任天堂の今期営業益、12年ぶり過去最高に-スイッチ好調続く
古川有希、望月崇-
今期2度目の上方修正、従来予想比24%増の5600億円
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今後も勢いが続くかは「スイッチ新モデルが鍵に」とアナリスト
任天堂は1日、今期(2021年3月期)の営業利益が従来予想比24%増(前期比59%増)の5600億円になる見通しだと発表した。ブルームバーグが集計した市場予想5545億円を上回る。新型コロナウイルス禍で続く巣ごもり需要を背景に、家庭用ゲーム機「スイッチ」の好調が寄与する。

任天堂のスイッチ
営業利益予想の上方修正は昨年11月に次ぐ今期2度目で、12年ぶりに過去最高益を更新する見込み。スイッチの販売目標も本体を2650万台(従来2400万台)に、ソフトを2億500万本(同1億7000万本)にそれぞれ引き上げた。
業績予想の上方修正を受けて配当予想の修正も発表。従来は1株当たり450円としていた期末配当を1070円に増やし、年間配当を1880円とする方針を示した。前期実績との比較では790円の増額となる。
今期の業績予想 |
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新型コロナ感染拡大の長期化により、自宅でゲームをする巣ごもり需要の追い風が続いている。3月で発売5年目に入るスイッチが任天堂の収益拡大のけん引役となっている。
発表によると、4-12月期累計のソフト販売は人気化している「あつまれどうぶつの森」が1941万本、「リングフィットアドベンチャー」が595万本と好調だった。ソフトのダウンロードや有料会員サービスなどのデジタル売上高は2560億円と前年同期の2倍に拡大した。
古川俊太郎社長は決算会見で、「昨夏以降、スイッチ本体の生産は回復しており、半導体部品も含め当面の生産、販売に必要な部材は確保できている」と説明。1-3月期も販売を伸ばしたいとの考えを示した。年明け以降も想定以上の需要があるという。
その上で、国内では「一部製品が品薄になる店舗などが発生する可能性はある」とし、コロナ禍で商品の輸送に一定の遅れが生じていることも明らかにした。直近でスイッチの新モデル発表は予定していないとしている。
保守的な見通し
エース経済研究所の安田秀樹シニアアナリストは、任天堂の1-3月期のスイッチ本体の販売予想は保守的で、「現在の勢いから350万台は売れるとみられ、今期は2800万台弱になる」との見方を示した。勢いを維持できるかは、現行品と差別化できる新モデルを発表できるか鍵になると述べた。
米国モーニングスターの伊藤和典アナリストは、年末商戦では例年ほどの目玉ソフトがなかったが、巣ごもり需要に加え、「任天堂の総力、資産の強さ」が出たと評価。デジタル売上高も増え、「以前より収益力が出しやすくなっている」と分析した。
任天堂は利益率の高いソフトのデジタル販売や有料会員サービスの強化にも取り組む。人気キャラクターを活用し新規顧客の開拓も試みるが、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン内に新設したスーパーマリオの世界を体験できるテーマパークは、新型コロナの影響で営業開始が再延期されている。
10-12月期の業績 |
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任天堂はスイッチの生産を主に台湾の鴻海精密工業に委託しているが、需要拡大に伴い、シャープを委託生産先に加えた。昨年末の商戦期には競合相手のソニーが「プレイステーション5」を、米マイクロソフトが「Xbox」シリーズの新型機を投入した。
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