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習氏直々の指導に中国フィンテック戦々恐々-乱気流に備え再編探る

  • 習総書記は金融当局に監督の役割を極めるよう求めた-人民日報報道
  • P2Pの大失敗は後手に回ってはならないという当局が学んだ教訓

中国のフィンテック企業アント・グループが昨年後半、超大型の新規株式公開(IPO)実施に向け準備を進めると、国外では中国のテクノロジー大手が欧米の銀行や決済会社を脅かすグローバルな競争相手になるのではとの見方が浮上した。

  配車から投資まであらゆる機能を備えたアントのアプリ「アリペイ(支付宝)」は、世界2位の経済大国で金融サービスの在り方をすでに大きく変えていた。だが1つ問題があった。国内で育ったスーパースターたちが突然支配力を強めたことに共産党幹部が不満を募らせていたのだ。

  アリババグループ傘下のアントは上場直前の11月3日、350億ドル(約3兆6300億円)規模のIPOを中止。その前に、アリババとアントの共同創業者である馬雲(ジャック・マー)氏は当局に呼び出されていた。

  多くの投資家は驚いたが、中国政府は2017年前半から国内の53兆ドル規模に上る金融システムのリスクを減らそうと取り組んでいた。企業経営者が富を増やし、影響力を持つようになり、一段とずけずけと物を言うようになっていることも当局は懸念していた。馬氏はその3つにいずれも当てはまった。

P2P

  当局がそれまでに取り締まってきたのは、貸し手と借り手をインターネット上で結び付けるピア・ツー・ピア(P2P)の融資事業者や借金漬けのコングロマリット、経営難の地方銀行だった。アントを巡る混乱は、つい最近まで規制の緩さという恩恵にあずかり急成長を遂げたフィンテック企業の世界に当局が照準を定めたことを示す兆しだ。

  スタートアップ企業は今、資本増強を急ぎ、事業の再編方法を検討し、さらなる乱気流に備えている。複数の監督機関が融資慣行から銀行業務提携、データの機密性に至るあらゆることを調べているためだ。監督強化は最高指導者からの直々の命令だ。中国共産党の機関紙、人民日報は昨年11月、習近平総書記(国家主席)が金融当局に対し監督の役割を極めるよう求めたとの銀行保険監督管理委員会(銀保監会)当局者の説明を掲載した。

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「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」2021年1月25日号

写真家:アラミー(3);ゲッティイメージズ(8); NASA(1)

  政府は特にオンライン融資業に焦点を絞っているようだ。最大のプレーヤーはアントで、昨年6月の時点で2兆1000億元(約33兆6000億円)の融資債権があった。同社は今、この事業を抜本的に見直すよう指示されている。事情に詳しい関係者によれば、アントは金融事業(ウェルスマネジメント、決済、保険、貸し付け)を持ち株会社に統合する計画を行っている。そうなれば銀行のような形で監督され、資本要件も一段と厳しくなり、過去数年のようなペースで拡大する力が抑えられる可能性がある。

  当局の本気度を疑うなら、P2Pを見ればいい。ピーク時には5000余りの貸し付けプラットフォームが5000万人以上の利用者を呼び込み、年3兆元の取引を処理したが、詐欺が横行し不履行も常態化。当局が18年に取り締まりを始めると、20年11月までには稼働プラットフォームは皆無となり、1220億ドルを超える未返済の借金が残された。

次の標的

  P2Pの大失敗は、後手に回ってはならないという当局が学んだ手痛い教訓だ。だが馬氏は今やよく知られるようになった上海での「外灘金融サミット」でのスピーチで、「P2Pで起きたことだけを理由に金融イノベーションへのインターネット技術の貢献を否定することはできない」と述べたのだ。

  とにかく当局はアントの取り締まりを進めた。同社の膨大なユーザー数や融資の規模、国内資金の流れに対する影響力などがその理由の一端となった可能性がある。アントはIPO目論見書で重視するセクターの大半でナンバーワンだとうたっており、標的になりやすかった。IPO中止前、アントの推定価値はゴールドマン・サックス・グループの4倍だった。

  アント同様に、テンセント・ホールディングス(騰訊)やJDドットコム(京東)といったテクノロジー大手が出資するプラットフォームもまた、独禁規制強化案に基づき資本を増やす必要があるかもしれない。当局は不手際があった場合に金融と社会の安定が損なわれることを恐れているのだ。中国人民銀行(中央銀行)の共産党委員会書記を兼ねる郭樹清銀保監会主席は先月の会議で、「大手テクノロジー企業はデータ独占を利用して、公正な競争を阻害し過剰な利益を求める傾向がある」との認識を示した。

原題:China Tightens Grip on Homegrown Fintech Firms After Ant Debacle(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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