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陰謀と報復:日産がゴーン元会長の不正調査担当者を追放した経緯

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日産自動車で法務担当の責任者を務め、カルロス・ゴーン元会長の不正疑惑を巡る社内調査を主導したラビンダ・パッシ氏は、調査の完全性に疑問を呈したことで日産からの報復や降格、家族を巻き込んだ会社による監視などに耐えることを余儀なくされたと話す。

  日産の元グローバル法務担当のパッシ氏はインタビューで、ゴーン元会長の逮捕や国外逃亡に関して初めて口を開き、同氏が問題を抱えるとみる日産の企業文化や恐怖に満ちた風土、ラインから外れた者への陰謀や報復について語った。

  「普通の行為ではまったくない」。パッシ氏は自らの家族に対する監視について自身の考えを述べる。「日産は自動車会社であってKGB(旧ソ連の秘密警察)ではない」。

  パッシ氏はブルームバーグとのインタビューで、家族への監視について日産の幹部が警備担当のスタッフを使って個人を尾行させていた類似の事案も知っているとし、「尾行や監視ということについて、私は日産のセキュリティー部門が他者に対して実にひどい振る舞いをしてきたのを見てきた」と話した。

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パッシ氏(3月11日、ロンドン)

Photographer: Jason Alden/Bloomberg

  パッシ氏の言い分によると、日産の上級幹部らの利益相反や株価連動報酬(SAR)の制度の問題について同社取締役会の監視は十分ではなかった。

  ゴーン元会長は金融商品取引法(報酬の過少報告)や会社資金を不正流用した会社法違反(特別背任)の罪で起訴された。一方で事情に詳しい複数の関係者やブルームバーグが確認した資料によるとゴーン元会長の不正を糾弾した西川広人元社長兼最高経営責任者(CEO)やハリ・ナダ専務は本来より多いSARを受け取っていた。

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  西川氏は不正が明るみに出たことで2019年に社長を辞任したが、ナダ氏はいくつかの役職を失ったものの現在も会社にとどまっている。

  「多くの幹部がSARで利益を得ていたことが明らかになった」。パッシ氏は続ける。「相当な額のお金が本当はその資格がないにもかかわらず、これらの人々によって受け取られていた」。

  昨年秋に日産を退社したパッシ氏は、英国の内部通報者保護法に基づいて日産を相手取って不当解雇の訴訟を起こしている。

  日産広報担当のラバーニャ・ワドゥガウカル氏は、「パッシ氏の主張には数多くの事実誤認が含まれており、日産として異議を唱えている」と述べた。ナダ氏にコメントさせることも断り、「係争中の事案であり、われわれとしてはこれ以上コメントすることができない」と話した。

  日産を昨年退社する直前の日本での数カ月間、主要な職務を奪われて降格となった上、新型コロナウイルスが感染拡大する中で妻や4人の子供をロンドンに戻すよう圧力を受けたとパッシ氏は話す。またブルームバーグが既に報じたように、日産による仮処分申し立てを受けた横浜地裁の決定により、パッシ氏は自宅で会社のノートパソコンやスマートフォンを回収され、居合わせた家族は衝撃を受けた。

  パッシ氏はこれらの機器には日産幹部らによる「不正と、別な形式の不適切な行為」に関する証拠が含まれていたと主張する。

内部のあつれき

  ゴーン元会長の逮捕を受けて、経営陣は元会長の不正に関する内部調査の指揮をサポートするよう日産の社内弁護士として最も高い地位にあったパッシ氏に求めた。しかし、調査が進むにつれて、ゴーン氏以外の複数の主要幹部による深刻な利益相反に気付いたとパッシ氏は述べた。

  パッシ氏は当時の上司で、検察と司法取引をしてゴーン元会長追放の立役者となったナダ氏に利益相反への懸念を伝えるようになったが、ほぼ無視されたという。そのためパッシ氏は19年9月、調査の信頼性に関する自身の懸念を記した詳細なメモを独立社外取締役ら宛てに送った。そのメモの提出から3日も経たないうちに元会長への調査の担当から外された、とパッシ氏は述べる。

  それからまもなくパッシ氏は取締役会の会議から締め出され、世界中の200人以上の弁護士やスタッフで構成される日産の法務部門の管理権を失った。与えられた新しい肩書は英国で3人のスタッフを率いる立場のバイスプレジデントだった

  さらにその後、身辺調査が始まった。20年3月、パッシ氏は運転中にグレーのバンに尾行されていることに気付き始めたという。「そこで私は車内の何者かが写真を撮っているのに気付いた」。それ以降、パッシ氏とその家族の周辺では日常的に2-3人組の屈強な警護の男性の姿を見かけることになった。

  パッシ氏の自宅に仮処分決定の執行のために裁判所の執行官が訪れ、妻のソニアさんや子供たちを動揺させた。

  「これは脅しやハラスメントの一種であり、それが理由で私は日産を退社して日本を去らざるを得なくなった」。

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