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LGBT理解増進法案棚上げ、「多様性」掲げる東京五輪直前

更新日時
  • 五輪憲章は性的指向を理由とした差別を禁止-根本原則
  • 自民は2019年参院選で「速やかな制定」公約も、保守派が抵抗
Tokyo 2020 Organising Committee President Seiko Hashimoto (R) and Gon Matsunaka, head of Pride House Tokyo Legacy, greet each another at Pride House Tokyo Legacy in Tokyo on April 27, 2021. 

Tokyo 2020 Organising Committee President Seiko Hashimoto (R) and Gon Matsunaka, head of Pride House Tokyo Legacy, greet each another at Pride House Tokyo Legacy in Tokyo on April 27, 2021. 

Photographer: EUGENE HOSHIKO/AFP

日本は新型コロナウイルス禍で「多様性」を掲げる東京五輪開催に向けて準備を加速しているが、性的少数者(LGBT)への理解を進めるための法案は自民党内からの抵抗を受け、16日閉会する通常国会での成立をホスト国として実現できなかった。

  法案は「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」と規定している。自民党の稲田朋美元政調会長らが野党側と合意し、国会提出を目指したが、法案審査の段階で保守派議員から異論が噴出。二階俊博幹事長ら幹部の判断に扱いは委ねられたが、提出自体が見送られた。

  オリンピック憲章は「オリンピズムの根本原則」で、スポーツをする権利などについて人種や肌の色などと共に「性別」や「性的指向」を理由とした「いかなる種類の差別」も受けることなく、 「確実に享受されなければならない」と定めている。

  性的少数者の支援活動を行っている「プライドハウス東京コンソーシアム」の松中権代表らは、法案に反対する一部自民党議員らの発言として報じられた内容は五輪の根本原則に反して不適切であり、「ホスト国の日本として、国際的な批判を大きく受けるもの」とする合同抗議文を発表した。

  自民党は2019年の参院選公約でLGBTに対する理解増進を目的とした議員立法の「速やかな制定」を明記していた。菅首相は7日の参院決算委員会では「国民との約束を果たすよう党でしっかり取り組んでいく」と述べていた。

  米国の公民権団体「ラムダ・リーガル」のジェニファー・パイザー氏は「国際ビジネスの世界において日本は極めて重要なメンバーであるのに、LGBTQの平等がますます当たり前になりつつある世界で国がピント外れのままでいると、政治と同じく日本企業までもが白い目で見られるようになるだろう」と指摘する。

  14年にロシアで開かれたソチ冬季五輪の際もLGBTを巡って論争が起きた。ロシアでLGBTの活動を規制する法律が導入されたことで、当時のオバマ米大統領は開会式を欠席した。

  パイザー氏は、性的少数者が激しい迫害を受けることもあるロシアと日本は違うものの、「ソチの例は日本の指導者に対して有効な注意喚起になり得る」とも指摘。東京大会が近づくにつれ、国際的な関心が高まるとの見方を示した。

  東京五輪を巡っては組織員会の森喜朗前会長が女性蔑視とも受け取れる発言の責任を取る形で辞任した経緯がある。

  森氏の後任となった橋本聖子会長は自身がメダリストであり、4月にはプライドハウスを訪れ、松中氏らに「将来、東京2020大会を振り返った時に、多様性と調和、LGBTQの理解はあの時が転機となって大きく進んだ、と思えるように行動していきたい」と述べていた。

  東京五輪・パラリンピックは大会ビジョンで、多様性と調和を基本コンセプトの一つに掲げ、性的指向を含めた「あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩」すると指摘。「世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする」とうたっている。

(見出しとリードを差し替えて更新しました)
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