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バイオジェンのアルツハイマー病薬、高額治療費で米医療制度を圧迫も

  • 年間治療費約5.6万ドル、治療対象100万人なら総コスト500億ドルに
  • 医療財政には非常に大きな影響見込まれる-ボストン大のコンティ氏

バイオジェンエーザイが共同開発したアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」を米食品医薬品局(FDA)が承認したが、患者1人当たり年間5万6000 ドル(約613万円)の治療費は米国の医療システムに前例のない課題をもたらす。

  この薬が認知機能の低下を遅らせる効果については引き続き臨床試験が行われ、その間に多くの患者が高額で入手することになる可能性があるためだ。

  米国はC型肝炎やエイズウイルス(HIV)、心臓病などを治療する高価で効果的な医薬品に対処してきた。また、効果面で相対的に確実性が低いものの、一部のがんやデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの比較的まれな疾患に対しての治療法も提供し、大部分は患者に確実で証明された利益をもたらしている。

  7日にFDAの迅速承認を受けたアデュカヌマブ(製品名アデュヘルム)の場合、治療対象が最大100万人に上ると想定すれば、米国の医療システムには年間500億ドルものコストが生じる可能性がある。こうした大きな負担にもかかわらず、患者の症状が実際に改善されるかどうか、現時点では確実性に乏しい。

バイオジェンのボナッソスCEO

  バイオジェン幹部は8日午前の電話会見で、ブロックバスター医薬品となる可能性を持つ同製品の価格を擁護し、治療対象患者数が徐々に増加する見通しを示した。ミシェル・ボナッソス最高経営責任者(CEO)は「価格は患者と介護者、社会にもたらすと期待される価値によって実証されると信じている」と述べた。

  バイオジェンの予測では、患者の約80%は65歳以上の高齢者や障害者を対象とする公的医療保険「メディケア」でカバーされる。米厚生省傘下メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)の広報担当は、FDAの決定を検討していることを匿名で明らかにした。

支出回避

  バイオジェンによると、アルツハイマー病患者の介護にかかる生涯費用は50万ドルで、米国の医療システムが負担する認知症ケアコストは年間約6000億ドル。人々の健康を維持できる薬があれば、高額な在宅医療や介護施設でのケアを回避できる可能性がある。

Biogen rides Aduhelm's fortunes

  セントルイスのワシントン大学のレイチェル・サックス教授(医療法)は、長期にわたり「人々は効果的なアルツハイマー病治療薬の支出をどう吸収するかを心配してきた」と述べ、「効果的なアルツハイマー病治療薬が他の医療支出の回避につながるというのが、常にその答えの一部だった」と語った。

  しかしアデュヘルムが承認された理由は、アルツハイマー病患者の脳内に蓄積する有害なタンパク質、アミロイドβ(ベータ)を除去する効果によるもので、アルツハイマー病の症状を劇的に緩和するからではない。FDAはアミロイドβへの効果で「臨床的利点が見込まれる合理的な可能性がある」とし、それを確認するためのさらなる治験を命じている。

  その判断が出るまでには何年もかかる公算が大きく、それまでの間、この薬の投与が普及すれば、高額医療費の問題はさらに深刻化するかもしれない。ウォール街のアナリストらはアデュヘルムの価格を予想を上回るものだと指摘。バイオジェンにとっては「大胆」な設定だと呼ぶアナリストもおり、費用はかかるが効果的な C型肝炎の治療法と同様に反発を招きかねないと受け止められている。

  ボストン大学のクエストロム・スクール・オブ・ビジネスの薬価専門家、レナ・コンティ氏は「医療財政への影響は、過去の他の画期的治療法と同様に非常に大きくなり、極めて急速に顕在化するだろう」と述べた。

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原題:
Biogen’s Costly, Unproven Drug Feared as Health Budget Buster(抜粋)

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