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ラクス創業者、株価急伸で世界の富豪の仲間入り-米進出失敗糧に

更新日時
  • ラクス株は15年12月上場、その後4800%余り上昇
  • 中村氏の純資産、約2100億円に拡大-ビリオネア指数

経理・総務関連業務のクラウドサービスを手掛けるラクスの創業者、中村崇則氏は2015年、進出していた米シリコンバレーから撤退し、日本国内の事業に全力投球することを決めた。

  モバイルマーケティングソフトウエアの売れ行きが思わしくなかったためだが、その決断が奏功した。ラクスは同年12月に東証マザーズに上場。その後、株価は4800%余り上昇している。現在の上場先は東証一部。

Billionaire and Rakus CEO Takanori Nakamura Interview

中村崇則氏

  ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、同社の代表取締役社長で株式34%を保有する中村氏の純資産は約19億ドル(約2100億円)に拡大した。ラクス株は6日、6.3%高で取引を終えた。

  上場後の株価急伸で巨額の富を手にした日本の起業家がまた1人増えた。日本で人気化した銘柄の一部企業は、人工知能(AI)やクラウドコンピューティングといった技術を駆使しつつも、その応用先が日常業務と言えるビジネス分野であることもあらためて示された。

  中村氏(48)は億万長者の仲間入りをしたことについて、「あまり現実感がない」と語っている。

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  中村氏が起業家になろうと決めたのは高校時代だという。子供の頃は無一文から大金持ちにのし上がるサクセスストーリーを読むのが好きだったそうだ。

  神戸大学を卒業後、1996年に日本電信電話(NTT)入社。1年ほどで同社を退社後、2000年11月にラクスの前身となるアイティーブーストを設立。ITエンジニアスクール事業や総合メールサポートシステムなどを手掛けた。

  09年に現在の中核事業である経費精算システム「楽楽精算」の販売を開始したが、当初は業績が振るわず、中村氏はシリコンバレー進出を目指した。日本の人口が減っていく中で、「早くから海外に手を付けておきたいという思いがあった」と当時を振り返った。

  しかし、巨額の資金を事業に注ぎ込む米国のスタートアップ企業に太刀打ちできず、米事業の継続を断念したという。米進出は「自分たちの体力からすると、ちょっとトゥーマッチな一手だったかなという気がする」と中村氏は述べ、自社が持つリソースを考えると、国内に全力を投入した方が「勝てる」と考えたと説明した。

Rakus shares have soared since last year

  15年12月の上場後、日本国内にスマートフォンが普及する中で楽楽精算の人気に火が付いた。同社によれば、現在の導入企業は累計8000社を超える。

  ゴールドマン・サックス証券の宮崎高志アナリストは20年10月にラクスのカバレッジを開始。「中長期で成長余地は大きい」との見方を示した。当初の投資判断は「中立」だったが、今年3月に「買い」に引き上げた。

  宮崎氏は電話取材でラクスの製品について、1つ1つが「非常にターゲットを絞った」ものになっており、そういう戦略が非常に効果を上げていると分析した。

  ラクスは顧客となり得る中小企業は国内に約10万社あると推計。約2万社への販売達成が最初の目標だと中村氏は語った。

Billionaire and Rakus CEO Takanori Nakamura Interview

インタビューで語る中村氏

  ジェフリーズ証券の佐藤博子アナリストは先月のリポートで、在宅勤務でオンライン経費精算が必要になったことで、ラクスは恩恵を受けると予想した。

  ただ、佐藤氏の投資判断は「ホールド」。ラクス株は同業他社との比較で既に割高水準にあると説明している。

  ブルームバーグのデータによれば、同社の株価収益率(PER、予想利益ベース)は448倍。2021年3月通期の営業利益は39億円と、前年(約12億円)から3倍余りに増えた。

  今年は利益の伸びが鈍化すると、佐藤、宮崎両氏は予想している。同社が市場シェア拡大に向けマーケティング支出を大きく拡大していることを理由に挙げた。

  それでも中村氏はなお攻めの姿勢だ。将来の成功を確実にするため大金を投じることはシリコンバレー時代に学んだ教訓の1つであり、「どれだけ自分たちが拡大していくパイを取っていくかというのはやはり、販管費の大量投入というところに尽きるのかなと思う」と述べた。 

原題:CEO Who Failed in Silicon Valley Spurs 4,800% Stock Surge (1) (抜粋)

(第3段落に6日の株価を加え、これまでの上昇率などを更新します)
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