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債券ETFに内在する流動性リスク、新型コロナ危機で露呈

  • 指定参加者のレバレッジが裁定取引参加意欲に影響-ラダッツ氏研究
  • 市場混乱時に価格乖離長引かせる恐れ-APに格差埋める義務なし

新型コロナウイルス禍が引き起こした昨年の世界的な資産暴落は、1兆ドル(約110兆円)超の規模を持つ上場投資信託(ETF)市場の重要な弱点を浮き彫りにしたかもしれない。

  債券ETFがETFの価格と保有する裏付け資産の価値を一致させるために頼る裁定取引システムが、ETFの受益証券を作り出したり償還したりできる仲介業者である「指定参加者(AP)」のレバレッジによって大きな影響を受けたことを新たな研究が示した。

  昨年3月の市場混乱時に、レバレッジの高いAPはETFの保有資産との価格ギャップを埋めようとする意欲が低かったことが、国際通貨基金(IMF)の客員研究員クラウディオ・ラダッツ氏の研究で分かった。

  APにこのギャップを埋める義務はないため、一部ETFで価格乖離(かいり)が長く続く一因となった。

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APのレバレッジが高いETFは価格ギャップが大きい

  先月公表された論文でラダッツ氏は「APのレバレッジは、市場混乱期に裁定取引に従事する能力を制限する可能性がある。混乱時にはバリューアットリスク(VaR)やその他のリスク管理制約のためにバランスシートの余力が小さくなり介入のコストが高くなるためだ。この結果、価格の乖離が持続しがちになる」と分析した。

  米国だけでも現在、約1兆2000億ドル相当の債券ETFがあることを考えると、これは重要だ。

  債券ETFは、ETF自体は取引しやすいが保有債券は取引しづらいという流動性の不一致を巡る懸念に長い間悩まされてきた。しかし、ボラティリティーの中で原資産の取引ができなくなった際、ETFを通じて価格発見と衝撃吸収ができるのではないかと期待された。

  ラダッツ氏の研究はこれらの点を認めた上で、機能しているもう一つのプロセスを強調した。

  ETFへの需要が高い時、APは原資産を追加購入しそれをETFの新たな受益証券に変換して売却することができる。需要が少ない時は逆のプロセスになる。このように、APはETFとそれが連動する証券との間に生じる価格ギャップを埋めることによって利益を上げる。

  重要なのは、このシステム全体がAPの行動意欲に依存していることだ。裁定取引から利益を上げられる通常時なら、APが行動するのは当然だが、ストレスがかかっている時にはそう単純ではない。価格が急落し売却困難な証券をAPが抱える取引を意味する可能性があるためだ。

  ラダッツ氏は米証券取引委員会(SEC)の届け出と市場データ、APの財務報告を基に、レバレッジの高いAPを持つ債券ETFでは裁定取引がストレス時に77%低下することを見いだした。レバレッジが低めのAPが関わるETFでは低下率が64%だった。研究は計69のAPに関連する371本のETFを対象に、20年3月5日から同月末までの期間のデータをまとめた。

  研究によると、APの数の多さは市場環境が良い時期には役立ったが、混乱時にはあまり違いが見られなかった。また、米国債のETFなど原資産の流動性が高いファンドでは、APのレバレッジはそれほど制約要因にならなかった。

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APの

ブラックロック

原題:
Liquidity Risk in $1.2 Trillion of Bond Funds Exposed by Covid(抜粋)

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