, コンテンツにスキップする

【コラム】FRBに債券市場との闘いを期待してはいけない-チャパタ

1日を始める前に押さえておきたい世界のニュースを毎朝お届け。ブルームバーグのニュースレターへの登録はこちら。

「米連邦準備制度理事会(FRB)とはけんかするな」。長年この言葉を聞かされてきてもなお、債券市場のあらゆる動きをトレーダーとFRBとの新たなバトルという枠組みで捉えたくなるかもしれない。しかし、そうした衝動は抑えるべきだ。

  米経済が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を乗り越えた後でもFRBは本当に緩和策を維持するのか、トレーダーは疑念を持ち始めている。パウエルFRB議長はこうした疑念をどのように押し返すだろうか-。関心が高かった先週4日の同議長の発言機会を前に市場に広がっていたのは、基本的にそうした見方だった。

  だが、筆者はこれを適切な捉え方だとは思わない。FRBは少なくとも理論上、経済状態およびインフレと雇用の伸びが向こう数カ月、数年でどのように推移するかという予測に基づいて金融政策を決定している。市場の一部は2023年の早い段階における0.25ポイント以上の米利上げを織り込みつつあるが、金融政策の枠組みを変更し、フォワードガイダンス強化の方針を明らかにして以降、FRBが政策の道筋について発するメッセージに揺るぎはない。

  パウエル議長は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)主催の4日のイベントで、「利上げに関するガイダンスはかなり具体的だ。その段階に至るにはしばらく時間がかかる。それは景気がほぼ完全に回復したような姿だ。その状態にできるだけ早くなれば良いが、現実的には時間がかかる」と述べた。

What's the Problem?

Shorter-term yields reflect the Fed's pledge to keep rates near-zero, while longer-term yields indicate economic optimism

Source: Bloomberg

  大事なのは、米10年債利回りや30年債利回りに重きを置かないことだ。これらは最も注目されがちな指標だが、FRBの金融政策との関係性は最も薄い。パウエル議長は同イベントで、これら2つの利回り上昇にほとんど関心を払わなかった。上昇の速度は「顕著で、私の注目を引くものだった」とし、「われわれの目標達成を脅かすような、金融市場における無秩序な状況があれば懸念するだろう」と触れるにとどまった。

  米2年債利回りは現在0.15%程度。これは向こう2年間、FRBに利上げ圧力がかからないことを示唆している。3年債の利回りは約0.32%。FRBが恐らく2023年か24年に利上げすることについて「検討することを検討するだろう」というシグナルだ。5年債は変曲点にある。現在0.79%程度。一時は0.86%まで上昇した。1カ月前は0.46%程度にすぎなかった。

  5年債利回りの急上昇は、26年までに次のような状況が生まれるとの見方をトレーダーが強めていることを示唆する。

  • 米労働市場が「最大限の雇用」という漠然とした水準に達する
  • インフレ率が2%に達し、ある不特定の期間、2%を緩やかに上回る軌道に乗ったように見える

  実際のところ、それだけだ。パウエル議長をはじめとする米金融当局者は、この2つの条件が満たされなければ、政策金利をゼロ近辺から引き上げることはないと明言してきている。

  FRBが示している新たなガイダンスにはなお不明瞭な点も多い。従って債券市場とFRBが、本当の意味で闘いを繰り広げることになるのは次のような点だろう。米国の失業率が前回の引き締めサイクル時のような約4%へと改善した場合、それは最大限の雇用に関する現在の見解に沿うものなのか。インフレ率が2%に達したが、その水準をわずかに上回る程度で推移するにすぎないと予想される場合、それは2%を緩やかに上回ったと見なされるのか。以上のような状況が現出したときには、パウエル氏(あるいは同氏の後任である誰か)が言葉を尽くして市場に説明するだろう。

  それは、きょう明日の話ではないし、恐らく2021年中でもないだろう。FRBは目標に向けて「一段と顕著な進展」があれば、まずは債券購入を縮小するとの方針を示しているが、せいぜい、そうした進展があったかどうかを検討する程度かもしれない。

  それまでにイールドカーブ(利回り曲線)はスティープ化する可能性が高い。長期金利の上昇が経済成長を抑制するポイントに達するまで、それは続くだろう。だが、それはFRBの行動とは無関係の、自己修正メカニズムだ。このことを、債券市場がFRBと闘っているなどと誤って解釈すべきではない。米10年債はパンデミックのトンネルの終わりに明かりを見始めたにすぎない。

(ブライアン・チャパタ氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Stop Trying to Pit the Fed Against Bond Market: Brian Chappatta(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE