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インターネットの地政学、南仏マルセイユで米欧中の思惑が交錯

  • 中国企業が敷設を進める海底ケーブル、新たな対立の火種にも
  • 米国が警戒しているのが中国によるインフラ建設の脅威

フランスのマルセイユ港近くに海底ケーブルが年内に「上陸」する。「ピース」と呼ばれるこの海底ケーブルは中国企業が敷設を進める。中国からパキスタンまでは陸路、それから海に入り「アフリカの角」を経由しフランスに至る。海底部分の距離は約7500マイル(約1万2000キロ)だ。

  欧州とアフリカで事業を展開する中国企業向けサービスのスピードアップに大きく貢献することになるピースケーブルについて、マルセイユでケーブル地上局を運営する予定の仏電話会社オランジュの国際ネットワーク責任者ジャンリュック・ブイユマン氏は中国から「欧州とアフリカにパワーを投射する計画」だと話す。

  このプロジェクトはインターネットの地政学を巡る新たな対立の火種をはらんでいる。ピースケーブルを手掛ける亨通光電の株主3位は華為技術(ファーウェイ)だ。ファーウェイはまた地上局向けの設備と海底通信機器も製造している。

The Peace Cable

An undersea link will aid Chinese companies doing business in Europe

Data: Telegeography Submarine Cable Map

 

  フェイスブックアルファベット傘下のグーグルは十分な通信容量を確保しているとして、ピースケーブルを利用しないと表明。米国などはファーウェイを含む中国通信機器メーカーを安全保障上の理由からボイコットしており、たとえグーグルやフェイスブックが使いたいとしても、利用は難しい。

  海底ケーブルは戦略上、極めて重要だ。約400本のケーブルが世界中の国際インターネットデータ・電話トラフィックの約98%を運び、その多くを米企業が所有・運営。これが米国の同盟国に安心感を与え、インターネットでの米国の優位性を強めている。

  米国が警戒するのが、中国によるインフラ建設の脅威だ。ポンペオ米国務長官(当時)は昨年、米国とグローバルなインターネットを結ぶ海底ケーブルについて、中国による大規模な情報収集に利用されないよう国際社会に求めた。

  国家安全保障問題を理由に匿名を条件に語った事情に詳しい関係者によれば、仏政府はピースケーブルを巡る米国からの圧力をかわそうとしている。マクロン仏大統領は米シンクタンク、大西洋評議会との今年2月のインタビューで、「米国の決定に完全に応じる」必要のない仏政府はインターネットのインフラで中国を孤立化させることは望まないと発言。ドイツのメルケル首相もマクロン大統領と2月5日に開いた記者会見で、中国とのデカップリング(切り離し)は「特にこのデジタル時代において進むべき正しい道」とは思わないと主張した。 

  マルセイユの海辺に置かれるような海底ケーブルの地上局は盗聴しやすいとされており、注意深く対策が施されている。セキュリティー専門家によると、リスクがあるのは建設中だ。情報を抜き取るための「バックドア」を組み込むことが可能だという。米ハドソン研究所のロバート・スポルディング上級研究員はデータがスイッチなどを通過する際に盗聴されやすいことは 「常識」だと語る。

  世界の海底ケーブルは分断が進む一方になるかもしれない。平和紛争研究所(IPCS)とオランダのライデン・アジア・センターは2019年までに世界の海底ケーブルの11.4%について、中国が上陸地点もしくは所有者、サプライヤーになったと推計。この割合は25-30年に20%に高まると見込んでいる。

  米国とその同盟国が中国の海底ケーブル敷設を阻止したケースもある。オーストラリアは18年、南太平洋上の島しょ国を経由してシドニーとソロモン諸島、パプアニューギニアを結ぶ予定だったファーウェイ・マリン・ネットワークスの海底ケーブル計画を止めた。グーグルとフェイスブックなどが出資し、ロサンゼルスから香港を結ぶはずだった海底ケーブルは20年にルートが変更された。米国の安全保障当局が中国政府が統治する香港への接続に待ったをかけたのだ。

原題:China’s 7,500-Mile Subsea Cable to Europe Fuels Internet Tension(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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