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コロナ禍の思わぬ恩恵、日本のスタートアップ企業に億万長者3人誕生

  • AIインサイドとラクス、フリーの株価急伸-創業者の資産が急増
  • コロナ禍で在宅勤務サービス需要拡大、デジタル化へのシフトが加速

日本株で人気のスタートアップ企業には共通点が2つある。1つは日常的と言える分野で事業を行っていること、もう1つは創業者が億万長者の仲間入りをしたことだ。

  手書き文書を電子データに変換するAIインサイドやクラウドベースの会計サービスを提供するフリー、経理や電子メールサービスで中小企業の支援を目指すラクスがそうした企業の一群だ。

  3社とも株価が過去1年間で2倍超に跳ね上がり、創業者を金持ちにした。いずれも人工知能(AI)やクラウドコンピューティングなどの技術を駆使しているが、それほど目新しい使い方をしているわけではない。

  3社の成功は政府によるデジタル化推進の成果であり、新型コロナウイルス禍の恩恵だと、日本株投資に助言するアシンメトリック・アドバイザーズのパートナー、ティム・モース氏は語る。

  そうした企業の成長が続くと予想するモース氏は「新型コロナ禍が多くの変化のきっかけとなり、一種の世代交代が起きつつある」と指摘。「政府自体が日本のデジタル化をさらに推し進めたい考えだ。社会の高齢化で反復業務の一段の自動化が必要になった」と説明した。

  在宅勤務から学習、ショッピングに至るあらゆる活動を支援するサービスを提供するテクノロジー企業にとって、昨年は素晴らしい年だった。米アマゾン・ドット・コムの創業者で世界2位の富豪、ジェフ・ベゾス氏は資産が2倍強に増加。米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのテレビ会議アプリは在宅勤務環境の必需品となり、創業者エリック・ユアン氏の資産は210億ドル(約2兆2000億円)に膨らんだ。

  高齢化が進む日本でも、コロナ禍がデジタル化へのシフトを加速させた。その恩恵を受けた1社がAIインサイドだ。

  既に急成長しつつあった同社の事業にとって、コロナ禍がさらなる追い風となった。昨年4-12月期の営業利益は前年同期の6倍近くとなり、2021年3月通期の利益は19億円程度に増える見通しだ。

  19年12月の上場以来、同社の株価は約1300%上昇し、時価総額は約1800億円に達した。ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、創業者の渡久地択代表取締役社長CEO(最高経営責任者)の純資産額は現時点で9億ドル(約950億円)に上る。同社は先週、渡久地氏が持ち株1.6%を売却すると発表した。

AI inside handouts

渡久地択氏

時価総額1000億円超AIインサイド、コロナ下の効率化追い風

  渡久地氏は自社の株価上昇には満足しているものの、その将来に大きな大志を抱いている。昨年12月のインタビューで、売上高が現在の10倍になったとしても「世界にチャレンジできる」レベルにはまだ届かないとして、売上高を毎年「最低でも2倍に」増やしたいと考えていると語った。

  ラクスとフリーも在宅勤務や自動化を促進するサービス需要拡大の恩恵を受けた。

  フリーの株価は19年の新規株式公開(IPO)以来538%値上がりし、時価総額は約5900億円に拡大。昨年7-12月期の売上高は50%増加。創業者の佐々木大輔氏の純資産は14億ドル(約1500億円)に急増した。

  ラクスの現在の時価総額は約3500億円。株価は15年の上場以来、2700%余り上げている。昨年4-12月期の営業利益は3倍に増え、創業者の中村崇則氏の資産は12億ドル(約1300億円)となった。

  3社の担当者はいずれも創業者の資産評価額についてコメントを控えた。

  最近の株価上昇で、特にまだ黒字化していないフリーなどの企業について、バブル懸念が一部で浮上している。それでもスタートアップ企業で大もうけしている起業家が日本にいることは、後に続く人々への刺激となる。

  モース氏は「日本で起業家となり、新たな事業をスタートする魅力はかつてないほど高まっている」と語った。

原題:
The Work-From-Home Tech Scene That Made These Founders Rich(抜粋)

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