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職域接種きょうから順次始動、規模小さいVCが他社連携する例も

更新日時
  • 対応可能なら「1000人規模」の要件緩和も-田村厚労相
  • 鍵握る若い世代、ソフトバンクGはチケット半額のインセンティブ

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新型コロナウイルス感染症ワクチンの企業や大学での職域接種が21日に始まった。来月開幕する東京五輪・パラリンピックを前に、ワクチン接種のスピードアップ、若い世代の接種率向上が期待されている。

  首相官邸によると、職域接種の申請は17日時点で累計3123会場、接種人数は約1280万人分に上る。4月に始まった高齢者先行接種が約1920万回であることを考慮すれば、ワクチン接種の加速に大きく貢献することになる。都内で視察した菅義偉首相は、「きょう始まった企業、大学の接種をさらに加速させていきたい」と述べた。

  接種を受けたサントリーホールディングスの上西亜紗子さん(39)は、これからの働き方について「いまほぼテレワークだが、もっと会社に来たい」と語った。不安なく通勤できるようになれば、同僚と会社で直接コミュニケーションを取りたいという。

  これまでにトヨタ自動車伊藤忠商事ソフトバンクグループ楽天グループなどが職域接種の実施を表明した。ANAホールディングス日本航空(JAL)は、前倒ししてそれぞれ13日と14日に開始した。

Japan Airlines Co. Employees Receive Covid-19 Vaccination

ワクチン接種を受けるJAL社員(14日、羽田空港)

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  元花王の企業理念推進担当部長で、現在東京大学総合文化研究科で超域文化科学を専攻する笹川アナマリー氏は、勤め先でのワクチン提供は、安心感を高める作用が期待できると話す。半面、接種が任意であるにもかかわらず、従業員側に強制力を伴う行為と受け取られるリスクもあると指摘する。

  GMOインターネットに勤める大場由岐(42)さんは、アレルギー疾患があるため最初は掛かり付け医以外での接種に不安があったという。しかし、「どこで受けても副反応の出方は変わりなく、それなら早い接種の方が利益が多い」と考え直した。職域接種の予約を済ませた同僚らとの会話もいまでは「いつ打つ?」に変わった。

VCが人集めに奔走

  政府が、従業員1000人以上の企業などから職域接種を始めるとしたため、中小企業の間では所属する業界団体などを通じて、1000人以上集める動きも出ている。

  東京のベンチャーキャピタル(VC)、コーラル・キャピタルの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジェームズ・ライニー氏は、「1000人規模というのは大企業が対象で、大半のスタートアップ企業にそんな人数はいない」と話す。賛同するVCやスタートアップ企業に同氏が声をかけたところ、1800人規模だった希望者は2万5000人超に増えた。

  同社は出資先に医療関連企業があり、打ち手やスペースは確保済み。「条件を全て満たしているので、政府もわれわれを断りづらい」とライニー氏。週内にはワクチンを受け取る見通しだ。

門戸拡大

  ワクチン接種で先行する米国は、3月に米国疾病予防管理センター(CDC)が職域接種のガイダンスを示し、打ち手の確保やワクチン接種の運営能力がある大規模な企業や団体に推奨した。運営能力があれば中小企業も排除しない。

  米国で14のレストランを運営するフィフティ/50レストラングループは、全てのスタッフが7月中旬までにワクチン接種する必要があると表明したところ、求人への応募者数が3倍に増えたと報じられた。接客業におけるワクチン接種の義務化が働く者の安心につながった例だ。

  聖路加国際大学公衆衛生大学院の小野崎耕平教授(医療政策管理学)は、職域接種が「早い景気回復、経済活動を活発にすることに実際のインパクトが出る」と期待を寄せる。重症者を減らすことに意義を置いた高齢者接種では「経済活動という意味で限定的」だからだ。

  田村憲久厚生労働相は11日の国会答弁で、対応が可能であれば、人数に関する要件を緩和することも想定していると明らかにした。  

鍵握る若い世代

  いま懸念されているのは、若い世代のワクチン接種率だ。若い世代は感染しても重症化リスクが低いため、発熱や腫れなどの副反応を恐れて接種が進まない可能性がある。ワクチン接種で先行する海外でも、同様の問題は起きた。

  ソフトバンクグループの孫正義社長は「若い世代にもできるだけ早く接種の比率を上げていく必要がある」とした上で、2回のワクチン接種後にホークス戦の観戦チケットを半額にする若者向けインセンティブを明らかにした。同社は、従業員やその家族、および近隣の住民など25万人への提供を目指す。

  北里大学の中山哲夫特任教授(ウイルス感染制御学)は、20歳以上の若い世代について「接種と副反応のバランスを考えると、ワクチンを受けた方が利益が高い」と理解した上で接種してほしいと述べた。一方、20歳以下の世代には、「副反応の比率が高かったりするので、慎重になるべきだ」と警告する。

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(菅首相の発言や、接種を受けた人の発言を追加して更新します)
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