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Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
cojp

政府、福島第1原発処理水の海洋放出を決定-2年後開始めど

更新日時
  • 海水で100倍以上に希釈し、モニタリング強化などで風評被害を抑制
  • 主要な放射性物質を除去した処理水は東京ドーム1杯分相当まで増加

政府は13日、東京電力ホールディングス(HD)の福島第1原子力発電所で保管されている放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋放出する方針を決めた。

  菅義偉首相は、処理水の処分について「福島第1原発の廃炉を進めるに当たって避けては通れない課題」と指摘。その上で、「基準をはるかに上回る安全性を確保し、政府を挙げて風評対策を徹底することを前提に海洋放出が現実的と判断し、基本方針を取りまとめた」と語った。

  経産省によれば、海洋放出にあたっては処理水を海水で100倍以上に希釈する一方、モニタリングを強化するなどして風評被害の抑制を図る。約2年後をめどとする海洋放出に向けて、東電HDに対し準備を進めるよう求めるという。

福島第一原発の汚染処理水タンク

福島第1原発の汚染処理水タンク

Photographer: Hitoshi Katanoda/Polaris Images/Bloomberg

  福島第1原発では2011年3月の事故で溶融した核燃料の冷却などで放射性物質を含む汚染水が大量に発生。専用の設備で主要な放射性物質が取り除かれた処理水は敷地内に建設された1000基超のタンクに保管されており、約125万立方メートルとほぼ東京ドーム1杯分相当まで増加している。22年夏にはタンクが満杯になる可能性があることから、政府は対応方針について判断を迫られていた。

  政府は処分方針を示した発表文書で、福島原発の廃炉に向けた取り組みを進める必要があり、処理水の問題を「これ以上の先送りはできない」と指摘。風評被害に対する懸念の声がある中で「海洋放出を行うことは、政府として重大な決断であると認識している」とし、対策に万全を期すと強調した。

  対策を講じた上でも生じる風評被害については、東電HDに対して「セーフティーネットとして機能する賠償により、機動的に対応するよう求める」としており、福島事故の賠償費用がさらに増加する可能性がある。東電HDによると、これまでの賠償金支払総額は約10兆円。

「主体性持って取り組む」

  東電HDの小早川智明社長は官邸で記者団に対し、決定方針に従って「主体性を持って適切に取り組んでいく」と述べるとともに、「最大限風評を抑制すべく、しっかり取り組んで参りたい」と語った。

  処理水の処分方法を巡っては、有識者で構成する政府の小委員会が2月の報告書で、蒸発させて大気に放つ水蒸気放出と海水で希釈して海に流す海洋放出が「現実的な選択肢」だと指摘。国内外の原子力施設でトリチウムを含む水が希釈された上で放出されている実態や放出のための設備の取り扱いやすさなどを踏まえ、水蒸気放出よりも「海洋放出の方が確実に実施できる」との考え方を示した。

  風評被害を懸念する漁業関係者などからは海洋放出について強い反対の声が上がっており、政府は海洋放出の方針を固めたと昨年10月に報じられたが、決定は先送りされていた。政府が3月に改訂した東日本大震災復興の基本方針でも、処理水の問題は「先送りできない課題」とした一方で、「適切なタイミングで結論を出していく」との表現にとどまっていた。

  経済産業省の原子力発電所事故収束対応室の奥田修司室長によると、海洋放出の方針が決まったことを受けて、現状のタンク容量で十分なのかどうか今後精査した上で、増設について検討していくという。

「非常に遺憾」と韓国

  海洋放出に関しては中国が日本政府に慎重な対応を求めるなど懸念を示していたほか、韓国も日本の決定は一方的で危険を引き起こすとして非常に遺憾だとの見解を発表した。

韓国、原発処理水の海洋放出に強い遺憾の意-十分な協議なく一方的

中国、日本に福島第1原発の処理水海洋放出計画の再検討促す

  加藤勝信官房長官は記者会見で、処理水の処分に当たっては「中国、韓国を含む外国政府、あるいは国際社会に対して理解を求めていくことは大変重要だ」と述べた。中韓や台湾を含む世界の原子力施設でもトリチウムを含む液体廃棄物を放出しており、必要な情報を高い透明性を持って提供していきたいと語った。

  一方、米国務省のプライス報道官は海洋放出の正式決定について、日本は「世界的に認められた原子力安全基準に合致したアプローチを採用したようだ」との声明を発表した。

(米韓などの反応や加藤官房長官の発言を追加して更新しました)
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