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中国の統制強まる香港メディア-基本法が定める報道の自由に危うさ

  • 中国国務院香港マカオ事務弁公室の新部門、メディアを管理か
  • 香港行政長官は「フェイクニュース法」が可決される見通し示す

中国が1年近く前に香港国家安全維持法(国安法)を導入してから、香港は大きく変わった。抗議活動は止められ、著名な民主活動家が相次ぎ逮捕された。選挙制度も根本から変わり、今はメディア界が脅かされている。

  憲法に相当する香港基本法は住民の言論と報道の自由を保障しているが、こうした「基本権利」を揺るがす方向に当局は近年動いてきた。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」による報道の自由度ランキングによれば、香港は10年前の54位から80位に大きく順位を落とした。

Demonstrators Attend Global Anti Totalitarianism Rally In Hong Kong

ジャーナリストに催涙スプレーを向ける機動隊員(2019年9月の抗議活動で)

  香港記者協会の楊健興主席(会長)は「メディアが政府の一部に取り込まれている中国本土のシステムに向かっているとわれわれは懸念している」と述べ、「突き詰めると、政府はメディアに統治機関における役割を果たすよう期待している」と指摘した。

  香港政府はメディアが圧力を受けているとの見方を否定している。「報道の自由を守り尊重すると固く決意している」と最近の声明で表明した。

国安法適用

Hong Kong Media Tycoon Jimmy Lai Released on Bail

黎智英(ジミー・ライ)氏

  香港メディア界の大物で民主派を支援してきた黎智英(ジミー・ライ)氏は、国安法違反の疑いで昨年逮捕された。同氏率いるメディア企業ネクスト・デジタル発行の新聞、蘋果日報(アップル・デーリー)のニュースルームも家宅捜索の対象となった。黎氏は実刑判決を受けて服役中。

香港の黎智英氏に禁錮1年2月の実刑判決-民主派への締め付け強化

  香港当局は今年5月、黎氏が持つネクスト・デジタル株全てと同氏が所有する3社が香港で持つ銀行口座を凍結。上場企業の筆頭株主の株式を対象に国安法の規定を適用する初のケースとなった。中国国営中央テレビ(CCTV)はその後、ネクスト・デジタルと蘋果日報は「扇動のプラットフォームであり、もめ事を起こす反中勢力を動員するマシン」だと報じた。

中国政府のメディア帝国

  中国政府は主要紙に直接出資し、メディア帝国拡大を図っている。香港の著名な財界人は昨年、香港紙の「大公報」や「文匯報」で相次ぎ国安法支持を表明したが、これらも当局の実質管理下にある。

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SCMP Newspapers As China Presses Alibaba to Sell Media Assets

SCMPのニューススタンド

  現地メディアによると、中国国務院香港マカオ事務弁公室はプロパガンダを担当する新たな部門を設置する計画。香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は、この新部門の役割には香港とマカオの「メディア管理」が含まれと関係者の話として報じた。

中国企業

  中国本土の企業や個人が香港メディアを所有することで、香港住民がアクセスできる情報に中国政府が影響を与える恐れがあると民主活動家は懸念を強めている。

  SCMPは馬雲(ジャック・マー)氏が創業したアリババグループが所有。今年に入り星島新聞集団佳兆業集団会長の娘に買収された。佳兆業は中国の大手不動産会社だ。

  SCMPはジャーナリズムの独立性にコミットしていると広報担当者は説明。「編集上のあらゆる決定は引き続きニュースルームの中でなされている」という。星島新聞の担当者はコメント要請に応じなかった。

公共放送の経営陣交代

  香港電台(RTHK)では、トップをメディア経験のない公務員に差し替える人事発表が2月にあった。抗議活動に関する一部報道が政府に厳しいとの見方がそれまでに出ていたこともあり、定款に規定された編集上の独立が影響を受けたとの懸念が浮上した。

情報管理

  当局は公開されている情報へのアクセスを一部制限する措置を講じ、政府が管理する登記簿に記載されている会社取締役の重要な詳細の市民への開示を制限する提案もなされている。

  フリージャーナリストのバオ・チョイ氏は2019年に起きた民主派に対する襲撃事件の取材の一環でデータベースを検索した際、取材目的ではなく自動車所有情報を調べるためだと虚偽の申告をしたとして、今年4月に有罪判決を受けた。香港で記者が起訴されることはまれで、それまで問題なかったデータベース検索が刑罰の対象になり得るとの警告を他のジャーナリストに与えた。

HONG KONG-CHINA-POLITICS

バオ・チョイ氏

 

「フェイクニュース法」

  香港警察のトップである鄧炳強(クリス・タン)警務処長は「フェイクニュースを利用して香港の安全を危険にさらす者」は訴追対象になるだろうと4月に警告。5月に入ると、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は「フェイクニュース法」が可決されるとの見通しを示し、「ソーシャルメディア上で不正確な情報や偽情報、憎悪、うそを広めるという一段と懸念される傾向」に外国がどう対処しているかを香港政府が調査していると説明した。

原題:How China Is Tightening Its Grip on Hong Kong’s Media Scene (1)(抜粋)

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