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組織委新会長に橋本聖子氏、安全な大会や日本の信頼回復へ重責

更新日時
  • 国民や海外の皆さまに安心安全と思ってもらえる体制整えると橋本氏
  • 五輪史で歴史的任命、日本や五輪運動に変化与える契機に-海外識者

東京五輪・パラリンピック組織委員会は18日、女性蔑視と受け取れる発言で引責辞任した森喜朗会長の後任に橋本聖子前五輪担当相を選出した。国民の8割が反対する五輪を安全に開催し、男女平等を巡って国際的に批判を浴びた日本の信頼回復が最大の課題となる。

Japan's Prime Minister Shinzo Abe Reshuffles Cabinet

橋本聖子氏

  

  選任された橋本氏は理事会で、「大臣を辞職するのは大きな決意だったが、東京大会の成功に尽力したいとこの場に立っている」とした上で、新型コロナウイルス対策が最重要課題だと強調。「国民や海外の皆さまに安心安全と思ってもらえるよう体制を整える」と話した。

  その後の会見では、会長交代の経緯が「国民を困惑させるものだった」とした上で、国民に丁寧な説明を心掛け、アスリートが迷うことなく夢の舞台に立てるよう空気を換えていくことがミッションだと述べた。また一連の混乱の中で辞退したボランティアに再び大会の一翼を担ってもらえるよう準備を整えると復帰を呼び掛けた。組織内の女性比率を40%に高めるため月内に方向性を提示するとも述べた。

  組織委は同日開いた候補者検討委員会での選考報告を踏まえ、緊急開催の理事会と評議員会を経てこの日2回目の理事会で橋本氏を正式に会長に決定した。男女半数ずつ8人で構成する検討委員会(御手洗冨士夫委員長)は16日から3日間にわたり、男女平等など5つの資質に照らしながら選考を進めてきた。

  御手洗会長は会見で、検討委員会では8人の理事が計9人の候補者を挙げて5つの資質について議論をした結果、全員一致で橋本氏を会長候補としたと明かした。

  内閣の規範は、国務大臣が公益法人などの団体の役職に就く場合、報酬のない名誉職などを除き兼職を禁じているため、橋本氏は2回目の理事会に先立ち菅義偉首相に辞職願を提出した。首相は橋本氏について「国民の皆さんや世界から歓迎される安全安心の大会に向けて全力を尽くしていただきたい。政府としてはしっかり応援したい」と述べた。首相は橋本氏の後任に五輪相経験のある丸川珠代参院議員を任命した。

  小池百合子東京都知事は「橋本会長はアスリートとしての経験も大変豊富であり、アスリート目線での大会運営も行っていただけることと大いに期待している」との談話を発表。 大会開催まで半年を切る中、「開催都市としてコロナ感染症対策に万全を期し、アスリートや子供はじめ多くの方々が待ち望む安全・安心な大会とするため」引き続き橋本会長や政府など全ての関係者と一丸となって取り組むと述べた。

  緊急理事会で組織委の遠藤利明会長代行は「春には観客数の上限や外国人客の受け入れについても決断する必要がある」とした上で、「ふさわしい方に一致をし、国、経済界、スポーツ界、組織委の立場で盛り上げてサポートしていく」意向を示した。

新会長に求められる5つの資質
  • オリパラ、スポーツに深い造詣がある
  • 男女平等や多様性などの理念を実現できる
  • 国際的活動経験と国際的知名度がある
  • 東京大会の経緯や準備状況を理解している
  • 組織運営能力と多様な関係者との調整能力がある

  1992年のバルセロナ五輪女子柔道52キロ級銀メダリストで日本女子体育大学の溝口紀子教授は、「男女平等などの理念実現」を除いて「4つの条件にいずれも達している」人選だと評価した。その一方で、森氏の秘蔵っ子なので、「森氏の指示で動くようでは国民の支持は得られないと思う」とし、大臣辞任だけでなく政治家も「辞職しないと透明性の証左にはならない」との認識を示した。

五輪にとって歴史的

  元米五輪サッカー代表選手で米パシフィック大学のジュールズ・ボイコフ教授は、女性が開催地の組織委会長を務めるのは2004年のアテネ五輪以来となるため、「橋本氏の任命は五輪全体にとって歴史的なものだ」と指摘。森氏の発言が功を奏し、日本やより広範な五輪運動に変化をもたらす契機になることを期待するとの見方を示した。

  五輪憲章は男女平等を強くうたっているが、組織委の女性理事比率は25%で映画監督や若手オリンピアンが名を連ねる。一方、常務理事以上は全て男性で、国際的な交渉の場などで女性が活躍する場面は少なかった。

  このため溝口氏は、五輪での女性の活躍は近年男性と変わらないのに女性役員の数は適切とはいえず、「ジェンダーの平等は道半ばだ」とした上で、組織委や日本オリンピック委員会(JOC)、日本スポーツ協会などの「女性理事、評議員の役員数を増やすことが喫緊の課題だ」と訴えた。

  メディア心理学研究センター所長で、五輪を題材とした「北京五輪による広告効果」などの研究論文があるパメラ・ラトレッジ氏は、「組織委が五輪そのものに重点を置くのではなく、参加者の幸福を第一に考えることを目的にするようなら、今回の女性への交代は良い一歩だ」と述べた。

スピード選任

  橋本氏の会長選任は森氏の辞意表明から6日後という短期間で決定した。同氏は新型コロナ感染の終息が見えない中、7月の五輪開催に向け、JOCや国際オリンピック委員会(IOC)とも協力しながら安全な大会運営を実現する重責も担う。3月25日には聖火リレーが、4月以降にはテスト大会も始まる予定だ。

  橋本氏は前回の東京五輪が開催された1964年生まれ。聖火にちなんで父親が「聖子」と名付けた。スピードスケートと自転車で夏冬計7回の五輪出場経験を持ち、92年のアルベールビル冬季五輪ではスピードスケート1500メートルで日本の女性選手で初のメダル(銅)を獲得した。95年の参院選で初当選、外務副大臣などを経て2019年に五輪担当相や女性活躍担当相に就任した。

  橋本氏の後任の丸川氏は18日夕、官邸で記者団に対し菅首相から五輪相に任命されたと明らかにし、「国民のために働く内閣の一員として、また全員が復興担当大臣だからしっかりやってくださいと申しつかった」と述べた。

  菅首相は丸川氏の起用について、「国会会期中でもあり、支障を来さないよう経験を生かして頑張ってもらいたい」とした上で、女性として若い発想で安心安全な大会の実現に取り組むよう期待感を示した。組織委会長選任を巡っては「いろいろなことがあったのは事実」と話し、組織委に対しては「橋本新会長を中心にまとまって頑張ってほしい」とした。

  丸川氏は元テレビ朝日アナウンサーで、2007年の参院選で初当選した。16年8月から1年間は五輪相を務め、現在は組織委理事。橋本氏が兼任していた男女共同参画・女性活躍担当相も引き継ぐ。

  森氏(83)は3日のJOC評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言。内外で批判が強まり、12日に辞意を表明した。後任候補には一時日本サッカー協会相談役の川淵三郎氏(84)が浮上したが、選任過程が不透明との批判から一転、受け入れを辞退するなど事態は混迷した。

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(橋本氏や御手洗氏の会見内容や小池都知事の談話などを追加して更新しました)
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