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馬雲氏に代わり「兎主席」が人気-言論統制の中国、愛国的な論客台頭

  • 兎主席こと任意氏は故エズラ・ボーゲル氏の助手だった
  • 欧米による中国報道に失望しニューズレターを始めた新華社の記者も

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言論界に厳しい統制を敷く中国当局はアリババグループにメディア部門の縮小を迫る一方で、新しい愛国的な論客を育てようとしているかのようだ。

  そうした1人が、欧米メディアによる中国たたきに嫌気が差した人々の人気を集める「兎主席」(Chairman Rabbit)こと任意氏だ。ソーシャルメディアの「微博(ウェイボ)」と「微信(ウィーチャット)」で200万人を超えるフォロワーを持つ。米ハーバード大学で学んだ任氏は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などの著書で知られる中国研究家の故エズラ・ボーゲル氏の助手も務めた。

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馬雲氏

  任氏は電話インタビューで、メディアは「社会的責任」を持ち、国民感情について考える必要があると指摘。中国に関しては、国民が政治制度への信頼を失わないようにしながら、異なる視点を認めることとの間でバランスを引き続き見いだそうとしているとの認識だ。

  共産党が2012年に習近平総書記体制になって以降、党・政府批判への検閲は強まるばかりという状況にあって、任氏の成功はどのような発言までが許されるのかを見極める手立てになる。何人もの外国人ジャーナリストを追い出し、馬雲(ジャック・マー)氏が創業したアリババに香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)などのメディアを売却するよう圧力を加える習政権は、目の届かなかった「クラブハウス」など新しいメディアプラットフォームも頻繁に取り締まる。

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  任氏のような言論人を支持するのは、欧米の言い分のみならず、党機関紙の人民日報や国営の中央テレビ(CCTV)など中国官製メディアにも懐疑的な人々だ。任氏の投稿が注目を浴びたのは、香港での民主派による抗議活動のさなかだった。中国主流メディアの情報を鵜呑みにしない教育水準の高い読者を引き付けた。

  香港のデモ参加者は「アイデンティティー・ポリティクス」によって動かされていると論じた任氏は、黒いTシャツを着たデモ隊を白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)と比較。香港の指導層には「ディープステート」が入り込んでいるとし、リーダーたちの政治的見解を審査する必要があると主張した。まさに国家主席でもある習氏が今年示した「愛国者」だけが香港を統治できるという考えそのものだ。

中国当局は、新しい愛国的な論客を育てようとしているかのようだ

Daybreak: Asia.” (Source: Bloomberg)

 

  湖北省武漢で感染拡大が始まった新型コロナウイルスを巡る対応で批判にさらされた中国は、公式な情報源を超えて自国に有利な物語を必要としている。欧米は中国が高圧的な「戦狼外交」を展開していると見なし、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒ウイグル族や香港民主派への締め付けでも非難を浴びる中国はここ1年、一段と防御を固めた。

「中国の物語」

  習氏がずっと求めてきたのが、「中国の物語を世界に伝える」仕事をこれまで以上にうまく行うメディア関係者や学者だ。関係者によれば、復旦大学中国研究院張維為院長との研究に何人かが送り込まれている。中国の統治モデルは欧米の民主主義より優れていると強く説く張氏は、習氏お気に入りの学者の1人との評判だという。

  中国人民大学国際事務研究所の王義桅所長によると、中国人学者は欧米諸国が理解できるよう自国を説明するやり方を見いだそうと取り組んでいる。元外交官の王氏は米中デカップリング(切り離し)について、米国が中国を圧倒もしくは同化させることができない結果だとし、「米国には非常に宗教的な考え方があり、自分たちの世界観に連れて行きたがる。それができなければ、相手を悪魔と見なし破壊しようとする」との見方を示す。

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  欧米のジャーナリストによる中国報道に失望し、自らニューズレターを始めたのが王子辰氏だ。購読者1600人ほどをすぐに集めた王氏の「ペキンノロジー」(Pekingnology)は在北京の外交官やジャーナリスト、投資家らも読んでいる。共産党が20年に開いた第19期中央委員会第5回総会(5中総会)の「精神」といった政治分析や米国が制裁を科す華為技術(ファーウェイ)を事実上所有しているのは誰かなど、あらゆる問題を掘り下げる。

  「自国の習慣に深く根ざした視点から中国の物語を語ることは欧米にとって非常に価値があり、欧米も評価できることを示している」と王氏は述べる。

Wang Zichen

王子辰氏

  「国を深く愛している」と言う王氏は国営新華社通信で記者として働く。だが、兎主席のように独自の見解を発信しており、王氏自身のプロジェクトに上司が暗黙の了解を与えていると説明する。ツイッターで中国を真っ先に擁護する共産党系の新聞、環球時報の胡錫進編集長には敬服するとし、「意図した本来の意味で中国そのものをもっと人々に理解してもらうことは、私の職業における国民的な目的だと思う」と語っている。

原題:As China Targets Jack Ma’s Media Empire, Chairman Rabbit Thrives(抜粋)

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