コンテンツにスキップする

トヨタが目指す完全自動運転の未来、富士山麓でウーブン・シティ始動

2月下旬、富士山のふもとに設営された白いテントの中で、トヨタ自動車の豊田章男社長は神主らとともに同社が建設を進める未来型実証都市の着工式に参加した。

Toyota Woven City

EDITOR’S

ウーブン・シティのイメージ

  「ウーブン・シティ」の建設予定地は昨年閉鎖されたトヨタ自動車東日本の東富士工場跡地を利用する。創業家出身の豊田社長は同工場の53年の歴史の中で高級車のセンチュリーやタクシー車両など752万台の車を世に送り出したことを紹介した後、「地域の皆さまとともに、 未来に向けた歩み」を進めていくと述べた。

  「ウーブン(織られた)」という都市の名称は織機メーカーとして誕生したトヨタのルーツと、車とソフトウエア、サービスなどを縫い合わせるという二重の意味を込めた。トヨタ自動車の製造、販売という旧来のビジネスモデルから脱却し、車を介してやり取りされるさまざまなデータを活用して自動運転など新しい価値を提供する方向にかじを切る、と宣言した形だ。

  2040年までに世界で3000万台の自動運転車が公道を走っているという予測もある中、現時点では最も高度な車ですら自動運転機能は制限され、運転手の監視を必要とする。自動車メーカーの幹部や業界の専門家の中には、普及のために必要な要素は「都市」であるとする意見がある。インターネット網やセンサー、レーダーなどを都市全体に張り巡らせ、取得した大量のデータを車に送ることで確実な自動運転が実現すると言うのだ。

  トヨタが自社でウーブン・シティの建設を進める背景には、自動車業界を取り巻くこうした課題に対応する狙いがある。トヨタはそこで、選ばれた住民らとともに人の輸送や物品の配達、移動店舗などの用途で自動運転車のテストを行う。一種の社会実験とも言える試みだ。工事が完了する2024年には、自動運転輸送の時代における中心市街地のモデルケースを世界に示すことを目指す。

仮想データ

  現状では、自動運転車が機能するためには周囲から情報を取り込むために車両自体にセンサーを設置する必要がある。トヨタとスマートシティーの共同開発を進めるNTTの栗山浩樹執行役員はインタビューで、今後のステップとして外部からの情報を車に送り込むことが重要になってくる、と指摘する。

  栗山氏によると、スマートシティーではセンサーやカメラを道路や信号機、ビルなどに設置し、携帯電話からの情報なども活用して歩行者の動きや降雨の情報などあらゆる情報を収集する。

  こうして得られた大量のデータが光通信網やデータセンター、クラウドを通じて処理され、実際の都市全体のデジタルイメージを形成。こうして合成された仮想データが車に送り込むことで、実際の世界で人の介入なしに安全な走行が可能になるという。

  NTTは20年3月にトヨタとの資本提携を発表、スマートシティの共同開発などに取り組んでいる。

  未来のモビリティに加え、自動でゴミを捨てたり、冷蔵庫の中の足りない物を補充するといった機能を持ったスマートホームもウーブン・シティの特徴となる。そのエコシステムは水素によって賄われる。自動車メーカーにとって大きく、野心的な試みだ。投資金額は明らかにされていないが、費用は10億ドル(約1080億円)を超える可能性が高い。事業費用を賄うため、トヨタは3月に最大5000億円のウーブン・プラネット債を発行すると発表した。

  不動産会社や建設会社ではなく自動車会社が都市を造るというのは不思議に見えるかもしれないが、トヨタなどにとって都市開発を進めるのは非常に実用的だ、とナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は指摘する。

潜在的な収益源

  通信で車がますます外部とつながるようになるのに伴い、車は住宅や都市インフラといったより大きなバリューチェーンの一部になる。自動車市場が今後数十年にかけて頭打ちになると見込まれる中、自動車メーカーにとっては新たな潜在的な収益源だ。

  中西氏は、モビリティと町と暮らしは一つに集約してくるとし、「誰がその標準ソフトをコントロールするのか。みんながやりたいと思っている」と語った。

  しかし、トヨタやNTTなどにとってスマートシティのプラットフォームをウーブン・シティ以外の場所に導入するに当たっては住民のデータ収集に対する反対を乗り越える必要がある。

  米IT大手グーグルの親会社アルファベットはカナダのトロントの臨海地区に自動運転車を支援するセンサーを備え付けたスマートシティー建設を計画し、数百万ドルを投じてロビー活動にも数年間を費やしたが1年前に断念に追い込まれた。新型コロナウイルスの感染拡大による不動産価格への影響が理由として挙げられたが、同事業はプライバシーを重視する活動家からの反対に何年も直面していた。

  NTTの栗山氏によると、純粋に技術的な観点からはウーブン・シティのプラットフォームを既存の街に持ち込むことは5-10年以内に可能となる。「地域の方々がその技術に対してウエルカムかどうかというのが重要」、と栗山氏は語る。NTTは収集したデータは住人と地元政府が所有権を維持すると約束することで米国とマレーシアでスマートシティー契約を受注した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE