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TSMCと協業の形、半導体企業は検討を-甘利氏「自前は無理」

更新日時
  • 海外勢と共同で開発製造拠点、産業強化には兆円単位の支援必要
  • 経済安全保障の観点から中韓企業との連携は否定

自民党の半導体戦略推進議員連盟で会長を務める甘利明税制調査会長は、半導体産業強化のため、日本企業は海外勢と共同で国内に開発製造拠点を作るべきだとの考えを示した。具体的な提携候補として、世界最大の半導体受託生産企業である台湾積体電路製造(TSMC)を挙げた。

  7日のブルームバーグとのインタビューで話した。半導体産業強化のため、政府による兆円単位の支援も必要とみている。TSMCは経済産業省などが行う先端半導体製造技術の開発助成事業に選定されている。

  甘利氏は「自前主義では絶対無理だ」とした上で、半導体製造装置や素材といった日本の強みを海外勢の技術と合わせて拠点をつくることが大事だと指摘。最先端の半導体を生産できるTSMCと「どういう形でコラボレーションしていくかしっかり考えないといけない」と語った。

半導体受託生産企業(国別)

  経済安全保障の観点から国内への誘致は同盟国と同志国の企業であり「中国勢を受け入れることは絶対あり得ない」と強調。韓国勢は「中国ほどのリスクはない」とする一方、中国との距離感が測れない面があり「非常に難しい国だ」と述べた。  

  あらゆる産業でデジタル化が進み、経済だけではなく安全保障の観点からも半導体の重要性が増してきている。TSMCと韓国のサムスン電子への依存が世界的に高まる中、米国や中国をはじめ各国が半導体の確保を重要課題に掲げる。

各国の支援策
米国研究開発投資や設備投資など520億ドル(約5.7兆円)を半導体産業に投資
欧州半導体を含むデジタル分野に今後2-3年で1350億ユーロ(約18兆円)以上を投資
中国中央政府は2014年から基金を設置し、半導体関連技術へ計5兆円を超える大規模投資を実施。地方政府で計5兆円を超える半導体産業向けの基金が存在(合計10兆円超)
台湾台湾への投資回帰を促す補助金等の優遇策を始動し、ハイテク分野を中心に累計で2.7兆円の投資申請を受理

出所:経産省の資料より作成

  4月の日米首脳会談でも半導体のサプライチェーン(供給網)に関する協力を強化することで一致した。欧米や中国、台湾では半導体産業支援に数兆ー十数兆円の支援策を打ち出している。

  甘利氏は、国内に半導体開発製造拠点を作るには「世界に伍した予算規模のバックアップ体制、基金が必要だ」と話す。現在の日本の支援額は数千億円規模だが、「兆円単位」に増額する必要があるという。

  同議連は安倍晋三前首相と麻生太郎財務相が最高顧問に就任し、安倍氏は設立総会で、半導体産業の支援は「異次元のものをやらなければならない」と強調した。菅義偉首相も記者会見で「与党の議論も踏まえつつ、政府の成長戦略の重要な一つとして考えていきたい」との見解を示した。

  4日には経産省が、半導体の開発や生産体制の強化に向けた新戦略を発表。外国企業との合弁なども活用しながら国内事業基盤としての定着を図り、サプライチェーンでも日本が世界に貢献できる体制構築を目指す。

  経産省情報産業課の西川和見課長は、日本には半導体の既存工場をはじめ、水や電力などのインフラが整っており、多くの技術者もいると指摘。政府としても企業が投資しやすい環境の整備など支援策を講じる方針で、海外勢の誘致実現には「一定の勝算がある」と述べた。

売上高ランキング1992年2019年
1位インテル(米国)インテル
2位NEC(日本)サムスン(韓国)
3位東芝(日本)SK(韓国)
4位モトローラ(米国)マイクロン(米国)
5位日立製作所(日本)ブロードコム(米国)
6位TI(米国)クアルコム(米国)
7位富士通(日本)TI
8位三菱電機(日本)STマイクロ(欧州)
9位フィリップス(欧州)キオクシア(日本)
10位松下電子工業(日本)NXP(欧州)

出所:経産省

  経産省によれば、日本の半導体産業の売上高は1980年代後半には世界シェアが50%を超えていたが、その後は韓国や台湾メーカーが台頭。世界の半導体市場が拡大する一方、近年は10%程度まで低下している。1990年代後半から経済産業省が主導し、官民共同で開発を進めるプロジェクトを立ち上げるなど再興を模索する動きがあったが、日本の退潮傾向は食い止められなかった。

  半導体企業の売上高の上位を見ても、1990年代には日本勢が10社中6社を占めていたが、19年にはキオクシア(旧東芝メモリ)のみとなった。

  甘利氏は、過去の半導体支援は「時代錯誤の戦略を取った」と振り返る。世界では設計と製造を異なる企業が担う「水平分業」が主流になる中、日本は一つの企業が設計・開発・製造する「垂直統合」を進め、支援額も十分ではなかったと述べた。

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(経産省課長のコメントを追記して記事を更新します)
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