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五輪スポンサー企業や閣僚からも相次ぎ苦言-森氏への逆風強まる

更新日時
  • 「男女平等の精神に照らし不適切」「大変遺憾」組織委に対応要求も
  • ボランティア約390人が辞退、組織委は週内に臨時会合開催へ

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長に対する逆風が一段と強まってきた。女性蔑視とも受け取れる発言にトヨタ自動車などスポンサー企業や閣僚からも相次ぎ苦言が投げ掛けられ、東京五輪を「人類が新型コロナウイルスに勝った証しとする」との構想が揺らいでいる。予定が半年後に迫り新型コロナ対策に追われる組織委の課題は増える一方だ。

Tokyo Olympics Chief Yoshiro Mori Apologizes His Sexist Comments

五輪組織委の森喜朗会長(2月4日)

Photographer: Kim Kyung-Hoon/Reuters/Bloomberg

  スポンサー企業のトップの位置付けにあるワールドワイドパートナーのトヨタは10日、「今回の大会組織委員会のリーダーの発言は、トヨタが大切にしてきた価値観とは異なっており、誠に遺憾です」との豊田章男社長の談話を決算会見で公表した。

  東京五輪ゴールドパートナーのアサヒビールは、男女平等を掲げるオリンピック・パラリンピックの「精神に照らすと不適切な表現であり残念だ」とコメント。東京海上日動火災は同様の認識を示した上で「大変遺憾に思う。適切に対応するよう組織委に伝えた」としている。日本生命保険も「アスリートが力を最大限発揮し、多くの人々に歓迎される大会」になるよう尽力してほしい旨を組織委に申し入れた。 

  NECも「今回の発言は大会のビジョンである『多様性と調和』に反するものと捉えている」と表明した。野村ホールディングス日本航空ANAホールディングスは本来の大会の精神を尊重した上で開催に貢献していきたいなどと説明している。

  匿名を条件に語った企業の関係者は、勘弁してほしいと声を荒らげた。新型コロナ禍で企業の8割が中止や延期を求める中、社会的意義から支える決断をしたところに、森発言で今度は女性蔑視であるか否かの踏み絵が用意された気分だと述べた。別のスポンサー企業は正直腹立たしいとし、延期に応じた企業側の思いも考えてほしいと困惑する。

  一部消費者の間では、ツイッター上での呼び掛けを受けENEOSホールディングスなどのスポンサー企業に対する不買運動の動きも出ている。同社は森発言について極めて残念などとした上で、数件の意見が寄せられたとし、真摯(しんし)に対応していると明かした。件数や内容の公表は差し控えた。

ボランティア辞退

  森氏は3日の日本オリンピック委員会(JOC)評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言。本人は4日に謝罪し撤回したが、その後も内外で批判が強まっている。共同通信が6、7日に実施した世論調査によると、森氏は組織委会長に「不適任」とする回答が約6割に上った。

  JOCの山下泰裕会長は9日の定例会見で、「多くの企業が差別に対しては容認しないという姿勢を明確」にしており、森発言を「忘れることは当然あり得ないだろう」と言及。スポンサー企業に対して消費者から「黙認するのかという声も出てきて当然だと思っている」とも述べた。

  新型コロナの感染拡大で大会開催が1年延期されたのに伴い、組織委は昨年12月にスポンサー契約を締結していた国内全68社と契約延長で合意。総額220億円の追加拠出を得た。東京五輪の開催費用は総額1兆6440億円となっている。  

  組織委は7月に予定される大会開催に向け、受け入れ観客数を含め新型コロナ対策を盛り込んだ詳細な運営計画を立てる重要な時期にある。森発言への批判が内外で強まる中、大会運営を支えるスポンサー企業やボランティアの間に動揺が広がれば、開催準備に影響が及ぶ可能性もある。

  組織委は8日、競技運営などに関わる約8万人の大会ボランティアのうち、森発言の翌日4日から8日正午までに約390人が辞退したと公表した。組織委は理事会と評議員会による臨時会合を12日に開催、発言への意見を表明するとともに、男女共同参画への組織委の今後のイニシアチブについて議論する。橋本聖子五輪相、小池百合子都知事、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との4者会談も予定されている。

Tokyo 2020 Official Shops After Playbook Unveiled

東京五輪のオフィシャルショップ

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  小池都知事は10日記者団に、都のボランティア97人の辞退を明らかにした上で、「これだけの皆さんに不快な思いをさせてしまい開催都市の長としてとてもとても残念に思う」と指摘。4者会談については「今ここで会談してもポジティブな発信にはならないと思うので、私は出席することはない」と欠席する意向を示した。

国益に沿わない

  森発言を巡っては閣内からも厳しい声が相次いだ。菅義偉首相は8日の衆議院予算委員会で、「国益にとっては芳しいものではない」と発言。9日の同委でも五輪出場経験のある麻生太郎財務相が「国益に沿わないということははっきりしている」と同調した。

  菅内閣で橋本五輪相と並ぶもう1人の女性閣僚である上川陽子法相は、東京五輪が男女共同参画の大きな舞台と期待される中、「それを裏切るような発言だったと重く受け止めている」と指摘。夫人が五輪誘致に関わった小泉進次郎環境相は、「日本はやはり変わらない国なのかと国際社会から見られているとしたら大変残念なことだ」と述べた。

  NHKによると、立憲民主党など野党3党は10日、組織委の対応を見守るだけではさらに国益を損なう恐れがあるとして、菅義偉首相に対し、森氏の辞任を促すよう求めていく方針で一致した。

  森氏の去就を巡っては10日の衆院予算委員会でも取り上げられ、4者会談に森氏が出席するかどうかの質問に橋本五輪相は、「今後、組織委員会の会長は理事会、評議員会で決まっていくわけであり、その動きを注視しながら4者会談というのは決められていく」と説明。会長交代の可能性を問う重ねての質問には「代表者となる会長が4者会談に出席をするということで承知をしている」と述べ、明言を避けた。

  海外でもメディアが森氏の発言を批判的に報道。IOCのヘイリー・ウィッケンハイザー委員は自身のツイッターで「必ず朝食会のビュッフェでこの男性を追い詰めます。東京で会いましょう!」と発信している。

   IOCは9日、森氏の発言について改めて声明を出し、「完全に不適切」との見解を表明した。

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(第11段落に臨時会合の予定を追加して更新しました。更新前の記事では日本生命のコメントを訂正済みです)
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