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日本でも登場のトランジションファイナンス、海運など活用の余地大

  • 川崎汽船が3月に初のトランジションローン、LNG燃料船に充当
  • アジアでは脱炭素実現にトランジションの考え方重要-BofA林氏

地球温暖化対策として脱炭素への移行事業に調達資金を充てるトランジションファイナンスが日本でも登場した。第1号となった海運など二酸化炭素(CO2)排出産業の利用増が市場の拡大を後押しするとみられている。

  川崎汽船は3月、液化天然ガス(LNG)燃料による環境対応の自動車運搬船の資金調達で、約59億円のトランジションローンを活用した。国内のトランジションファイナンスは、国際エネルギー機関(IEA)の資料で2019年の燃料によるCO2排出量の約2%を占める国際海運の業界から産声が上がった。

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川崎汽船のLNG燃料自動車専用船「CENTURY HIGHWAY GREEN(センチュリー・ハイウェイ・グリーン)」

Source: Kawasaki Kisen Kaisha Ltd.

  10年代後半に民間の金融機関主導で広がってきたトランジションファイナンスは、20年12月に国際資本市場協会(ICMA)が企業に求める開示情報などをまとめたハンドブックを公表し、転機を迎えた。これにより、現在は環境負荷が大きい「ブラウン」とみなされる企業でも、脱炭素への移行戦略を示すことでESG(環境・社会・企業統治)ファイナンスのチャンスを得た。 

  川崎船は50年までに温室効果ガス排出量を08年比で半減する「“K” LINE環境ビジョン2050」を掲げる。江幡有沙・財務チーム長は3月30日のインタビューで、海運業界は脱炭素化に大規模な投資が必要で短期間での実現が難しいとし、ゼロエミッションの手前にある事業に融資してもらえる「トランジションファイナンスにマッチする」との見方を示した。

  川崎船のLNG燃料船は従来の重油燃料船に比べてCO2排出量を最大30%抑えられるが、ゼロにはできない。開発を進めている水素などの新燃料の運用開始は30年ごろになるとしている。

ポテンシャル

  トランジションファイナンスは世界でもまだ少なく、概念が定着してくれば海運業界をはじめ、航空、製鉄、化学といったいわゆるCO2排出産業をけん引役に急拡大するポテンシャルを秘める。S&Pグローバル・レーティングは3月のリポートで、今後30年間、排出産業で年間最大1兆ドル(約110兆円)の資金がトランジションファイナンスによって調達される可能性があるとしている。

  国内でも経済産業省などが近くトランジションファイナンスの日本版基本指針をまとめる見通しだ。50年までに温室効果ガスの排出ゼロを目標とする政府は夏にも次期エネルギー基本計画を公表する予定で、電力会社も移行事業に動きやすくなる。社債市場の関心も高く、21年度に早速5000億円規模のトランジションボンド発行を見込む声もある。

  バンク・オブ・アメリカ日本法人の林礼子副社長は、再生可能エネルギーへの移行が欧州ほど容易でない日本などのアジアでは、とりわけ脱炭素の実現にはトランジションの考え方が重要だと指摘する。賛同して資金調達する発行体は増えていくとみられ、国内版指針が秒読みの日本をはじめ、官民一体での取り組みが予想されるアジアが「このマーケットを育てるのではないか」と期待している。

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