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【コラム】クレディ・スイスが恐れる買収、良い面も-ヒューズ

クレディ・スイス・グループは過去数十年間、次から次へと起こる危機を乗り越え、不滅であることを証明してきた。それでも、直近の混乱は極めて深刻に見える。同行は投資銀行業務と資産運用業務の両方が同じ原因によって苦境に直面している。リスクコントロールの不備だ。しかも、競合他社が好調な時にそれは重なっている。同行が買収されると想定する根拠は表向きは強い。ただ現実的な買い手のリストは少ない。

  ロイター通信は25日、同行幹部が敵対的買収やアクティビスト(物言う投資家)からの攻撃を恐れていると報じた。そうあるべきだ。自由奔放になりがちな起業家精神に強力なマネジメントが足されるのであれば、株主や規制当局にとって理にかなう買収になる可能性がある。

  ストレートな買収の場合、経営陣の一新と文化面での変化をもたらすだろう。重複をなくすことで得られるコスト削減と合わせ、クレディ・スイスの各事業はパフォーマンスが向上し、投資に向けた資源も増え、金融システムへのリスクは減るだろう。そうした恩恵の一部は株主にも還元される可能性がある。

  しかし、話題となっているような欧州勢同士の合併には問題もある。国内競合行UBSグループによる買収であれば、大幅なコスト削減が実現できよう。スイスのリテールおよびコーポレートバンキングでよく言及される反トラスト(独占禁止)上の障害も、事業売却などによって解決する可能性がある。しかし、スイスの金融監督当局がこうした金融機関の誕生を容認するかどうかはなお疑問だ。

  完全なスイス勢同士の合併が大きなギャンブルとなるのは、世界的な投資銀行業務と資産運用業務の複雑な組み合わせを成功に導くための経営陣の能力にある。UBSのラルフ・ハマーズ最高経営責任者(CEO)はキャリアの大半をオランダのINGグループで過ごしてきた。同行はクレディともUBSとも全く性質が異なる。クレディ・スイスのトーマス・ゴットシュタインCEOは、経営トップになる前はスイス国内市場に焦点を当てた役割を担ってきた。

  ドイツ銀行とクレディ・スイスの組み合わせは、両行の時価総額と株価バリュエーションを踏まえれば買収ではなく合併の誘惑に駆られるだろう。しかし、ここでも経営陣の能力が問題になる。ドイツ銀行のクリスティアン・ゼービングCEOの経営再建戦略により、同行の株価は2018年の水準まで回復した。それでも、この規模の統合となれば、CEO就任から比較的日が浅い両行のトップにとっては大きな試練となるだろう。

  いずれにせよドイツ銀にとっては、債券と株式で補完的な強さを持つUBSとの組み合わせの方が理にかなっているはずだ。

  クレディ・スイスの買い手候補としてより有力なのは、ウォール街の金融機関だろう。その場合、クレディ・スイスのウェルスマネジメント事業が最大の魅力となる。あからさまな敵対的買収が成功するとは考えにくいが、寛大な提案があれば、クレディ・スイスの取締役会には交渉の場に着くよう強い圧力となるだろう。

  外資系による買収を未然に防ぐためという理由だけでは、クレディ・スイスとUBSの統合は正当化されない。クレディ・スイスにとって最大の防御策は、アントニオ・​ホルタオソリオ新会長の下、よりリスクの低い金融機関に変わることだ。仮にそれが投資銀行業務の一部からの撤退を意味するとしても、残った事業に対してより高いバリュエーションが付くはずだ。とはいえ、クレディ・スイスが買収を心配しているのであれば、それは良いことだ。望まない買収の脅威は経営陣の気を引き締めるのに役立つ。問題は、その脅威を裏付けるような前例が不足していることだ。

  (クリス・ヒューズ氏はブルームバーグ・オピニオンのディール担当コラムニストです。コラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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