コンテンツにスキップする

M&Aに新たな難局、標的企業は身売りより上場選好-株式市場活況で

  • 消費者関連・小売企業がIPOで調達した資金、年初来で40億ドル強
  • 好調な株式市場背景に標的企業は評価額上昇-景気回復も追い風

注目の消費者関連企業や小売企業を取得しようとしのぎを削る買収会社は、新たなハードルに直面している。それは高成長企業を身売りではなく、上場へと誘う株式市場の活況だ。

  米俳優ジェシカ・アルバ氏が創業した美容用品メーカー、オネストは今年の上場に先立ち、まず身売りを検討していたと事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。ただ、買い手候補から得られる見込みの金額より新規株式公開(IPO)での評価額の方が高いだろうと既存投資家が気付き、オネストは身売りを撤回して上場を目指したという。同社の担当者はコメントを控えた。

  センタービュー・パートナーズのパートナー、トニー・キム氏は「高成長企業の市場でのバリュエーション(企業評価)は、戦略的プレーヤーが進んで支払う金額を上回っている場合がある」と指摘。「戦略的な買い手は市場にも目を向けているが、バリュエーションがかなり高水準だと考えている」と述べた。

Krispy Kreme Doughnuts To Be Bought by JAB In $1.35 Billion Deal

クリスピー・クリームの店頭に並ぶドーナツ

  ブルームバーグがまとめたデータによると、食品メーカーやペット用品メーカー、住宅用品メーカーといったセクターのブランドがIPOを通じて調達した資金は年初来で40億ドル(約4500億円)余り。前年同期は36億ドルだった。

  電子商取引チャンネルを通じた消費者直販事業は実店舗ほど新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響を受けず、実績を上げることができた。そうした成功が、株式公開に乗り出す動きを促す可能性がある。

  医療用スクラブのオンライン販売を手掛けるフィグズの株価は5月のIPO以来、ほぼ2倍に上昇。

  オーツミルクメーカーのオートリー・グループは5月のIPOで、2022年の予想売上高の7倍強に相当する企業価値と評価された。これに対し、ネスレなど伝統的な食品メーカーの株価売上高倍率(PSR)は約3.9倍にとどまっている。オートリーの株価は上場以来、50%余り値上がり。

Cathy Leonhardt

キャシー・レオンハート氏

  PJソロモンのグローバル・コンシューマー・リテール・グループの共同責任者でマネジングディレクターのキャシー・レオンハート氏は「IPOや特別買収目的会社(SPAC)との取引を通じ、従来のM&A(企業の合併・買収)市場を何らかの形で中抜きできることが資本市場の絶対的な強みだ」と指摘した。

  さらなるIPOが進行中だ。ドーナツ店チェーンのクリスピー・クリームの6月30日のIPOは5億ドル規模にとどまったが、上場初日となった7月1日はIPO価格を約24%上回って引けた。アイウエアブランドのワービー・パーカーとスニーカーメーカーのオールバーズも年内の上場に向け準備を進めている。

  上場を目指すこうした企業はいずれも、景気回復による押し上げという恩恵を受けている。「消費者は戻って来ており、満足させてくれる製品を買いたいと思っている」とレオンハート氏は言った。

関連ニュース:
IPO市場に前例ないブーム、1-6月は半期過去最大の約39兆円規模
ビーガン食品オートリー、米上場初日18%強上昇-IPO14億ドル規模
ドーナツ店のクリスピー・クリーム、米で710億円規模のIPO計画
女優出身アルバ氏の美容・ベビー用品会社オネスト、上場初日に大幅高

原題:Hot IPO Market Is Tough Competition for Consumer-Hungry BuyersKrispy Kreme Jumps in U.S. Trading Debut After Downsized IPO (1)(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE