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プランBがないオーストラリア、新型コロナ「撲滅」戦略には限界

  • ワクチン接種の遅れで国境開放できず孤立が長引く
  • 「COVIDゼロ」戦略に限界、デルタ株侵入阻止できず

ほんの数カ月前、新型コロナウイルス感染症(COVID19)を事実上ゼロに抑え込んだオーストラリアは世界の羨望(せんぼう)の的だった。しかしデルタ変異株が運命を反転させた。

  ほぼ半年間、比較的普通の日常生活が送れていたシドニーは現在、厳格なロックダウン(都市封鎖)の3週目に入っている。封鎖措置は14日に、少なくとも今月30日まで延長された。普段はにぎやかな中心業務地区(CBD)にはほとんど人影もなく、学校は閉鎖され、約600万人の市民は他の世帯との交流を禁じられている。

AUSTRALIA-HEALTH-VIRUS

人影まばらなシドニーの中心業務地区(7月13日)

  米国と英国は経済活動を再開させたが、オーストラリアは1日の感染者数がニューヨークの3分の1、ロンドンの3%未満であるにもかかわらず、先へ進むことができないようだ。航空会社の乗務員を乗せたワクチン未接種の運転手が先月感染して以来、シドニーでは約900件の感染が報告されている。ニューサウスウェールズ州では15日に65件の新規感染が報告され、16日にはさらに増えると予想されている。

  「COVIDゼロ」戦略を信奉し実践するオーストラリアは、厳しい隔離、迅速な封鎖、出国すら許さない国境閉鎖によって、新型コロナの影響を抑え込んできた。

オーストラリアの「COVIDゼロ」戦略についてシドニーからGeorgina McKay記者が報告

https://bloom.bg/3wELQYk(出典:Quicktake)

  しかし、ワクチン接種は遅れており、新種のより毒性の強い変異株に侵入を許すと、感染拡大に見舞われた。

  同様にCOVIDゼロを目指したシンガポールや台湾と共に、オーストラリアは撲滅戦略を追求し続けることの困難を感じている。ワクチンは唯一の真の長期的解決策とみられるが、オーストラリアは初期の成功ゆえにその確保と接種拡大で後れを取った。

  モリソン首相は3月に、ワクチン接種について「競争ではない」と述べていた。接種が遅れている現在、早期に幅広い製薬会社から十分なワクチンを確保しなかったことで専門家や野党からの批判にさらされている。

Inside A Covid-19 Vaccination Center In Melbourne

ワクチン接種会場で登録のために並ぶ人々(メルボルン、6月8日)

  ニューサウスウェールズ大学の非常勤教授(感染・免疫学)、ビル・ボウテル氏は「モリソン首相はオーストラリアのCOVIDゼロの状況を自慢していたが、デルタ株が侵入する前にワクチン接種や隔離について効果的な対策を何も採らなかった」と批判。「ウイルスを生み出すのは自然だが、パンデミック(世界的大流行)を長引かせるのは失政だ」と付け加えた。

  ブルームバーグのワクチン・トラッカーによると、オーストラリアは人口の18%に十分なワクチンを投与した。米国は52%、英国は61%だ。オーストラリアのワクチンの中心はアストラゼネカ製だが、40歳未満への接種に関するさまざまな情報が市民の間にためらいを生んでいる。

Late to the Race

Australia lags behind Group of 20 peers in vaccine shots

Source: Bloomberg Vaccine Tracker

Note: Represents % of population covered by number of doses given

  隔離システムの不備も指摘される。海外から帰国した市民はホテルで2週間の隔離を義務付けられるが、これらのホテルの外での今年の感染事例約20件は隔離義務違反が感染源になっているとの指摘もある

  シドニーのロックダウンは数週間続く公算が大きく、短期的には経済収縮の引き金となる可能性があると、オーストラリア・コモンウェルス銀行が14日に指摘した。シドニー以外の住民も次のロックダウン対象となるのを心配している。メルボルンは昨年、世界でも最も長く、厳しい部類のロックダウンを3カ月間経験。 感染の撲滅には成功したが、経済的コストも大きかった。

General Views In Melbourne As Australia’s Victoria Enters 7-Day Lockdown

ロックダウン中のメルボルン(5月28日)

  マッコーリー大学のマリオン・マドックス名誉教授(政治学)は、「オーストラリア人は、感染発生によって生活が大きく妨げられるとの懸念を常に抱いている」とし、「全てがコントロールされているという雰囲気だったが、今ではワクチンの準備不足という評価を受け、国民のいら立ちは増している」と話した。

  米国や欧州との比較では違いが際立つ。これらの国・地域は、毎週何千件もの新規感染が報告されにもかかわらず、経済を再開している。感染拡大リスクは必然的に高まるが、欧州連合(EU)では人口の約40%が必要な回数のワクチン接種を終え、あるフランスの高官の言葉の通り、多くの国が「ウイルスと共に生きる」時だと判断している。

  ブルームバーグのCOVIDレジリエンス(耐性)ランキングの最新版で、オーストラリアはトップ10にとどまったが、出入国制限が緩和されないため、順位は4つ後退した。

首位は米国、鍵は「正常化」-新型コロナ時代の安全な国ランキング

Sagging business sentiment a risk to GDP rebound

原題:With No Plan B, Australia’s Covid Zero Strategy Hits Limit (2)(抜粋)

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