コンテンツにスキップする

【コラム】米テーパリングでも怖がる必要はない-ビル・ダドリー

relates to 【コラム】米テーパリングでも怖がる必要はない-ビル・ダドリー
Photo: Fox Photos/Getty Images

米経済は連邦準備制度の雇用とインフレの目標達成に向けて順調に前進している。このため、金融当局がいつ、どのように月間の債券購入のテーパリング(段階的縮小)に着手すべきかという、金融市場が心配を抱くトピックについて、今が再考する良い機会だろう。

  最も差し迫った問いへの私の回答は次の通りだ。

Q:米金融当局が2013年、購入縮小の可能性を示唆した際、金融市場にはテーパータントラムとして知られる大きな混乱が広がったが、今回はどう違うか。

  13年当時は当局者にテーパリングに関する経験がほとんどなく、市場参加者も資産購入と事実上のゼロ金利政策からの出口のタイミングや手順がどうなるか分からなかった。

  今では当局者も経験を積んだ。さらに、前回の場合もタントラムを除けば、その後の出口への実際の移行は円滑だった。当局者は自信を深め、市場参加者は今後の推移を以下の順番でよく想定することができる。 

1.テーパリングについての議論

2.実際のテーパリング

3.ゼロ金利解除

4.連邦準備制度の保有債券の段階的圧縮

  もちろん、このプロセスは自動操縦ではなく、経済情勢や市場の動向次第で1つか2つの修正が必要になるかもしれないが、少なくとも工程表はある。

Q:テーパリングのプロセス開始はいつからか。

  経済見通しに著しい変化がないと想定すれば、恐らく6カ月程度先だろう。

  金融当局者は、最大限の持続的雇用と2%のインフレ目標の達成に向けて「一段と顕著な進展」があった場合にのみ、テーパリングのプロセスを開始すると繰り返し表明しており、景気回復の勢いが強いとしても、それには幾分時間がかかるだろう。

  米経済はまだ完全雇用状態には程遠い。さらに、労働市場は複雑な状況にある。失業者数が多い一方で、求人数は過去最高水準だ。今後、失業保険の上乗せ給付が期限切れとなるとともに、学校での対面授業が再開され、雇用拡大を阻んでいると考えられる要因が解消された段階で、どうなるかはまだ分からない。

Q: 金融当局の月間の資産購入は米国債が800億ドル(約8兆9300億円)、住宅ローン担保証券(MBS)は400億ドルだ。購入縮小は両方を同じペースとするのか、それともどちらかを先行させるのか。

  一部の当局者はMBSのテーパリングを先行させたい意向を示している。住宅価格が値上がりし、不動産市場にフロス(泡立ち)が見られ、金融政策による支援はもはや必要ではないと見受けられる。

  こうした議論の展開は妥当に聞こえるかもしれないが、私は金融当局がこの路線に進むことには懐疑的だ。前回のテーパリングでは、米国債とMBSの購入縮小を並行して進める前例を確立した。それから逸脱するようなことがあれば、正常化プログラムの他の側面に疑問が生じかねない。

  ただ、テーパリングを同時に始めたとしても、例えば米国債とMBSの購入を連邦公開市場委員会(FOMC)の会合ごとに100億ドルずつ減らすとすれば、MBSは4会合を経て購入ゼロとなる一方、米国債は8会合後となり、MBSの方が先に完了することも考えられる。

Q:テーパリングはスムーズに進められそうか。

  雇用とインフレに関する金融当局の目標に向けての進展次第だ。当局が目指すのは慎重かつ等分のペースだろう。しかし、13年12月のFOMC声明を引用するならば、「資産購入の道筋はあらかじめ決まったものではなく」、経済情勢次第で変更するかもしれないと当局は明確にするだろう。

Q:テーパリング完了前に、金融当局がフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジ引き上げに踏み切る可能性はあるか。

  その公算は極めて低い。資産購入を続けつつ、短期金利を引き上げるというのは、一方で刺激策を加えながら、他方でそれを引き揚げるわけで、政策的に意味を成さない。

  また、経済が予想よりも好調で、金融当局が刺激策を一段と速いペースで引き揚げたいのであれば、単にテーパリングを加速すればそれが可能だ。そうすることで、市場も利上げ開始時期が早まる可能性を織り込むだろう。

  このほか、当局は金融政策の重要な手段の効果を弱めたくないだろう。利上げ開始はテーパリング完了後のみだと市場は想定しており、そもそもこの認識が資産購入の威力を強めている。資産購入が続けられる限り、金利は事実上のゼロに据え置かれると市場参加者は理解している。

(ビル・ダドリー氏は前ニューヨーク連銀総裁で、現在はプリンストン大学経済政策研究センターのシニアリサーチスカラー。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:The Federal Reserve Will Taper, But Don’t Freak Out: Bill Dudley(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE