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疾走する東京都競馬、コロナ禍も追い風にネットインフラ企業へ変貌

  • 都競馬の在宅投票システム「SPAT4」の会員数は約80万人に
  • 決算と中計を15日発表、株価試金石に-サマーランド改革も焦点に
昨年12月29日に行われた「東京大賞典」レース

昨年12月29日に行われた「東京大賞典」レース

Source: TCK

新型コロナウイルスの感染が長期化する中、インターネットを活用して利便性が向上した地方競馬の馬券売り上げが好調に推移している。地方競馬の人気復調ぶりは、投票システムを運営する東京都競馬のビジネスモデルも変貌させている。

  地方競馬で年間最も注目され、1年を締めくくる唯一のG1レース「東京大賞典」。2020年12月29日に行われた東京大賞典の売り上げは前年比8.4%増の60億7445万円と、地方競馬の1レースとしての最高額を更新した。11月の「JBCクラシック」の売り上げも前年比66%増で3年ぶりに過去最高となるなど、地方競馬の人気が高まっている。

  地方競馬全国協会によると、地方自治体が主催する全国15の地方競馬の売り上げは2014年度以降に毎年2桁増が続き、今年度は12月まで前年同月比31%増と増加ペースが一段と加速している。インターネット経由での馬券購入やレース中継、競走馬データなど地方競馬へのアクセスが容易になったことで、ファン層の裾野が広がりつつある。日本中央競馬会が主催する中央競馬の総参加人数が2019年度に前年度2.3%増と3年連続で過去最多を更新する中、競馬人気の波は地方競馬へもじわり波及している。

  東京都品川区の大井競馬場など公営競技の施設を地方公共団体に賃貸する事業を展開する東京都競馬も、地方競馬ブームの恩恵を受けている。20年12月期の営業利益はその前の期に比べて34%増の106億6000万円と、9期連続の増益見込み。新型コロナの影響で競馬場は無観客開催が増えた半面、競馬場や場外馬券売り場まで直接足を運ばなくとも全国の地方競馬の馬券が買えるインターネットの購入システム「SPAT4」の普及に弾みがついている。

ネットと相性の良さ

  東京都競馬の中西充社長は「コロナの状況で他の娯楽・レジャーが楽しみにくい、外に遊びに行くのが難しい環境になってきた」とし、「自宅にいる時間が増えたことで手軽に楽しめるレジャーとしてたくさんの方が地方競馬を楽しんでいる」と語る。さらに、「美しいサラブレッドが走ることの魅力への理解が近年進み、公営競技の中でも競馬は比較的イメージが良く認知度が高い。馬券は100円から買えるので、健全な娯楽として楽しんでいただける要素がある」と言う。

  中央競馬は基本的に土日開催なのに対し、地方競馬は平日に開催され、ナイター競馬も行う。都競馬が所有するSPAT4は都内の大井競馬だけでなく、日本全国の地方競馬の馬券を購入することが可能なほか、一定のキャッシュバックがあるメリットがある。中央競馬でも地方競馬は買えるが、システムのメンテナンスなどから曜日によっては全レースを買うということはできなかった。

  SPAT4を利用すれば日本全国どこにいてもどの競馬場であってもネットで便利に馬券が買えてレースも生中継で楽しめるようになったため、「レジャーとしての性格は変わったのかもしれない」とも中西氏はみる。SPAT4の会員数は、18年末が約60万人、19年末が67万人だったのに対し、20年末は約80万人と増加ペースに弾みがついている。

  SBI証券アナリスト、田中俊氏は「ギャンブル市場はパチンコやパチスロが厳しい規制からすたれ、手軽な公営へと人口が流れている。特に地方競馬はネットとの相性が良い」と語る。以前のファン層は60歳以上が多かったが、SPAT4導入による利便性向上で一気に若返りが進んだ結果、現在は30-40代が約半分を占めるという。さらに新型コロナ感染拡大でリモートワークが増えたことで、「早い時間帯や仕事中でも買えるようになったことも大きい」と語る。

サマーランドの環境は厳しさ

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中西充社長

Source: Tokyotokeiba Co.

  都競馬の株価は、新型コロナ感染拡大による競馬ビジネスや東京・あきるの市で運営する「東京サマーランド」への悪影響が懸念され、昨年3月に急落。その後はSPAT4の会員数増加による成長期待の高まりから、同10月には1994年以来の高値となる5920円まで買われた。

  一方、昨年末に遊園地事業の減損損失の計上と前期純利益の下方修正を発表した後、株価は上値がやや重くなっている。ジェフリーズ証券のアナリスト、竹内進之介氏は1月22日付リポートで、東京サマーランドの投資懸念やSPAT4の成長率の見えないことが株価の調整理由と分析する。

  都競馬の中西社長は中期的な経営環境について、「土日に中央競馬で楽しんでいた方が、平日に地方競馬もやって楽しいことを経験された。ある程度堅調な形で馬券の売り上げそのものは推移していくのかなと考えている」と言う。その半面、「経済状況が極端に悪くなってきたら難しい面はあるかもしれない。日本経済の状況などに注意していく必要がある」との見方を示す。

  都競馬は2月15日に本決算と中期経営計画を発表する。SBI証の田中氏は「都競馬は以前は不動産賃貸企業に近かったが、利益の大半を稼ぐSPAT4によってネットのプラットフォーム提供会社に変わった。ネット企業として評価されれば、数年先にはPER30倍の1万円までいってもおかしくない」と言う。ただし、ネット企業として評価されるには、経営不振の東京サマーランドについて「抜本的な手を打つ必要がある」。今後の株価動向を占う点では、サマーランドの収益改善策も一つの試金石となりそうだ。

SPAT4の成長期待織り込む
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