, コンテンツにスキップする

チャートで探る日銀点検、ETF購入・YCC・マイナス金利が焦点

  • ETFは株高局面では買い控え、過度な不安定化局面で積極化検討
  • 長期金利の変動許容幅拡大や日銀当座預金の付利見直しとの見方も

日本銀行が3月の金融政策決定会合で結果を公表する予定の政策点検では、上場投資信託(ETF)の購入方法とイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)運営の見直し、マイナス金利の深掘りを軸とした金融緩和の機動性向上策が焦点となる。それぞれの課題と見通しを整理した。

  黒田東彦総裁の就任から約8年間にわたる大規模な金融緩和の継続にもかかわらず、2%の物価安定目標は達成できていない。4月に公表する新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、総裁の任期終了後の2023年度も物価は2%に到達しない姿が示されるのが確実な情勢となっている。

  政策点検はYCC導入につながった16年9月の総括的検証と異なり、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」の枠組み自体は変更しない。総括検証の考え方と現行の枠組みを前提に、緩和策の持続性を高めて2%目標実現に向けてより効果的な対応を行うための政策の微修正となる見込みだ。

大規模国債購入でも2%物価目標は程遠く

ETF買い入れ

  10年前に臨時・異例の措置として導入されたETF買い入れは、緩和策の強化で購入額が拡大し、日銀は最大の日本株保有者となった。日経平均株価が約30年ぶりに3万円台を回復するなど株価が歴史的高水準で推移する中での購入について、日銀で金融市場局長を務めた山岡浩巳氏(フューチャー取締役)は「バブルに拍車を掛けたということになる」と指摘する。

日銀が日本株市場支える

昨年の買越額はコロナ禍で7兆円超

出所:みずほ証券、ブルームバーグ

注:現物・先物取引の合計額、Tは兆、Bは10億。日銀はETFを買い入れ

  価格形成のゆがみに加え、個別企業の株式の間接的保有がコーポレートガバナンス(企業統治)に及ぼす影響への懸念も高まっている。市場では、購入手法にとどまらないETF買い入れの功罪に関する幅広い分析を期待する声も出ている。

  関係者によると、現在のような株高局面では買いを控え、市場が過度に不安定化した局面では積極化するなど、リスクプレミアムの大小に応じた一段とメリハリのある購入方法などが検討されている。経済・物価や市場の動向に大きな変化がなければ、年間で原則約6兆円、上限約12兆円の目標額は維持される見通し。市場ではより弾力的に運営できるよう上限だけにするとの見方もある。

日銀の間接保有比率が高い日本株トップ10

長期間の金融緩和で日銀は大株主に

出所:ニッセイ基礎研究所

YCC

  YCC導入以来、長期金利は「ゼロ%程度」に誘導目標が維持され、狭いレンジで推移してきた。米長期金利の上昇や日銀の政策点検への思惑から足元で0.1%を超えて2年3カ月ぶりの水準に上昇しているが、一段の緩和長期化を見据えた場合に市場機能への配慮は不可欠。ゼロ%中心に上下0.2ポイント程度となっている変動許容幅拡大や国債買い入れオペの見直しを予想する声が市場で出ている。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは変動許容幅拡大に関して、YCC政策が機能していると主張しながらコントロールを緩めることになると指摘。「不要なボラティリティーの上昇につながる可能性があり、日銀は誤解を招かないように意図をしっかりと説明する必要がある」と話す。

スティープ化

政策点検の発表以来、利回り曲線の傾斜化が進む

出所:ブルームバーグ

  黒田総裁は、新型コロナウイルス感染症の影響が続く中で、イールドカーブについて「全体を低位で安定させることが大事だ」との認識を示している。1月会合の主な意見では、一部の政策委員が長期金利のある程度の変動は「市場機能を通じて金融機関の運用ニーズを満たすことで金融システムの安定に資する」と主張した。ポストコロナを視野に入れた適切なイールドカーブに関する日銀の見解に注目が集まる。

日米独の10年国債利回りの推移

マイナス金利

  関係者によると、政策点検では将来的に0.1%のマイナス金利の深掘りを中心とした追加緩和を行う場合に想定される金融システムや市場機能への副作用の軽減策を検討する可能性がある。ショックの発生時などに機動的に追加緩和策を講じるための環境整備に加え、副作用の拡大とともに市場で広がる金融緩和の限界論を払しょくする狙いも込められている。

  元日銀理事の門間一夫みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストは、金融機関の日銀当座預金のうちプラス0.1%が付利される基礎残高部分の拡大などが副作用対策として考えられると指摘する。三菱モルガン証の六車氏は、3月会合で基礎残高の拡大を決め、将来的にマイナス金利を深掘りする場合は基礎残高の付利引き上げと合わせて行うと表明する可能性があるとみている。

日銀当座預金の3層構造

構造見直しで低金利政策による打撃を相殺も

出所:日本銀行、ブルームバーグ

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE