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【コラム】ウォール街のインターンは心の健康に要注意-ディリアン

  • 自分でコントロールできるものは非常に少ない、感情面の健全さ必要
  • 起こり得る最悪ストーリーを作りそれが自分に起こると思い込みがち

私は金融ニュースレターを執筆し発行しているが、過去2年に読者3人が自殺した。その人たちは金融業界の現役または元従業員だったので、約20年前にリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの若手トレーダーとして働いていて自殺しそうになった私は衝撃を受けた。絶望の度合いがどんなものかを知っているからだ。

  どんな職業にもある程度のストレスは付き物だが、金融業界のストレスは独特で非常に複雑だ。その第一はパフォーマンスに関する不安。金融機関では会社のために金を稼がなければ職を失う。次に、そこら中に張り巡らされている規制による不安。規制順守状況は厳しく監視されており、違反すればその時の職を失うだけでなくキャリアを失うのではないかという恐怖があり、その恐れは根深い。さらに、社内政治のプレッシャーがある。最高のパフォーマンスを上げた人がトップに上り詰めると外部の人は素朴に信じているかもしれないが、しばしばそうではない。

  ウォール街は名門大学の学位を持つ人々が一日中、金をやり取りする気楽な職場のようにみえるかもしれないが、実際は違う。 金融業界従業員を対象とした2019年の調査では、71%がある程度のストレスを感じていると答え、37%が強い負のストレスを経験したと答えた。巨額の資金をわずか数秒でもうけたり失ったりするトレーダーが直面するストレスを自分のことのように想像できる人はほとんどいないだろう。バンカーはといえば、しょっちゅう締め切りに追われながら、細部に緻密に注意を払う必要のあるプロジェクトでひどい長時間労働を強いられるという別の種類のストレスがある。

  正社員として採用されることを夢見てインターンがウォール街を訪れる今の季節に、この話題は特に重要だ。私は、ウォール街で働きたいという熱意ある若者と時々話す機会がある。ウォール街は素晴らしいキャリアだが、感情、精神、さらに身体的な健康の面で大きな代価を伴うことを言っておきたい。自身のパフォーマンスを日々常に検証し続けるのはストレスだ。

  しかし、最も強烈な種類のストレスは完全に本人の制御圏外にあるもので、これは金融業界にほぼ特有のものだ。株式相場や経済、銀行業界の利益、法規制を個人がコントロールすることはできない。最良のアイデアで損失を出すこともあれば、最悪のアイデアで利益が出ることもある。

  もちろん、コントロールできない大きな力に左右される職業はたくさんあるが、ウォール街で働く人々は巨大でランダムなルーレットに毎日直面しているようなものだ。バンカーやトレーダーが自分でコントロールできるものは実際、非常に少ない。ランダムで予想不可能なものを扱う仕事であり、人間の心理はこれに対処するようにできていない。善人にも悪いことが起こり悪人にも良いことが起こる。そこに道理はない。

  このため、ウォール街で働く人は破滅的な考えに陥りがちだ。起こり得る最悪のストーリーをこしらえ、それが自分に起こると思い込んでしまう。感情面での高いレベルの健全さが要求される職業だ。

  ウォール街に就職したいという人には、心の健康という面で高い代価を支払わなければならないことを言っておきたい。私がリーマン・ブラザーズに勤めていた時期には楽しいこともたくさんあり大成功した取引もあったが、恐怖と不安と抑うつ状態もたっぷり味わった。精神的に非常に健全な人でも、適応するのには苦労する。ウォール街のキャリアを望むなら覚悟が必要だ。

(このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:
What They Don’t Tell the Wall Street Interns: Jared Dillian(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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