重量挙げのローレル・ハバード選手だろう。性別適合手術での性の転換を公表している初の五輪出場選手となったからだ。

  パデュー大学のシェリル・クーキー教授は「ハバード選手によって、トランスジェンダーのスポーツ参加が認知されるようになってきている」とプラス効果について述べた。

  一方で、女性として生まれたことに違和感がない女子選手にとってはマイナス要因であり、ルールの変更が必要だと主張する向きもある。女性の権利を擁護する英団体「フェア・プレー・フォー・ウーマン」は国際オリンピック委員会(IOC)がトランスジェンダーに女子競技への参加を認めたことについて、女子選手に対する差別になると主張。女子は成長過程で、多くのスポーツで男子選手の能力を高めるテストステロンの水準が高くなることがないからだ。

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ニットを手にするトム・デーリー選手(8月2日)

  同団体の広報を担うニコラ・ウィリアムズ氏は、「スポーツ分野でトランスジェンダーのための解決策を見いだす必要はあるが、その解決策が女性を除外するものであってはならない」とし、「ある少数派グループが別の少数派グループを排除していることになってしまうからだ」と述べた。

  公正さを巡るこうした議論にサッカーの齊藤選手は理解を示す。一時的にでもテストステロンのホルモン治療を受けた選手とは対戦したくない気持ちの女子サッカー選手はいるという。その上で、同じ問題に悩むアスリートたちに対し、よく知ること、そして本当の自分の気持ちがどこにあるのかをよく考えることの重要さを説く。

  過去の自分は「LGBTまで知っていたけどQを知らなかったとか、中途半端に知っていたことで、少ない選択肢の中で自分を当てはめたりしてた」と振り返り、「そもそも何かに自分を当てはめる必要があったのか」と自問。「周りにどう言われるか、思われるかじゃなくて、どうありたいか。本当の自分の心や思いはどうなのか」を考えるのが大切だと助言した。「みんながもっと当たり前に自然体でいられる世の中にしていくことは必要だと私は思う」とも述べた。

原題:Gender Norms Still Hurt LGBTQ Athletes Despite Olympic Profile (抜粋)  

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