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トヨタ・パナ電池会社、コスト競争力で中韓勢超え自信-原価低減

更新日時
  • 25年まで最大7割原価減、EV化加速で従来目標引き上げ-好田社長
  • 南米のリチウム塩湖で原価改善、日本の製造業の「最後の砦」死守へ

トヨタ自動車パナソニックが出資する車載用電池会社、プライムプラネットエナジー&ソリューションズは、2025年までに最大7割の原価低減に取り組む。自動車メーカーが電気自動車(EV)へのシフトを強化する中、コスト面でも中国や韓国メーカーの優位に立つため、効率化目標を大幅に引き上げる。

  プライムプラネットの好田博昭社長が都内のインタビューで明らかにした。同社は昨年4月に操業を開始。秋には開発や生産準備工程の生産性を10倍にするなどの計画を公表したが、その後のEV化の加速に合わせて目標を一段と引き上げる。

Prime Planet Energy & Solutions' Lithium-ion Batteries

プライムプラネットエナジー&ソリューションズのバッテリーセル

Source: Prime Planet Energy & Solutions Inc.

  好田社長によると、開発や生産準備工程に加えて設備投資の削減、自社とサプライヤーの生産現場の効率化の4分野での取り組みを進め、22年までに電池の原価を40-50%削減することを見込んでいる。さらに25年までに生産性を22年比で倍にするなど新たな目標を設定して65-70%の原価低減を目指すとしている。

  好田社長はさらなる効率化が必要となった理由について、各国の環境政策や顧客の動向などから「もう一段やらないと戦っていけないだろうというのが分かってきた」ためと説明。EVなどの普及に必要な価格水準を考慮すると、電池も「これぐらいにしておかないと買っていただけない」と述べた。

  プライムプラネットにはトヨタが51%、パナソニックが49%出資する。ハイブリッド(HV)車用の電池で世界シェアは25%と首位。だが、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)向けは8位前後で、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)、韓国LG化学などに差をつけられている。

Prime Planet Energy & Solutions President Hiroaki Koda

好田社長

Source: Prime Planet Energy & Solutions Inc.

王道  

  トヨタは5月、電動車の世界販売が30年に約800万台になるとの見通しを示した。その内、ゼロエミッション車であるEVと燃料電池車(FCV)は200万台を占める。

  ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストによると、トヨタはこれまでEVに関する取り組みへの情報開示に積極的でなく、市場からEVで遅れているとの疑念を招くこともあった。そのトヨタがEVに本腰を入れると発表した以上、必要となる電池の量はHVより各段に増えるとの見方を示す。

  その上で、吉田氏は日本の自動車メーカーや電池メーカーは品質や安全性を重視し、厳しい条件下で実験を重ねる傾向があり、コスト面が弱点とされてきたと指摘。プライムプラネットは「手抜きをせず真面目に愚直に生産性向上を通じてコスト低減をする」というオーソドックスな手法で競争力向上に取り組んでいると述べた。

  プライムプラネットは、日本や米国、欧州メーカーらと幅広い取引があり、トヨタ向けは全体の半分以下だ。初代プリウス以来、20年以上電動車を手掛け、高性能・高品質を強みとしてきた。好田社長は、コスト競争力でも22年に中韓勢を上回り、その後も優位性を維持することに自信を示す。

トヨタ生産方式

  リチウムやコバルトなどの資源は電池コストの約3割に及び、調達の効率化は欠かせない。トヨタ生産方式の専門家でトヨタで常務役員まで務めた好田社長は、19年末にアルゼンチンとチリの国境付近にあるリチウムを採取する塩湖に足を運び、現地の経営者や作業員らと原価低減活動に取り組んだ。

  東京からアルゼンチンのブエノスアイレスに飛び、飛行機を乗り継いで3時間、塩湖はそこからさらに車で4-5時間の場所にある。アンデス山脈の高度約4000メートルの地点で、酸素ボンベを装着しての視察となったが、作業手順や在庫整理など約100の項目の改善点が見つかったと話す。

  一方、今年4月には電池や電池材料、部品メーカーなどで構成する電池サプライチェーン協議会(BASC)を立ち上げた。半導体や液晶を引き合いに「電池は日本のものづくり最後の砦という期待」があるとし、サプライチェーン全体で海外勢に対抗するため、とりわけ中小規模の部材メーカー支援を政府に期待したいと述べた。

  環境問題重視の米バイデン政権が今年発足したこともあり、EV化の流れは一気に加速してきた。米フォードは5月、韓国の電池メーカー、SKイノベーションと米国の2工場でEV用電池を共同生産することで合意。独フォルクスワーゲンも欧州だけで6つの電池工場を建設する意向を明らかにしている。

反射神経と瞬発力

  プライムプラネットには、パナソニックから引き継いだ兵庫県内の数カ所と中国・大連の生産拠点があり、22年からは徳島工場(HV年産50万台分)での生産を始める予定だ。

  好田社長によると、電池ビジネスは半導体や液晶以上に固定費が高く、競合他社では規模を確保してコストを下げる取り組みが主流となっているが、同社としては中長期の生産能力の増強計画は決まっていない。電動化が本格的に進む30年に向けた商品計画が顧客の自動車メーカーから示されていないためだ。

  「私たちはまだ電動化の出口としてHVかEVか分からない。そういう不透明な中で、いかにスピーディーに自動車メーカーのいろいろな方針についていくか」。

  好田社長は自動車メーカーの方向性がはっきりするのは24ー25年ごろとみており、大事なのは「ベースでしっかり稼げるビジネスにしていくこと」だと強調。どんな状況にも迅速に対応できるよう、今は「徹底的に反射神経と瞬発力を上げていく」と述べた。

  次世代電池の本命と言われる全固体電池については力を入れているとし、先行開発を進めるトヨタやパナソニックと連携して実用化を目指す考えを示した。

  一方、高価な金属のコバルトを含まず、米テスラなどが力を入れるリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)についてはトヨタは採用する可能性があるものの、「一からそれをやるより開発生産性を上げたり競争力あるものを提供することに集中するべき」としてプライムプラネットとしては取り組まないと述べた。

(アナリストのコメントを追加して更新します)
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