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【コラム】ダイモン氏「米債の価格正当化は難しい」の真意-チャパタ

  • ダイモン氏の債券警告は米経済ブーム予想が理由
  • ゴルディロックス期待、応援する価値がある

米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は株主への年次書簡に、「米債の価格を正当化するのは難しい」と記した。同氏は「ほとんどの人が10年物米国債を米債の代表格だと考える」と注釈を付けており、その10年物米国債の利回りは現在1.66%前後。

  ダイモン氏は以下のように書いている。

過剰貯蓄と新たな刺激策による貯蓄、巨額の赤字財政支出、追加量的緩和(QE)、想定される新たなインフラストラクチャー法案、ワクチン普及の成功、パンデミック終了前後の高揚感などで、米経済が急拡大するであろうことはほぼ間違いない。ブームが2023年に入るまで続くことは十分可能だ。このようなブームのシナリオの中で、米債の価格を正当化するのは難しい。その理由は二つ。一つは大量の発行を吸収しなければならないこと。もう一つはインフレ加速が単に一時的なものではないという不合理ではない可能性だ。

  もっとも、ニューヨーク連銀の研究者らは今週のブログで、今後数年の米成長に「過剰貯蓄が主要な原動力の一つになることはないだろう」との見方を示しているし、インフラ法案はまだ議論されている段階だ。ダイモン氏も「急拡大するであろうことは」や「続くことは十分可能だ」という言い回しで確言を避けている。 

   プライマリーディーラーの1社を率いるダイモン氏は、誰が米国債を購入するかについても問い掛けている。2兆2000億ドル(約240兆円)の米国債が市場にあふれると見積もり、多くの機関投資家は買い続けるしかないが、リスク回避を望む投資家は買わないかもしれないと指摘。「そうした買い手は、米国債の長期的かつ持続的な価値に不安を抱けば代替の資産を探すだろうし、見つけるだろう」と記述。さらに、米国のインフレ率は既に1.7%になっていると指摘している。

  しかし、書簡は代替投資先の具体的な例を挙げていない。2月の悲惨な7年債入札は記憶に新しいが、米国債を敬遠する広範な動きの兆候はほとんどない。インフレ調整後の利回りがマイナスなのも目新しい現象ではない。10年物の実質利回りは11年後半から13年半ばまでマイナスだったし、15、26、19年にも一時的にゼロを下回った。

Not So Negative

Inflation-adjusted Treasury yields are low, but no longer unprecedented

Source: Bloomberg

  ダイモン氏の書簡でもう一つ目立ったのは「ゴルディロックス」という言葉だ。同氏は、ゴルディロックス状態を「持続的な高成長、緩やかに上昇するインフレ(ただしあまり大きくは上昇しない)、上昇する金利(しかしあまり大幅ではない)」と定義している。しかしダイモン氏はここでも「ただし書き」を付ける。

われわれはゴルディロックスのシナリオを希求し、それが現実になる可能性があると考えるが、同時に他の二つのネガティブなシナリオも想定している。

1) 毒性と感染力の強い新型コロナウイルスの新しい変異株が、景気拡大を反転させ株式市場に打撃を与え、質への逃避によって金利を低下させる 

2) インフレ加速が一時的でない、あるいは緩やかでなく、米連邦準備制度が人々の想定より早期かつ速いペースで利上げをする 

の二つだ。

  それでも、ダイモンの論調はブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏とは異なる。「債券と大半の金融資産への投資の経済学はばかげたものになった」と先月発言したダリオ氏は、米国が「資本主義と資本主義者にとって住みにくい場所になるかもしれない」と論じた。ダイモン氏は米国の政治的機能不全を指摘することを辞さないが、「より強く、より平等な国家を作り上げることが可能だ」という楽観を堅持する。

  従って、米国債の価値についてのダイモン氏の警鐘は、ドルに対してネガティブな見方をするダリオ氏とは異なる。ダイモン氏は米経済が連邦準備制度の目標に到達すると考えている。それは当局の想定より早い可能性すらある。物事が期待通りに進むことはまれだが、ダイモン氏のゴルディロックスシナリオは応援する価値がある。

(ブライアン・チャパタ氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:
Jamie Dimon’s Bond Warning Isn’t Like Dalio’s: Brian Chappatta(抜粋)

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