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アルツハイマー病治療薬巡る転機に-バイオジェンのFDA承認獲得

  • FDAがバイオジェンとエーザイが共同開発した治療薬を迅速承認
  • 今回の承認はFDAの根本的な姿勢の変化を示唆すると見受けられる

米バイオジェンは2019年終盤に大きなリスクを取った。アルツハイマー病新薬候補について、2つの大規模臨床試験で良好な結果が出なかったとみられたことから、いったん治験を中止した後、研究を再開したのだ。

  何年もの歳月をかけて開発に取り組み、次の大型医薬品と期待していたこの治療薬候補について、同社は当時、ノーという答えを出す用意がなかった。

  論争が何カ月も続いた後、バイオジェンの賭けは見事に報われた。米食品医薬品局(FDA)は7日、同社とエーザイが共同開発したアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブを迅速承認。アルツハイマー病向けでは約20年ぶりの新薬承認で、病気が進行する根本的なプロセスに対処する初の医薬品となった。同薬の製品名は「アデュヘルム(Aduhelm)」。 

エーザイとバイオジェンのアルツハイマー治療薬、FDAが承認 (2) 

Stamp of Approval

  FDAはバイオジェンとエーザイが求めたと考えられる事項を実質的に全て認めた。バイオジェンが臨床試験で対象にした早期の患者だけではなく、幅広い患者への適応を承認した。投与対象の判断は基本的に医師と医療保険会社に委ねられた。

  今回の承認はアルツハイマー病治療薬に対するFDAの根本的な姿勢の変化を示唆していると見受けられる。イーライリリーやロシュなどが開発中の他の医薬品にも予期せぬ長期的な影響をもたらす可能性がある。

  FDAは、認知機能や日常生活動作の低下を新薬候補が遅らせる証拠を何年間も求めてきた。しかし、臨床試験の結果が悪かったり曖昧だったりするケースが相次ぎ、裏付けを得ることは容易でない。バイオジェンの場合も同様だった。1つの試験で全体の有効性が示されず、別の試験では投与量を増やして、そこそこの結果が得られることがあった。

  しかし、FDAは今回、認知機能低下を遅らせることを示す証拠はひとまず待つことができると判断した。患者の脳内に蓄積して神経細胞死滅につながる原因とされるタンパク質、アミロイドβ(ベータ)を減らす能力がアデュカヌマブにあることが分かるだけで十分との見解に至った形だ。

  アミロイドβとアルツハイマー病との関わりを巡っては何年も論争が繰り広げられており、専門家の懸念は解消されたわけではない。迅速承認では効果の確定に向け今後も臨床試験を行う必要がある。

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「アデュヘルム」(アデュカヌマブ)

Source: Biogen/AP

  バイオジェンは20年7月、FDAにアデュカヌマブを申請した。11月4日にはFDAのスタッフが、2つの試験に相反する結果が出たものの、そのうち1つは「極めて説得力のある」有効性を示したと指摘した。しかし、その2日後に開かれたFDA諮問委員会で、前向きな結果を出した1つの治験データを相反する内容の別データと対比して検証した結果、有効性を十分に証明できなかったとの見解に8票、証明できたとの見解に1票、判断保留に2票が投じられた。

バイオジェンとエーザイの認知症薬、FDA諮問委の支持得られず

  これを受けてFDAは難しい立場に追い込まれた。諮問委の投票結果に拘束力はないが、FDAがこうした一方的な表決結果に従わないことはまれだ。こうした状況で、迅速承認はFDAがジレンマに対応する手段となった。基本的には、認知機能の低下を遅らせるかどうかについて判断を下すものではないが、アミロイドβを減らす能力によって、そのように作用する合理的可能性はあると述べるのにとどめた。

  ブリガム・アンド・ウィメンズ病院アン・ロムニー・センター・フォー・ニューロロジック・ディジージズのデニス・セルコー共同所長は「不完全なデータでも受け入れるFDAの姿勢が示された」とし、長期的には、もっと確実な効果が得られるかもしれない他のアルツハイマー病治療薬の開発が「一段と容易になる」と指摘した。

Markets: The Close.” (Source: Bloomberg)

原題:Biogen’s FDA Victory Changes the Game for Alzheimer’s Drugs(抜粋)

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