コンテンツにスキップする

ビーチでリモート勤務の夢、企業の採用拡大で実現も頭痛の種は税申告

  • 企業はスタートアップ中心にリモート勤務の選択肢で人材確保に躍起
  • 税金面で厄介な状況に陥る可能性、会社側と慎重に相談をとの助言も

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の終息を少し想像してみよう。外国旅行が再開され、感染のホットスポットは過去のものとなり、少なくとも1年に数カ月は世界中のどこからでもリモート勤務を認めるという最近の約束を企業が実際に果たすとする。

  次にロンドンとニューヨーク、香港の居住者がそれぞれ、例えばリオデジャネイロのバーに足を踏み入れる姿を思い描いてみよう。3人はブラジルで2カ月間のリモート勤務を認められ、サラリーはいずれも同じ10万ドル(約1100万円)だとする。彼らがブラジルの伝統的なカクテルのグラスを置いて帰国したとき、誰が最も多くの税金を支払う必要があるだろうか。

  これはコロナ後の就労形態の策定を目指す雇用主とスタッフにとって厄介な問題だ。人材採用はまだら模様で不確実さが続いているとはいえ、多くの国で雇用情勢はタイト化しており、スタートアップなどを中心に企業はリモート勤務の選択肢を提示して新たな人材を確保しようと躍起だ。

  税務顧問会社ブリック・ローゼンバーグのロバート・ソルター氏によると、最も税負担が高くなり得るのはニューヨークからリオに行ってリモート勤務した人である一方、ロンドン居住者に追加負担はないかもしれない。だがこの想定は、3人全員が法規通りにブラジルの納税申告を期限まで行うことが前提で、最も重要なのはポルトガル語でのミスを回避することだろう。

  さらにソルター氏はこうしたジェット機で各地を飛び回る新たな世代にとって最悪のシナリオを警告する。各国で複数の納税申告の提出を求められた上、法域間の租税条約の恩恵を失うことになれば、「最悪の事態になりかねない」という。

特典

  10年前、ウーバー・テクノロジーズやフェイスブック、インスタグラムなどの企業は、無料のランチや一風変わったオフィス環境を提供し、ドレスコードをカジュアルにして、ウォール街の金融機関との差別化を図った。ここにきてロンドンやニューヨーク、トロント、ベルリンなど各地の企業は、コロナ時代の柔軟な勤務形態のオプションを正式に導入もしくは延長している。

  英国のスタートアップ企業ドロップレットでiOS開発者として働くベネチア生まれのアンドレア・ミオットさん(29)は、昨年同社に採用されて以来、アルプス山脈や南部プーリア州など母国イタリア各地からリモート勤務を続けており、ここ数カ月はスペインのカナリア諸島にも足を延ばしたいう。

relates to ビーチでリモート勤務の夢、企業の採用拡大で実現も頭痛の種は税申告

カナリア諸島のビーチを走るミオットさん

Source: Andrea Miotto

  在宅勤務の傾向を研究した米スタンフォード大学のニック・ブルーム教授(経済学)は「これは単に人目を引く仕掛けにとどまらない。非常に価値のあるライフスタイルの提供であり、良い人材を雇用できる唯一の方法かもしれない」と指摘する。

  欧州のスタートアップ企業で屈指の企業価値を誇る金融サービスアプリ提供の英レボリュートで、コミュニケーションマネジャーを務めるキアラ・バローニさんは、通常はベルリンを拠点としているが、年間最大2カ月を国外で過ごしながら勤務できる新たな方針を利用し、カナリア諸島から働くことにした。

金融アプリのレボリュートで働き方改革、2カ月の国外勤務認める方針

One Time Use

バローニさん

Photographer: Maddalena Arosio

「厄介な状況」

  ロンドンのスタートアップ企業パドルも海外を含め従業員にどこからでもリモート勤務を認める方向にシフトしているが、海外にいる従業員を専門の人事管理会社を介して管理する方針だ。リモート勤務の支援でこうした外部企業を頼る会社は増えつつある。給与事務関連のスタートアップ企業ディールでは過去1年間に海外スタッフ管理サービスの需要が急増したという。

  これはどこからでも仕事できるという会社の方針の課題を鮮明にしている。税収確保が急務の各国政府が国境を越える勤務形態に気づき始めた今、こうした特典はスタッフと勤務先企業にとって大きなリスクを伴う。

  税理士のソルター氏は、「かなり厄介な状況に陥る可能性がある」と警告する。ほんの数週間でも海外で働く従業員は、海外の法域で税金を支払う義務を負う可能性がある。多くの国は過剰な課税を回避するため租税条約を結んでいるが、連邦税にのみ適用され、市や州の課税には適用外となるケースが米国の多くの地域で一般的。また、外国で勤務する従業員が一つの国に過度に集中することになった企業は、現地で法人税の納付義務を負う可能性もある。

  ソルター氏は「一つの国での滞在期間が180日未満だから自分は安全だという話を多く聞くかもしれないが、ナンセンスであり非常に危険だ」と述べ、「パブにいる人間」の助言には耳を貸さず、自分が勤務する会社に注意深く相談すべきだとアドバイスする。

原題:Tax Headaches Are Threatening Dreams of Working From the Beach(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE