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無観客に「別世界」の選手村-コロナ対策で異例ずくめの東京五輪

  • 「全く文字通りファンファーレなし」-女子サッカーの米代表選手
  • 選手らの安全を守ってくれていると評価-男子フェンシング香港代表

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が続く中で開催されている東京五輪は異例ずくめだ。だが選手らが最も戸惑っているのは、無観客のスタジアムやアリーナで試合に臨まなければならないということだろう。

  ビートを多用した音楽や照明が大歓声代わりだが、選手たちは極めて静かな会場でメダル獲得を目指す。数万人を収容できるスタジアムでは静けさに圧倒されそうだ。柔道などの試合会場ではチームメートが観客の不在を補おうと声をからす。自転車競技やマラソンなどなら沿道からの声援を浴びることは可能で、選手村と競技会場を行き来するバスから、手を振るファンに応えようとする選手もいる。

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男子ビーチバレー予選ラウンドの米国対アルゼンチン戦(東京の潮風公園、7月29日)

  男子バレーボールの米代表マシュー・アンダーソン選手は「やり抜くためにチームと自分自身を強く鼓舞したい」と話す。7月28日に行われた対チュニジア戦でチームメートを応援し声もかすれ気味だ。スタンドで声援を送ってくれたのは米国の女子チームだけだった。

  東京での感染再拡大を受け、日本政府が東京都に4回目の緊急事態宣言を発令すると決めたのは8日。その後、大半の競技会場を無観客とすることが決まった。国外からの観客受け入れは3月に断念していた。

  女子重量挙げのフィリピン代表ヒディリン・ディアス選手は母国に初の金メダルをもたらした。「母や友人、大勢の人々がその場にいてほしかった。そうであればもっと素晴らしい瞬間になったと思う。そのことを想像したが、これが現実だと今は受け入れなければならない」とマニラで記者団に29日語った。

Olympic Venues As Tokyo Ends Virus Emergency A Month Before Games

東京五輪・パラリンピックの選手村

  大会組織委員会などが決めた無観客を中心とする開催は、新型コロナの感染再拡大に伴う東京都での緊急事態宣言再発令などを受けた判断だ。こうした厳しいコロナ対策は、選手らが試合と練習を除き選手村に閉じ込められることを意味する。定期的な体温測定とコロナ検査も義務付けられ、検査で陽性が確認されれば、直ちに隔離され競技への参加は禁じられる。

  1年余りにわたるパンデミック期の大半でこうした衛生措置は今やどこであれ見慣れたものになったが、五輪のような大イベントが無観客で行われるというのはやはり多くの選手を不安にさせている。

  女子サッカーの米代表メーガン・ラピノー選手は「全く文字通りファンファーレなし」だと言う。「看板があり、ストラップも手に入れた。五輪を感じさせるものはある。でも確実に少し違う」と話す。

  飛び込みのような競技では、選手にとって歓声はよく演技ができたかどうかの重要な目安となる。女子10メートル・シンクロ高飛び込みで銀メダルを獲得し、この種目で米国に初めてのメダルをもたらしたデレーニー・シュネル選手は「水中から出れば歓声を耳にする。アドレナリンを与えてくれる観客がいなければ厳しい」と指摘する。

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シュネル選手(左、7月27日)

  会場での応援を望む家族と来日できず観客もいないことを耐え難いと感じる選手もいる。女子バスケットボールのオーストラリア代表リズ・キャンベージ選手はインスタグラムへの投稿で、出場辞退を決めた理由として自身のメンタルヘルスなどへの影響を挙げた。

  東京都をはじめ日本国内の新規感染者数が過去最多を更新する中で、五輪関係者の感染も増えており、コロナ対策の実効性に今後数日注目が集まる。

  それでも日本で陽性が判明した五輪選手は今のところ30人を下回っている。国際オリンピック委員会(IOC)のマーク・アダムス広報部長は、選手村ではコロナ検査と外部との遮断を厳しく実施していることから選手らは「パラレルワールド(別世界)で生活している」ようなものだと述べた。

Behind the Scenes at the Olympic Badminton Venue as Cases Linked to Games Continue

バドミントンの試合会場(武蔵の森総合スポーツプラザ、7月28日)

  男子フェンシングの香港代表、張小倫選手は組織委員会側が選手らの安全をできる限り守ってくれていると評価している。東京に向かうに当たり、多くの国から来る人々が集まる選手村を「世界で最も危険な場所の一つ」のように考えていたという。だが今は新型コロナや感染者数を気に掛けることはほとんどないと、チームメートへの応援でかれた声で語る。

  ただ、男子サッカーの南アフリカ共和国代表チームなどコロナ対策の厳格さを痛感している参加者もいるのは確かだ。選手2人とサポートスタッフ1人が選手村初の陽性確認となった同チームは1次リーグで3連敗を喫し、東京を去ることとなった。デービッド・ノトアン監督は「汚名を着せられたという問題には触れなければならない」とし、「われわれに出くわした人々が走り去ったのを目にしたが、少し失礼だと思う」と述べた。

原題:Olympic Athletes Struggle With Arenas Devoid of Cheering Fans(抜粋)

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