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円LIBOR廃止まで9カ月、秩序ある移行に残された時間わずか

更新日時
  • 代替指標金利に切り替えたデリバティブはほんの一部
  • 「まだ大きな懸念があるように見受けられる」とバーンズ氏

ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)からの移行に関して、日本は世界の中で大きな懸念スポットになっている。

  円LIBORの公表停止までわずか9カ月となったが、LIBORを参照する約3000兆円相当のデリバティブ(金融派生商品)で代替指標金利に切り替えたものはほんの一部だ。さらに、フィッチ・レーティングスによれば、ローンや変動利付き債などのキャッシュ商品1500億ドル(約16兆6000億円)相当の満期はLIBOR廃止以降に到来するが、その多くは簡単に代替指標に切り替えることができない。

  今年末の期限が迫るにつれて、日本が技術的問題や係争、銀行間金利のボラティリティー上昇などが起こる無秩序な移行に直面するのではないかとの懸念が強まっている。3月にLIBORの廃止時期を発表した当局は、同時点までに新しい金利への移行ができないいわゆる「タフレガシー契約」のために「シンセティック(合成ベースの)」円LIBORの構築を検討していることを明らかにした。

  フィッチの金融機関担当ディレクター、 ウィリー・タノト氏(シンガポール在勤)は「問題は全体に広がっている。期限内に落ち着くべき所に落ち着くかもしれないが、少しでも間違いを犯せばうまくいかないだろう」と話した。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda News Conference As Central Bank Ramps Up Asset Buying, Holds Rates Steady After Fed Cut

日銀本店

  日本銀行と金融庁は各社の進捗(しんちょく)状況を監視し、必要に応じて措置を講じるとしている。共同声明によると、企業は円LIBORに基づくローンや債券の発行を6月末までに停止し、そのような証券の保有を9月末までに大きく減らすよう取り組むことを求められる。日本円金利指標に関する検討委員会の担当者はコメントを控えた。

Early Stages

Trading activity (measured by DV01) in cleared OTC and exchange-traded yen interest-rate derivatives tied to TONA is lagging global peers

ISDA/ Clarus Financial Technology

 

  日本も米英やその他の国と同様にLIBOR廃止に備え準備を急いできた。英国には1997年からLIBORの代替となり得る金利があり、米国では3年前に公表が開始された。日本にも97年から無担保コール・オーバーナイト物レート(TONA)があるものの、円LIBOR代替金利候補の一つは今月公表が始まる状態だ。その時点でLIBOR廃止までの時間は9カ月を切っている。

  米連邦準備制度理事会(FRB)などが設置した代替参照金利委員会(ARRC)は3月、フォワードルッキング(将来の金利を反映する)担保付翌日物調達金利(SOFR)のターム物レートについて、今年半ばまでにLIBORの代替金利として推奨する立場にないと発表した。

  ドルLIBORの主要なテナーの算出停止は1年半先送りされたが、円LIBORについては金利を提示する銀行であるパネル行からの支持がなく、先送りは現実的でなかった。

  日本の当局による近年の決定も移行をさらに複雑にする。米英と異なり日本の当局は、LIBORに代わる単一の代替金利を採用することを市場参加者に求めない。LIBORの日本版である東京銀行間取引金利(TIBOR)を存続させる決定は、TONAの採用を遅らせるとフィッチは指摘する。TONAは主としてデリバティブに使用され、もう一つの指標の「東京ターム物リスク・フリー・レート(TORF)」はローンと債券に使用される。

  クラルス・ファイナンシャル・テクノロジーのデータと分析によると、店頭と取引所で取引される円金利デリバティブでTONAを参照するものは2月時点で3.5%にすぎなかった。

  デロイトトーマツグループの監査法人トーマツでディレクターを務める岩木武氏は、TONA市場はLIBORへのエクスポージャーを吸収する準備ができていないと指摘。今後数カ月に加速するだろうと付け加えた。

  流動性の不足はTONAに基づくフォワードルッキングなタームストラクチャー(期間構造)の確立を遅らせる可能性もある。借り手が将来の金利を知るためのタームストラクチャーはTONAの採用拡大に必須だとフィッチは指摘している。

  また、LIBORが廃止された時点でまだ同金利を参照しているタフレガシー契約も問題だ。米国ではこうした契約にフォールバックレートを適用する法の整備が推進されているが、市場ウオッチャーによると日本ではこれについてほとんど進展がない。

  金融庁幹部は、円LIBORに関してタフレガシーの規模は限定的とし、TORF確定値の公表が始まれば、移行は加速するとしている。

  TORFはまだ試作段階で、QUICK社が4月26日から公表することになっている。TORF公表開始後は円LIBORから代替金利への移行が進み、大半が9月末までに完了すると日銀は期待している。

  英当局は3月に、レガシー契約が満期を迎えるまでの当座の措置としてシンセティック円LIBORをLIBOR廃止後1年間公表することを検討する方針を示した。

  新規の取引には利用できないものの、シンセティック円LIBORはLIBOR連動契約の当事者間の係争を防ぐのに役立つ可能性はある。しかしシンセティックLIBORは万能薬ではなく、バンカーは既存契約の移行に取り組まなければならないと、フィッチのタノト氏は述べた。

  国際スワップデリバティブ協会(ISDA)の指標改革責任者、アン・バトル氏は、TONAのターム物の公表が年央にも始まるだろうと楽観的な見方を示す。

  いずれにせよ、作業は迅速に進められる必要がある。クラルスは今年、代替指標金利採用比率の低さから、日本のデリバティブ市場は不安定な状態にあると警告した。

  クラルスのシニアバイスプレジデント、クリス・バーンズ氏は「新しい市場を作り出すことや、流動性を一つの商品から他の商品へ移すことが難しいことを私は知っている。まだ大きな懸念があるように見受けられる」と述べた。 

原題:A $27 Trillion Challenge Looms as Yen Libor Shift Nears (1)(抜粋)

(TONAについて情報を追加して更新します)
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