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中国のフィンテック支配、アントで終わらず-監視強化の「激変期」

  • 上級幹部として政府代表をアントに送り込むことを検討-関係者
  • テクノロジー企業の金融事業を巻き込み「整改」が進行中

中国が生んだ最も有名な起業家、馬雲(ジャック・マー)氏がほとんど姿を見せなくなってから約8カ月が過ぎた。

アントの上海・香港上場延期、中国当局がジャック・マー氏を指導

  アリババグループ創業者の馬氏が公の場で政府批判を展開してから、アリババ傘下のフィンテック企業アント・グループの超大型新規株式公開(IPO)計画が突然中止になった。そして8カ月間でアントの企業価値は控えめに見積もっても約700億ドル(約7兆7600億円)減った。

中国政府とぶつかったジャック・マー氏

  事情に詳しい関係者によれば、複数の金融監督当局から成るチームは今、アントの井賢棟CEO(最高経営責任者)ら幹部に政府が命じた事業見直しの進展状況について定期的に報告するよう要求しており、新たな構想も当局の入念な検証を受けなければならない。当局はアントの内情を把握し続けるため、上級幹部の1人として政府代表を同社に送り込むことを持ちかけているという。デリケートな問題だとして関係者の1人が匿名を条件に語った。

  こうしたことが今、中国の大手テクノロジー企業全般で起きている。自由奔放なインターネット時代の資本主義とそれによってもたらされた富と影響力が、中国共産党の目的や野心と衝突している。

  監督当局が「整改」、つまり整理し改革を進めると呼ぶ取り組みが、テンセント・ホールディングス(騰訊)やJDドットコム(京東)、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の北京字節跳動科技(バイトダンス)、配車アプリの滴滴出行の金融事業を巻き込み進行中だ。欧米当局はあまりにも大きな力を持つようになった大手テクノロジー企業にどう対応するかで試行錯誤を続けているが、中国の答えはこうした企業への支配確立だ。

China Mobile-Payments Market Share

Data: iResearch, as of June 30

  フィンテックの場合、これはアントのようなスタートアップ企業に昔ながらの銀行同様の行動を強いることを意味する。それはまた、債務を背負う巨大な金融業界のパワーバランスを党の方針に従う大手の国有銀行に再び傾かせることにもなる。

  中国政府は国内の大手インターネット・フィンテック企業が市場支配力を乱用していると主張。共産党の習近平総書記(国家主席)はイノベーション(技術革新)を妨げずにイノベーティブな企業を規制し、経済的見返りを損なうことなく金融リスクを減らそうとしているが、そんなことができるのだろうか。

中国のフィンテック企業はプレッシャーにさらされている

Daybreak: Asia.” (Source: Bloomberg)

  アントとその同業は、一定の打撃を受けている。規制当局がこうした企業の影響力を抑えようとしていることから、将来の利益見通しは大きく低下しそうだ。ブルームバーグ・インテリジェンスは、最大の成長エンジンである何億人もの中国消費者が提供先のオンライン融資は5年で23%縮小すると予想。フィンテックのプラットフォームで販売される投資商品への資金流入も同様の傾向となりそうだ。

  決済のエコシステム(生態系)は厳重に監視されるようになる。資産5億ドル相当を運用しているプロスペクト・アベニュー・キャピタルの創業パートナー、リアオ・ミン氏(北京在勤)は「中国政府がテクノロジー大手との関係を再構築し、長期的に支配を強めるとみられ、われわれは激変期に入りつつある」と指摘。 「中国政府の優先順位は変わった」と述べた。

Fintech Investment

In Chinese yuan

Data: Company reports

  アントとテンセントはコメントを控えた。JDドットコム傘下のJDテクノロジーと中国人民銀行(中央銀行)、中国の銀行監督当局はコメント要請に応じなかった。

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原題:China Crushed Jack Ma, and His Fintech Rivals May Be Next(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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