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10代に大人気「SHEIN」-米中貿易戦争のおかげで世界的ブランドに

  • アプリを見ても中国ブランドと分からない-今後はアキレス腱にも
  • 魅力は低価格-トランプ政権に対抗した中国の輸出税制変更が恩恵

「シーイン」は5月17日、米国で最もダウンロードされたショッピングアプリとなった。152日間トップだったアマゾン・ドット・コムを抜いたのは新興ファッションブランドで、しかも30歳を超える米国人の大半にはほとんど知られていない。

  人気をけん引しているのはオンライン上の多くのブーム同様、Z世代やミレニアム世代の若い層だ。極めて安価な商品を取りそろえ、製品が常に更新されるシーインのオンラインカタログに夢中になっている。

SHEIN Summer Pop Up Preview Evening

2019年にロンドンで設立された期間限定の店舗-常設店は存在しない

  最近のある木曜日には、新アイテム6239品がアプリで紹介された。花柄のバックレスホルタートップ (5ドル=約550円)や紫の恐竜柄プリントのパジャマ(10ドル)、パールの縁取りでハイスクールのダンスパーティーに最適なバタフライスリーブのドレス(22ドル)などだ。

  低価格は金銭的に余裕があるとは言えないティーンエージャーに特に魅力で、彼らからの支持を得て、シーインは中国発のファッションブランドとしては初めて大成功を収めた。ユーロモニターの最新データによれば、シーインの売上高は2019年に倍増、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に見舞われた昨年は3倍余りに増え、ウェブサイトだけで展開するファッションブランドとしては世界最大となった。中国のブランドであることは、アプリのどこを探しても分からない。 

中国発のファストファッション、パンデミックで売り上げが急増

  シーインの資金調達に詳しい関係者によれば、同社の企業価値は最大300億ドルと評価されている。昨年はゴールドマン・サックス・グループとバンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェースを新規株式公開(IPO)の可能性を巡りアドバイザーとして起用したと計画を知る別の複数の関係者が述べた。

  シーインは同社に関する報道は「しばしば不正確」で、企業価値は昨年時点で「数十億ドル」だと説明。広報担当者は5月28日、今のところIPO計画はないとブルームバーグに語った。

Dressed Up to Stay In

  シーインが中国企業であることを積極的に開示していない理由の1つは、ファッション界ではイタリアやフランス、日本ほどの世界的名声が中国にないためだ。ウェブサイトの自社紹介ページにある「流通と輸送」の項目に倉庫の荷物積み降ろし場に止まっているトラックの写真があるが、そのトラックのロゴは英語と中国語で表記され、ようやく中国で業務を行っているとの手掛かりが得られる。

  それでも、シーインの成功は中国政府に負うところが大きい。特に米国のトランプ前政権時代の貿易戦争を受けた中国の税制変更は同社とサプライヤーのコストを劇的に軽減し、世界のライバルの競争力を相対的に弱めた。米中の貿易関係が悪化していた18年、中国は消費者に直接販売する企業を対象に輸出税を免除。また、米国に輸入される800ドル未満の小包は16年から免税の対象で、トランプ政権がその後もこの部分はそのままにしたこともシーインにプラスに働いた。

 

HK

アプリを見てもシーインが中国企業であることは分からない

  シーインがめったに出さないプレスリリースの1つによると、同社は08年に許仰天氏が創業。許氏はファッション業界や小売業でキャリアをスタートさせたわけではない。デジタルマーケティングのコンサルティング会社で輸出企業と協力し検索エンジンの最適化に取り組んでいたのが出発点だ。当時のサイトの名称はシーインサイドだったが、14年にシーインに変更した。同氏はブルームバーグのインタビュー要請に応じなかった。

  シーインはパンデミック初期の頃にケイティ・ペリーリル・ナズ・Xとバーチャルコンサートを開催。今やインスタグラムにハッシュタグ「#sheingals」付きの投稿が広がる。同社のアプリ上に並ぶ製品の写真も自撮りの雰囲気があり、同社自体が顧客同様にインターネットの申し子のように見える。

  顧客がアプリ上で検索した情報を集める技術も開発し、そのデータをサプライヤーと共有し、デザインや生産などの決定を導くのに役立てている。この部分でアパレルメーカーにとってシーインは協業したい相手であり、しかも同社は支払いの頻度と速さが業界標準より優れているとの評判を持つ。世界で最も幅広く充実したサプライチェーンを持つ中国の基盤も生かし、店舗在庫の心配もない状況は、顧客の好みにかなり迅速に対応できることを意味する。

Shipped From China

Chinese exporters are gaining popularity with overseas shoppers

Source: Essence Securities

  非上場企業のシーインに財務諸表を開示する義務はない。同社はブルームバーグへの説明資料で、中国は「当社のような国境をまたぐ事業展開を奨励している」と説明し、全ての市場で現地の税規定に従っているとコメントした。

  シーインは成功して未踏の領域に入ったかもしれないが、パンデミックが収束して消費者が再び実店舗で買い物をするようになっても成長を続けられるかは不明だ。また、米国の繊維業界からは800ドルの輸入免税水準を引き下げるようバイデン政権に働き掛ける動きもあり、これが実現すれば、シーインは価格設定上の優位性を一部失うことになる。

  さらにシーインがいかに曖昧にしようとも、中国のブランドであることはアキレス腱(けん)となり得る。トランプ政権後も米中関係は悪化が続き、人権団体や一部の国が強制労働を指摘する新疆ウイグル自治区で生産された綿の使用への反対運動は欧米消費者の間に周知されつつある。

Shein Together Virtual Festival

シーインのバーチャルコンサートで歌うケイティ・ペリー(2020年5月)

  ロンドンの学生、ヤスミン・プライスさん(18)はシーイン製品に使われている綿の産地を調べようとしたが無駄だった。同社の「ウェブサイトには文字通り何も情報はない」と言う。

  また、インド政府は昨年、シーインを含む59の中国製アプリを禁止リストに掲載した。インド軍と中国人民解放軍が国境地帯で衝突したことを受けた措置の一環だ。ベンガルール(バンガロール)の高校生スナンダ・グルプラサドさんは「驚いた」そうだ。「中国製には見えなかった。シーインでショッピングを楽しみ始めていたところだった」と話した。

原題:Big Take: Trump’s Trade War Created China’s Global Fashion Giant(抜粋)

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