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米金利上昇が悪影響、アジア新興国の「危機」懸念-ADB総裁

  • コロナ対応で対外債務が累積、銀行・資本市場・通貨の危機の恐れ
  • ADBは資金需要に積極的に対応、税制や徴税の課題も議論

アジア開発銀行(ADB)の浅川雅嗣総裁は、米国の金利上昇はアジア新興国の通貨価値低下や資本流出を招き、資本市場の「危機」につながりかねないとの懸念を示した。新型コロナウイルス対応で対外債務が積み上がり、リスクは高まっているという。

  浅川総裁は「米国の景気回復を背景に金利が上昇した場合にはアジアの資本市場に相当負担がかかる」と分析し、「債務累増問題は、深刻な影響を及ぼしうると非常に懸念している」と語った。コロナ危機に伴う経済低迷と不良債権の増加、金融システムの毀損(きそん)という経路を通じ「銀行危機、資本市場危機、通貨危機に発展していく恐れがある」とも述べた。

ADB president Masatsugu Asakawa

浅川雅嗣ADB総裁

Source: ADB

  米金利上昇で通貨価値が下がると資本流出圧力がかかり、ドル建て債務は現地通貨換算で膨張する。1990年代には米国の利上げを機にドル建て短期資金に依存していたメキシコへの資本流入が減り、通貨危機に陥った。国際通貨基金(IMF)と世界銀行によると、アジア域内で債務不履行のリスクが高い国は2015年時点で6カ国だったが、21年には11カ国に増加した。

  ADBは20カ国・地域(G20)などが合意した途上国債務の支払い猶予や債務削減の共通枠組みに参加しておらず、新たな資金需要に積極的に応える方針だ。コロナ対策に取り組むアジア諸国の財政資金を支援するための200億ドルの枠組みはすでに8割を契約。ワクチン供給のための別の90億ドルの枠組みからは、今月初めてフィリピンに4億ドルを貸し出し、インドやインドネシア、パキスタンからも要請が来た。

  浅川氏は、財政資金の需要は「山は越えた。必要な国があれば今年も出す用意はあるが、今の途上国の関心はワクチン」と述べた。

ADBによる支援額推移

コロナ対応で2020年は3割増

出所:ADB、2020年までは実績、21年は見通し

タックスハブ

  5月のADBの総会では、税制や徴税の課題についてアジア諸国の加盟国などが議論するタックスハブを立ち上げる方針だ。1)税収増に向けた税制の見直し、2)税制による脱炭素や不平等などの政策課題への対応、3)デジタル課税など国際的な税の協力ーを議論する。

  アジアの新興国の税収対国内総生産(GDP)比率の平均は、経済協力開発機構(OECD)加盟国より低い。債務問題の根本的な解決には、中長期的に税収を増やした上で、資本市場の整備で国内調達を増やし、対外債務への依存を減らすことが課題となる。

 浅川氏は「コロナ危機が終わると、基本的にはグローバリゼーションは戻ってきて、アジアは世界の成長のエンジンになるような地域になり続ける」との見方を示した。その上で、「デジタル経済も相当拡大していくので、きっちり適正な額の法人税を支払っていただくような努力は非常に重要になってくる」と話した。

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