, コンテンツにスキップする

キャッシュレス化が加速、現金扱わない銀行店舗も-少額決済で顕著に

  • 経費削減や付加価値サービス提供にもつながり積極推進-全銀協会長
  • 高額紙幣の発行高が増加する現象も起きる、低金利化でたんす預金増

新型コロナウイルスの感染拡大を契機にキャッシュレス決済への移行が加速している。

  「これまでも緩やかに進行してきたキャッシュレスの流れはコロナ禍で途切れることなく、むしろ加速した様子がうかがえる」。全国銀行協会の三毛兼承会長(三菱UFJ銀行頭取)は18日の会見でこう述べた。

世界主要国のキャッシュレス決済状況

2017年時点

出所:キャッシュレス推進協議会の資料より

  現金での決済比率が他国と比較して高い日本では、海外からの旅行客が不便を感じるなどといった問題が以前から指摘されている。また、労働人口の減少でさらなる人手不足に陥る可能性がある中、小売りなどの現場での現金管理作業が効率化の妨げとなる。デジタル化で生産性の向上を目指す金融業界にとっても現金の取り扱いには費用がかかる。

  野村総合研究所(NRI)によると、銀行やコンビニエンスストアでの現金自動預払機(ATM)の設置費用や運営経費などで年間約7000億円、銀行店舗での現金関連業務に関わる人件費は同1000億円それぞれかかる。

  銀行業界では顧客への投資アドバイスなど、より付加価値の高いサービス提供に人員を充てるため、現金の取り扱いを止める店舗の拡大を進める動きも出ている。あおぞら銀行では1月から国内全店舗の窓口での現金の取り扱いをやめた。

  全銀協の三毛会長は「キャッシュレスは現金のハンドリングコスト引き下げによる社会的費用削減や、決済データの利活用による新たな付加価値サービスの提供など、一つのブレークスルーにもなり得る。銀行界としても引き続き積極的に取り組みを進めていきたい」と語った。

  政府は国内のキャッシュレス決済比率を現状の25%から2025年までに約40%に高める目標を掲げ、20年6月までの9カ月間、キャッシュレス決済の利用でポイントを還元する施策も実施した。新型コロナ禍で人との接触をなるべく避けることが求められていることも、キャッシュレス化の普及を後押しする。

キャッシュレス化が加速

少額決済で変化が顕著に

出所:金融広報中央委員会

注:支払金額が1000円以下の主な資金決済手段の比率、2人以上世帯で2つまでの複数回答

  日銀が事務局を務める金融広報中央委員会が1月に発表した調査によると、現金の代わりにクレジットカードや電子マネーが使われる傾向は高まっている。支払金額が1000円以下の場合、現金を利用すると答えた人の割合は20年に70.8%と前の年の84%から低下した。こうした傾向を反映し、1円などの少額硬貨の流通量は減っている。

  キャッシュレス化が進む一方、その動きとは逆行するような現象も起きている。日銀のデータによると、市中に出回っている1万円札の合計金額は増加傾向をたどり、1月末時点で107兆3000億円と1年前と比べて6.4%増えた。

  ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「1万円札を中心に、紙幣の発行高が増加を続けている背景には低金利環境が挙げられる」と指摘。預金しても金利がほとんど得られない状況が続いているため、自宅などでの現金貯蔵、いわゆる「たんす預金」化が進んだとみられるという。

  上野氏は「新型コロナ感染防止のための接触低減化の風潮もキャッシュレス化の追い風になる」として、「低金利などによって自宅などでの貯蔵が促される高額紙幣や500円玉の増加と、キャッシュレス化の影響をダイレクトに受ける少額硬貨の減少という二極化はますます進みそうだ」と述べた。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE