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蜜月終わったテスラ、戦略練り直し-中国で人気取り戻せるか

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  • テスラは中国指導部との結び付きの強さを誤解していた可能性
  • 顧客が抱くテスラのイメージ、より良く管理する取り組み開始

中国浙江省温州市のビジネスマン、ホアン・ジアシュエさんは昨年買ったばかりのテスラ車を今年5月に手放した。購入時に支払った24万9900万元(約430万円)の75%程度の値しか付かなかった。上海工場で生産された「モデル3」を手に入れたときは興奮したものの、テスラ車のブレーキに関してソーシャルメディアが取り上げる内容を「毎日読んで、運転するのが怖くなった」という。

  電気自動車(EV)メーカーのテスラは指摘されるような不具合を否定し、中国製テスラ車のブレーキに問題があるとの証拠も全くもしくはほとんどない。ただ確かなことは、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)と中国との蜜月は終わったということだ。

  厳しい規制を敷く人口世界一の中国で、テスラは完全子会社の設立を認められ、異例の厚遇を受けてきたが、今は顧客サービスから広報のあり方まで中国で戦略見直しを迫られている。

  監督当局は異例な度合いでテスラを注視。同社に対する否定的な報道やオンライン上での批判も続く。中国政府は先月、ソフトウエアの欠陥に対処する必要があるとして28万5000台余りというテスラが国内で販売したほぼ全車のリコール(無料の回収・修理)を命じた。

テスラ、中国で28.5万台超のリコール-主要市場で「痛手」に 

テスラで何が起こっているのか

 

  中国政府はまた、テスラ車が米国にデータを送っている可能性があるとの懸念から、政府の一部施設への乗り入れを禁止した。同時に蔚来汽車(NIO)や小鵬汽車といった中国勢がEV市場に食い込もうと、EV車のデザインに一段と磨きをかけ、テスラから顧客を奪いつつある。

  もちろん、こうした問題はいずれも、中国市場で多くの外国企業が経験するものだ。ソーシャルメディアで話題になるだけで、消費者の認識があっという間に変わってしまうのが中国だ。テクノロジーの最先端を行くテスラ車の魅力もマスク氏のカリスマ性も、企業が同国で見舞われるリスクからテスラを守るのにもはや十分ではないのかもしれない。

  テスラは中国指導部との結び付きの強さを見誤っていたように見受けられる。同社にとって2番目に大きな市場での成長見通しを脅かしかねない判断ミスの可能性だ。そしてそれは中国であらゆる利点を得ているように見える企業であっても、同国での事業運営がいかに難しいかを示す証左にもなっている。

  中国当局がテスラに厳しくし始めた兆しは今年2月にはあった。国家市場監督管理総局(SAMR)などがテスラの担当者を呼び出し、異常な加速や電池の発火など苦情が報告された問題で説明を求めたのだ。

中国の監督当局5つがテスラを呼び出し、品質や安全性の問題で

  4月の上海国際モーターショーでは、テスラ車を購入した女性がモデル3のブレーキが利かず事故を起こしたとしてテスラに抗議。当初は反論していた同社だったが、オンラインで批判が広がり、国営メディアがテスラに対応を再考するよう要求すると、テスラは正式謝罪に追い込まれた。

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テスラ車の上に立ち抗議する女性(2021年の上海国際モーターショー)

 

  テスラが始めたのは、顧客が同社に抱くイメージをより良く管理する取り組みだ。以前は国営メディアを重視していが、今は自動車業界の出版物や微博(ウェイボ)や微信(ウィーチャット)などプラットフォーム上のインフルエンサーらとの関係を構築しようと取り組んでいる。

  こうした人々を工場ツアーに招待したり、政策立案者や消費者グループ、報道関係者との「協議セッション」を実施したりしているのはその一例だ。事情に詳しい関係者によれば、テスラはソーシャルメディア上での不当な攻撃と判断したコンテンツについて政府に不満を述べ、検閲権限を使って一部の投稿をブロックするよう政府に求めたという。テスラの担当者はこの記事についてのコメントを控えている。

Source: Bloomberg

  より広範な問題は、習近平政権がテスラに対するアプローチを抜本的に変えたかどうかということだ。最近までマスク氏と中国政府の間には暗黙の取引がなされているように見えた。国家支援と引き換えに、テスラはブランド力とハイテクの専門知識を駆使し、EVに中国の消費者を引き付け、EVと部品を製造する地元メーカーを育んでいくというものだ。

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  そのような政府支援の寛大さが、国家の優先順位が変われば扱われ方も変わるという理解ではなく、中国にとっての自らの存在を過大評価する方向に働いた可能性があるとテスラ側は考えている。同社元幹部が内部の問題だとして匿名を条件に語った。

Luxury Malls Are the New Car Showrooms for Chinese EV Makers

テスラのショールーム(上海、3月)

 

原題:Tesla’s China Fall From Grace Shows Perils of Betting on Beijing

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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