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Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
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野村HD、ウォール街の一流投資銀入りの悲願道半ば-巨額損懸念

更新日時
  • 米アルケゴスとの取引で2200億円規模の損失可能性、27日に決算発表
  • 金融機関のリスク管理が問われる問題に、予期せず顕在化する恐れ

創業者の野村徳七が1908年にニューヨークなど海外を視察し、世界的な金融機関を目指すと誓って以来、野村ホールディングスはウォール街に目を向けてきた。しかし、米アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引で巨額の損失を計上する可能性が明らかになったことは、100年以上にわたる悲願の達成が道半ばであることを示した。

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ニューヨーク証券取引所などがあり世界の金融センターと称されるウォール街

Photographer: Jeenah Moon/Bloomberg

  アルケゴスは米ヘッジファンド、タイガー・マネジメントの元トレーダーであるビル・フアン氏の個人資産を運用するファミリーオフィス。3月下旬、レバレッジを効かせた高リスク運用で行き詰まる。取引先金融機関からのマージンコール(証拠金請求)に応じられず、わずか2日間で200億ドル(約2兆1600億円)相当の株式売却を迫られた。一部の金融機関は債権を全額回収できていないとされる。

  金融機関で最大の損失をかぶったのがスイスの銀行クレディ・スイス・グループ。1ー3月期決算で約5200億円の損失計上を発表した。野村HDはクレディ・スイスに次ぐ2200億円規模の損失が生じる可能性がある。会社側では損失の具体的な中身などについては明らかにしておらず、27日の決算発表でどこまで詳細が開示されるのか注目が集まる。

  ジェフリーズ証券の伴英康アナリストは「野村HDはウォール・ストリートのサークルに入れていない」と指摘する。情報網の中心グループにいなければ、危機対応の遅れにもつながる。米ゴールドマン・サックス・グループは軽微な影響にとどまるなど取引先金融機関の間で損失に大きな差も出た。「現地化を徹底する」ことが、今後の一つの選択肢だという。

不安定な海外ビジネス

  昨年12月に野村HDが開いた機関投資家向けフォーラム。奥田健太郎グループCEO(最高経営責任者)は「いまだに野村の海外ビジネスはマーケットの状況次第で浮き沈みの激しい不安定なビジネスのように受け止められていると感じることがある」と切り出した。

  「実際にはここ数年間の継続した取り組みの結果、変化の激しいマーケットの下でも安定的に収益を上げることのできる体制へと変わってきている」と続けたが、今回の出来事は図らずも市場の懸念が的中する形となった。

米州事業で苦戦する野村HD

税前利益の推移

出所:会社資料からブルームバーグ作成

注:Bは10億円、3月期ベース

  野村HDの米州事業は2020年3月期までの5年間で3度の税前赤字を計上している。奥田氏は17年4月から19年3月までニューヨークに駐在し、米州を統括した。同社が得意とする分野に経営資源を集中させ、縮小や撤退した事業もある。今回の損失計上につながったのは、プライムブローカレッジ事業。ヘッジファンドやその他の金融機関と協力して、彼らに資金や証券を貸し出し、取引を行う事業だ。

  東洋大学の野崎浩成教授は「リーマンショック時と今回を比較するのは適当でないが、共通する問題としては収益機会を求めた結果、無理をしていたという点が挙げられる」と分析する。「プライムブローカレッジ事業自体が悪いのではなく、リスク管理の問題だ。恐らく収益環境が厳しい中で、各社が与信判断の基準を緩やかにしていたのではないか」。

米事業の再検証を

  アルケゴスが保有していた米メディア企業バイアコムCBSなどの株式が暴落するまで、金融機関はアルケゴスがどれほど過剰なレバレッジをかけていたか把握できていなかった。金融機関の国際的規制機関であるバーゼル銀行監督委員会のキャロリン・ロジャース事務局長は、アルケゴスに関係した金融機関は「完全なエクスポージャーの全体像をつかむことができなかった」と指摘した。

  格付け会社フィッチ・レーティングスは3月31日付のリポートで「単一の顧客への多大なエクスポージャーは、野村のリスク管理の適切性に疑問を生じさせる」との見解を公表。JPモルガン証券の大塚亘アナリストは「米市場で競争力がある分野はどこなのか、もう一度検証する必要がある」との見方を示す。

  野村HDは損失計上の可能性があると発表した後、直ちに原因検証に乗り出した。プライムブローカレッジ部門のリスクを減らす措置を取り、一部のヘッジファンド顧客に対する融資条件を厳格化しつつある。関係者によると、プライムブローカレッジ事業を縮小する可能性もあるという。

  また、同社のサービスのうち一部の提供にとどまっている顧客については、他社への紹介を促すためのリストの作成に入ったという。野村HDの広報担当者はコメントを控えた。

顕在化するリスク

  日本の金融機関では他にも三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱UFJ証券ホールディングスが約300億円の損失計上を発表。みずほフィナンシャルグループもアルケゴスに関連した取引で100億円規模の損失を計上する可能性のあることが分かっている。金融庁は野村HDなど3社に対して、取引の実態やリスク管理に問題がなかったのか聞き取り調査を実施している。

  「一番の腕利きだと紹介してもらった」。十年以上前にフアン氏と何度も顔を合わせたことがあるという大和証券グループ本社元社長で日本証券業協会の鈴木茂晴会長。世界的な金融緩和の中でリスクの高い取引に資金が流れているとして、「予期せぬ場面でリスクが顕在化する局面が高まっている」と警鐘を鳴らす。アルケゴス問題は「リスク管理が問われる問題」との認識を示した。

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