イーサリアム、環境に優しいシステムへの年内移行望む-考案者が語る
Matthew Leising-
大量の電力を消費するPoWからPoSに移行へ
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仮想通貨イーサへの投資は有望とアナリストらが指摘
世界で最も利用されているブロックチェーン(分散型台帳)プラットフォーム、イーサリアムの開発者やユーザーはずっと批判にさらされてきた。二酸化炭素の排出問題で反論し続けた開発者らは今、テクノロジーの飛躍的進展で少なくとも1年以内にエネルギー消費を劇的に削減できるだろうと述べている。
イーサリアムやビットコインは「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」という仕組みを用いることで取引や送金が可能になるが、その過程でマイニング(採掘)と呼ばれる膨大な計算作業を行うため、世界のコンピューターネットワークを24時間稼働させる必要がある。
イーサリアムのソフトウエア開発者は以前から、PoWシステムの問題点である二酸化炭素の大量排出を解決する「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」システムへの移行を目指して取り組んできた。
PoSへの本格移行は複雑な技術面での挫折で遅れている。暗号資産(仮想通貨)は今月、イーロン・マスク氏がエネルギー消費の急増を理由にビットコインを使用したテスラ車購入を停止すると発表したことをきっかけに、最大級の価格変動に見舞われた。暗号資産業界は一刻も早い本格移行を待望している。
英ケンブリッジ大学のビットコイン電力消費総合指数(CBECI)によれば、ビットコインの年間電力消費量は現在、パキスタンやアラブ首長国連邦(UAE)での年間電力消費を上回る。同大学はイーサリアムの電力消費データは集計していない。
イーサリアムの考案者、ヴィタリック・ブテリン氏はインタビューで、「仮想通貨やイーサリアムがこの1年間で驚異的発展を遂げたことから、われわれにとってPoSへの転換が一段と急務になっている」と発言。年末までの移行を望んでいるとしたが、来年前半までというのが大方の見方だ。それでも昨年12月時点の見通しから大幅に早まっている。
「PoSが完了すればブロックチェーンの最大の問題点の1つが解決することになり、極めて喜ばしい」とも語った。

ヴィタリック・ブテリン氏
Photographer: David Paul Morris/Bloomberg
本格移行が完了すれば、環境意識の高い投資家が二酸化炭素排出の急減に注目し仮想通貨イーサが値上がりする可能性もある。
仮想通貨分析会社メッサーリのアナリスト、ウィルソン・ウィシアム氏は「環境・社会・ガバナンス(ESG)が大きな意味を持つことを無視するのは難しい」と指摘。「イーサへの投資を検討しているなら、ESGを巡る懸念はない」と説明した。
仮想通貨ファンドのパンテラ・キャピタル・マネジメントの見解も一致しており、創業者のダン・モアヘッド氏は5月10日の投資家向けリポートで、「イーサリアムには分散型金融利用の巨大なエコシステム(生態系)を保有しており、採用は急速に伸びている」と分析し、こうした「ダイナミクスを合わせると、イーサリアムはビットコインとの比較で市場シェアを獲得し続けると思う」とコメントした。

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原題:Ethereum Closes In on Long-Sought Fix to Cut Energy Use Over 99%(抜粋)