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日経平均3万円の今昔物語、経験者語る「真逆環境」と「共通点」

更新日時
  • 景気方向性や海外勢売買動向などに違い-岡三オンライン証・伊藤氏
  • 金利に大きな違い、インフレ目線で3万円は通過点-ピクテ・松元氏

日経平均株価が3万円の大台を30年半ぶりに回復した。1990年当時と現在を比較すると市場環境の異なる点が多い半面、警戒すべき共通点もあるとの指摘がある。

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1988年の東京証券取引所の立会場

  1962年から60年近く証券界で働く岡三オンライン証券の伊藤嘉洋チーフストラテジスト(77)は、「日経平均はチャート上で言われる30年前の『いつか来た道』をたどっている。ただ同じ3万円水準でも、当時と現在とでは経済や相場の中身、市場心理は真逆だ」と話す。

  日経平均は1989年末に史上最高値3万8957円を付けた後に急落し、90年に3万円近辺でいったんもみ合いとなった。「金利上昇で過剰流動性相場が終焉するとの懸念から海外勢の利益確定売りで株価が崩れた。値ごろ感から下げ止まったものの、景気は下降していた」と、伊藤氏は振り返る。それに対して今回は「新型コロナワクチンでの経済正常化期待が高まり、景気や企業業績は立ち直っている。海外勢の大幅な買いが株価を押し上げている」と言う。

30年半前の水準まで上昇

  同じく相場環境が当時と現在が真逆だと語るのは、90年から運用業務に携わるピクテ投信投資顧問の松元浩常務(56)だ。当時は長期金利が7-8%近辺にあったことから、「長期金利の居場所、債券と株式の関係がまったく違う。当時はバブルが崩壊した後とあってリスクのある株式ではなく、すべて債券で運用してはどうかといった議論さえ社内であったのを覚えている」と言う。

  一方、現在はゼロ金利が長期化して相対的に債券の魅力が低下し、政府は新型コロナウイルス対策で巨額の財政政策を行っている最中にある。ピクテ投信の松元氏は「増税が経済をクラッシュさせかねないことを考えると、国が公的債務を減らすにはいずれインフレを起こして負債価値を減らしていくしかない」と読む。もしそうなるなら、「貨幣価値が減っていく中で購買力を維持する手段の一つして株式が選ばれる。3万円で達成感が出るのではなく、単なる通過点になる」と語る。

  投資家心理の方向感も正反対にある。現在は新型コロナに対する懸念が薄れつつある中、経済正常化への楽観が強まったことで日経平均が3万円を回復した。「たけぞう」こと、トレーダーの上利武嗣(51)氏は、3万円を付けた当時は証券会社の「場立ち」を担当していた。当時は「日経平均が最高値まで上り詰める過程があまりにも早かった。下がる過程も上昇ピッチが速いせいと思っていた」と話す。その後に株価変調が長期化するとともに、本当にダメだ、バブル崩壊だと思ったという。

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  90年当時、生命保険でファンドマネジャーだった三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジスト(64)は、土地など時価評価で膨らんだ純資産を基準に株価をみる「Qレシオ」という怪しげな指標が使われるなど冷静なロジックがなかったバブル時とは違い、バリュエーションやファンダメンタルズなどに対する「市場のロジックの在り方が正反対だ」と指摘する。

  当時は日銀の超緩和策や内需拡大策という日本一国だけの極端な政策で日本だけは無限に成長し続けると考えられていたが、現在は世界中が過剰流動性の状況にあって冷静さがまだ残り、「バブルとはほど遠い」と同氏は分析する。

  その一方、当時と現在と似ている点もあるという。「顔ぶれは違うが指数影響度の高いひと握りの銘柄が指数に影響を与えて先物主導の動きである状態は当時と同じ」と、岡三オンライン証の伊藤氏はみる。最高値に向かう過程で衣料品などを手がける片倉工業など「日経平均採用で業績を伴わない品薄銘柄群が空売りの買い戻しから大化けして最後に指数を押し上げていた」のに対し、現在は「10万円乗せのファーストリテイリング東京エレクトロンなど業績面の裏付けがありながらも一部の値がさ株が指数を押し上げている」。

  伊藤氏は「今回の日本株相場は30年に1回あるかないかの大相場」だとし、「いったん達成感が出やすい3万円が通過点となったということは3万1000-3万2000円まで行っても不思議ではない」と予想する。ただ、「先物主導で一部銘柄がけん引している相場とあって、日経平均3万円の相場実感が投資家に伴っていない。ちょっとしたきっかけで急落しかねない危うさもはらんでいる」と話していた。

バブル期には大相場に
(7段落以下に市場コメントを追記します)
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