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Photographer: Soichiro Koriyama/Bloomberg
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日銀のETF政策点検、「6兆円」削除や日経平均型除外の市場観測

  • 上限12兆円は維持しながら6兆円は撤廃し、柔軟性を持たせる可能性
  • 市場を歪めているとの批判をかわす施策に論点か-UBS・居林氏

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日本銀行が3月の金融政策決定会合で行う上場投資信託(ETF)の政策点検について、株式市場関係者からは買い入れ金額に幅を持たせることや、日経平均株価型の除外や買い入れ対象拡大の検討などを予測する声が出ている。

  日銀は昨年3月の会合で、新型コロナウイルス拡大の影響などを踏まえ、ETFの保有残高をこれまでの年間約6兆円増加させるペースから、「年間約12兆円」を上限へと変更した。日銀が1月に公表した昨年12月会合の議事要旨によると、複数の委員はETFなどの積極的な買い入れを当面維持する一方、市場機能への影響や日銀財務の安定性にも配意すべきなどと述べた。

ETF政策点検のポイント
  • 年間の上限12兆円は維持、原則6兆円は撤廃の公算
  • 買い入れ対象の日経平均型は副作用対策で除外も
  • ESGのETFを新たな購入対象として追加検討か
  • ETFの高止まりする信託報酬問題が議論の可能性

  UBSウェルス・マネジメントの居林通ジャパンエクイティリサーチヘッドは、コロナ禍での緊急事態宣言が継続されるような環境下では「コロナ対応としての12兆円枠をこのタイミングで取り下げるとは政治的にも考えにくい」と指摘。大きな枠組みの実質的な見直しは難しいとし、むしろ「市場が歪んでいるとの批判をかわすような施策に論点があたるのではないか」と予想する。

変化の兆し

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda News Conference After Rate Decision

黒田日銀総裁

Photographer: Yukie Nishizawa/Kyodo News/Bloomberg

  日銀は1月にETFの1回あたり買入額を減額し、2月は買い入れ実施条件も厳格化した。通常のETF買入額は1月が2004億円、2月は2015年10月以来の少なさとなる501億円にとどまった。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストの試算によると、過去の株価変動をもとに現状の買い入れ基準が続くとすれば、全体では年1兆6000億円ペースになるという。

日銀の買い入れ弾力化についてはこちらをご覧ください

  日銀の雨宮正佳副総裁は8日、ETF買い入れについて「必要な時に思い切って積極的な買い入れを行うことで、最大限の効果を上げる運営を行っていくことができないか考えたい」との見解を示した。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフエコノミストは「実態としては株価が高いときは買いのペースを落としていくような感じになる」としながらも、米金利高で市場が不安定な中では「緩和が後退したように受け止められないようにしてくる」と推察する。

減速傾向

2月のETF購入額は2015年以来の低水準に

Source: 日本銀行

Note: 3月10日時点

  このため株式市場では、長い間「原則的な買い入れ方針」とされながらも現状の買い入れペースから大きくかい離してしまった6兆円を撤廃すると同時に、ゼロから上限12兆円まで上下の幅を広げてセーフティーネットとしての柔軟な役割を強調するのではないかといった観測が出ている。エコノミストの間では、9割がETFの柔軟化を予想した。

日銀サーベイの詳細についてはこちらをご覧ください

  三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、マーケットは株高局面における日銀の最近の買い入れスタンスの変化を理解しているため、6兆円だけでなく12兆円も含めて金額枠が撤廃されたとしても、「ある程度織り込んでいる」と指摘する。

  12日付の毎日新聞朝刊は、日銀が「年6兆円ペース」のETF購入原則を削除する方向と報じた。同日の株価指数も小動きで市場の反応は限定的だ。

副作用対策

  もっとも、副作用対策で買い入れ対象の変更などが検討されれば、株式市場に影響を与える可能性もある。日経平均株価型ETFの長期買い入れに伴い、同指数寄与度の高いファーストリテイリング京セラといった一部銘柄で浮動株比率が低下し、結果的に指数を押し上げやすい要因にもなっているとの声が市場関係者の間では根強い。

  UBSの居林氏は、長期の日銀ETF買いが日経平均をTOPIXで割ったNT倍率を構造的に上昇させただけでなく、ETF政策の限界論にもつながったと分析。日経平均型の買い入れ対象からの除外や、既に保有済みの日経平均型ETFをTOPIX型に置き換えることなどが検討されれば、NT倍率が低下していく可能性があると予想する。

  また、ESG(環境・社会・企業統治)のETFを新たな買い入れ対象とすることやETF手数料などのコスト面での見直しなどが検討される可能性があると予想するのは、ニッセイ基礎研の井出真吾チーフ株式ストラテジスト。海外の中央銀行や機関投資家などグローバルではESGへの取り組みが大きな流れとなる中で日銀も対応が求められているとして、「ESGへの配慮がまったくない日銀の行動が変化すればESGに対する機運が高まり、世の中全体にとっても好ましい」とみていた。

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