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バイデン米政権、将来のインフレ憂慮よりも目前の経済課題に全力対応

  • 1.9兆ドル規模の追加経済対策を堅持-景気過熱の懸念は一蹴
  • 08年金融危機とその後の低調な回復を教訓に政策の見直し進む

1月20日に発足したバイデン米政権はこの3週間、新型コロナウイルス禍に対する救済策として、議会での追加経済対策の策定に向け重点的に取り組んできた。1兆9000億ドル(約199兆円)もの大型対策が実現すれば、景気過熱を招きかねないとの警告ははねつけた形だ。

  昨年3月に成立したコロナウイルス支援・救済・経済安全保障(CARES)法に次いで、米国史上2番目の規模の経済対策をバイデン大統領がこのまま堅持するのであれば、2008年の金融危機後に進んできた政策の大きな見直しの潮流の新たな節目となる。

  CARES法は、パンデミック(感染大流行)が本格化し始めて過去十年ぶりの深刻なリセッション(景気後退)に向かおうとする局面で制定されたのに対し、追加経済対策は景気回復がだいぶ進んだ段階で講じられることになる。

Rescue Acts

America's biggest peacetime fiscal expansions

Source: Office of Management and Budget, Congressional Budget Office

  低所得層を中心とする米国民の多数はまだ景気低迷の影響で苦境にあり、バイデン政権が追加対策が不可欠だとする訴える理由もこうした現状だ。しかし、マクロの数字を見る限り、モノの生産とサービスの提供はパンデミック前の水準をそれほど大きくは下回っていない。

  前回の経済対策に盛り込まれた個人向け現金給付のおかげで、家計が潤った世帯があることなどが一因で、ワクチン接種が進めばこうした現金を人々が消費に回すのも近いうちに容易となると考えられる。追加対策に懐疑的な人々は、何らかの形のインフレ高進も遠い先のことではないと指摘する。

  少し前であれば、このような見通しにはあらゆる方面で警戒が広がっていたであろう。米経済の政策担当者は過去数十年にわたり、慎重なバイアスがあったためだ。金融当局は物価急上昇の可能性を心配し、財政当局は財政赤字が制御不可能となって、金利が急上昇する事態を憂慮してきた。

  金融・財政の両面で常に目を光らせて、引き締め策でこの種の脅威をいつでも回避する姿勢で臨んだ結果、1980年以降の4分の3に相当する期間で潜在成長率を下回るペースとなったと、議会予算局(CBO)は分析する。格差が拡大したのもこの時期だ。

Mind the Gap

The U.S. economy has mostly grown below its potential since 1980

Source: CBO Economic Outlook, Feb. 2021

  08年の金融危機とそれに続く低調な回復を教訓に、政策当局やエコノミストは次第に従来とは異なる見解を抱くようになった。インフレ高進や財政赤字拡大といった将来の問題を予防する代わりに、現在直面している課題に全ての火力をもって対処するのがより理にかなうとの判断だ。

  ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハッチウス氏は、今振り返ると臆病に見えるが、「09年当時には積極的な刺激策について誤った警報を発する人々が大勢いた」と指摘。「急激なインフレ加速や通貨安、極めて人騒がせな複数のシナリオなどが大いに懸念されたが、どれも現実のものとはならなかった」と語った。

  バイデン政権がコロナ禍対策に「全力を挙げる」姿勢である根拠の1つには、こうした経緯があるとハッチウス氏は説明。新たな実験は成功であり、バイデン氏にはまだブレーキを踏む理由がないとコメントした。

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The decade before Covid-19 showed the economy could keep creating jobs without triggering inflation

Source: Bureau of Labor Statistics,

原題:Biden Presidency Starts With a Giant Bet on Run-It-Hot Economics(抜粋)

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