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世界を敵に回す中国の「戦狼外交」-習政権、軌道修正は望み薄か

  • 中国の国力増大、世界的な対中感情悪化と重なる
  • 習氏は力関係と影響力、忠誠が全ての世界で育った-メデイロス氏

米中両国政府が米アラスカ州で3月に開いた外交協議で、中国側のトップ、楊潔篪共産党政治局員が警官による黒人市民殺害など米国の道徳的な問題点を指摘した際、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は強く反論しなかった。だが「自信に満ちた国は自国の欠点をしっかりと見つめ、常に改善を目指すことができる」と述べ、少なくとも国際関係を巡り中国に同じことはできないようだと暗に示唆した。

  人口世界一の中国が攻撃的な姿勢を強めるにつれ、サリバン氏の見方が広く共有されつつある。中国の国力増大は世界的な対中感情悪化と重なる。米ピュー・リサーチ・センターが昨年公表した調査によれば、主要14カ国中9カ国で中国に対する否定的な見方が10年余り前に始まった調査でそれぞれ最も高い水準に達した。米国では「非常に好ましくない」と「あまり好ましくない」との対中認識が73%を占めた。

Share of Respondents With a Favorable Opinion of China

Data: Pew Research Center

  理由の幾つかは明白だ。中国はイスラム教徒100万人以上を「再教育」キャンプに拘束しているとされ、香港では民主派を排除。新型コロナウイルス感染拡大の初期対応でも批判にさらされた。

  だが中国のイメージを最も大きく損ねているのは「戦狼外交」だ。中国人のヒーローが外国の敵を打ち負かすという中国で大ヒットした映画シリーズにちなみこう呼ばれる高圧的な外交スタンスを中国の外交官たちは取り続けている。

  米国のスポーツ選手が武漢を訪れた際に新型コロナを持ち込んだと昨年3月に主張し、米国の怒りに火を付けたのは中国外務省の趙立堅報道官だ。アフガニスタンの子どもの喉元にオーストラリア軍兵士がナイフを突き付けているように見える画像を同年11月にツイートしたのも趙氏で、モリソン豪首相は謝罪を要求した。

  米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏は今年5月、中国共産党の習近平総書記(国家主席)による政府の統制色がこれまで以上に強まる中で、米中が熾烈(しれつ)な競争の局面に入りつつあると指摘。そして反中感情は米国のみならず先進国全体で強まっている。

  バイデン政権が欧州とアジアで外交関係の立て直しを図り、中国の強引さに反発している国々を米国側に引き戻そうとする中で、中国外交を担うエリート層の一部はけんか腰の外交姿勢を続けるリスクに一時は警告を発したが、習政権に軌道修正は不可能かもしれない。

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アラスカ州での米中協議に参加した中国代表団

 

  過去において中国の指導者は必要に応じ柔軟になれることも示してきた。1989年の天安門事件で孤立化すると、中国指導部は対外関係の改善に取り組み、2008年の北京五輪を実現させた。

  ただ、今は中国政府を取り巻く政治環境が有意な戦略変更を難しくしている。中国は恐らく自信過剰に陥っており、一方で人口動態の変化や社会・環境面の脆弱(ぜいじゃく)性も抱える。12年に党総書記に就任した習氏は対立的な外交アプローチを支持。中国が「世界の舞台の中心に近づいている」と習氏は宣言した。

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中国外務省の趙立堅報道官

 

  欧米、特に米国が衰退しているとの見方やコロナ対応の自賛に加え、習氏の思考法も外交政策に影響している。毛沢東初代国家主席の支持を失った高官の息子である習氏は、党内の権力闘争を目の当たりにしてきた。中国では敗北は投獄を意味をする。

  オバマ政権の高官として習氏との米中首脳会談に同席したこともあるエバン・メデイロス氏によれば、「習氏は力関係と影響力、忠誠が全ての世界で育った」という。「ハードパワーで考える人物だ」と分析している。

  ただ世界で対中批判が広がる中で、習氏が行き過ぎたかもしれないとの考えに至った曖昧な兆候はある。同氏は最近、外国との意思疎通において「オープンで自信に満ちて」いなければならないが、「穏当で謙虚」でもなければならないと党幹部に伝えた。

  それでも政府内では強硬派が増えつつある。中国の声が少なくとも同等の重みを持つ世界秩序を米国が受け入れるのは時間の問題であり、中国の領土・経済的野心に反対したり、人権問題で圧力をかけるのは無意味というのが彼らの見解だ。元外交官でかつての最高指導者、鄧小平氏の通訳も務めた高志凱氏は「中国に対する敵意を米国は和らげなければならなくなる。プラグマティズムとリアリズムが優位に立つだろう」と話した。

原題:China’s Wolf Warriors Are Turning the World Against Beijing(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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