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シックスパッドのMTG、指輪型決済デバイスを次のユニコーンに

更新日時
  • エブリングは非接触、充電なしで決済や施錠-コロナ後の追い風期待
  • 子会社をスピンオフ・上場の方針、日本発フィンテックで世界に挑戦

健康・美容関連製品などを手掛けるMTGは、充電不要で非接触決済ができる指輪型デバイス「エブリング」事業をスピンオフさせる方針だ。新型コロナウイルス収束後の非接触へのニーズの高まりも想定し、スマートウォッチなどに替わるウェアラブル決済の本命に育てたい考えだ。

MTG's smartring "Evering"

MTG’s smartring “Evering”

Source: EVERING Corp.

  大田嘉仁会長が都内でのインタビューで明らかにした。

  エブリングはMTGが2017年に買収した英国企業の技術を元に開発。ビザのタッチ決済に対応し、事前に登録したクレジットカードでお金をチャージすれば決済端末にかざすだけで支払いができる。電力は端末側から取るため充電の必要がなく防水機能もあるため、装着したまま入浴も可能。将来的に電子錠の開閉や健康管理など複数の機能を持たせる予定という。

  国内では17日に1万9800円(税込み)で3000個限定の先行予約を開始し、1日で完売した。今年夏ごろまでに製品を顧客の元に届ける計画で、今後、海外市場へも投入する。

  MTGは同事業を手掛ける子会社の株式約80%を保有。国内での販売の手応えなどを見て、早ければ事業立ち上げから数カ月-半年程度でスピンオフの作業に入りたい意向だ。子会社の企業価値は今後の事業動向によって変動するとした上で、現時点では1000億円程度は「最低目指さないといけない」と述べた。 

  買収先の英企業が保有していた技術に改良を加えてエブリングの小型化に成功したMTGは金融当局とも相談しながらシステム構築を進める一方、今後パートナーになると想定される事業会社を中心に、出資への意欲について確認を進めているという。

  大田氏は「ローンチして様子を見たら早めに進めないとセカンドステップが踏めない。資本政策もグローバル展開する前提で考える」と話す。資本や事業パートナーが足りずに普及が止まることを恐れているとし、早期に子会社の新株を発行して投資家から資金を調達した上で分離、独立させる方針。その後上場を目指す。

ロナウドのCMで話題に

  海外ではアジアが最も有望な市場とみて注力するほか、欧米では買収先の英企業の別ブランドでの展開も視野に入れる。外資規制が厳しい中国でも現地企業に委託してロイヤリティーを得る方法などでの参入を模索し、10年後に世界で2000億円程度の売上高と20-30%の利益率を目指すという。

  大田氏は少なくとも人口の10%程度に普及する製品にならなければ事業として成立しないとし、システム構築などにかかる多額の初期費用をMTG単独で賄うのは難しく、「最初から外部の資本を入れてやるべき事業だと思っている」と述べた。

  MTGの子会社株保有比率は20%程度に低下することも想定しているが、買収時の費用を考えると、想定通りに企業価値が上がれば十分メリットがあるとした。

  1996年に創業し、名古屋市に本社を置くMTGは腹筋を鍛える「シックスパッド」のほか美顔ローラーやマスク、電気自動車など幅広い製品を手掛けている。過去にサッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドや歌手のマドンナなど世界的な有名人を起用したことでも話題を集めた。

  独立系の株式調査会社、雨宮総研の雨宮京子社長は「指輪だとはめておけばいいという便利さがある。コロナでいろいろなものがシンプルになっており、そういう時代の流れに合致している」とコメント。グローバルでの普及にはブランド力の確立が必須でMTGと分離させてIPOを目指す方が「戦略として正しい」と述べた。一方、各国の規制をクリアできなければ計画がとん挫するリスクもあると述べた。

キャッシュレスも追い風

  2018年7月に東証マザーズ市場に上場。株価は最高で8000円近くまで上昇し、メルカリなどと並ぶユニコーン企業として評価された。

  しかし、その後不適切会計の発覚などで株価は急落。昨年夏ごろから回復傾向にあるものの、一時3000億円を超えていた時価総額はピーク時の2割程度にとどまっている。25日の株価終値は前日比0.7%高の1528円。

  大田氏はフィンテックの分野では欧米勢が圧倒的に強く、日本企業は「昔から技術があっても採用されない。それでどんどん弱くなってしまった」と分析する。

  アップルウォッチでも充電しないと使えず、充電不要のエブリングとは「決定的に違う」とし、新型コロナで非接触型の生活様式が広がることが期待されるほか、政府がキャッシュレスを推進していることも事業拡大への追い風になるとの見方を示した。 

(識者コメントと株価情報を追加して記事を更新します)
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