東京五輪開催の可否を左右する5つの要因、半年後に控え悲観論噴出
萩原ゆき、Max Zimmerman、富沢綾衣、古川有希-
政府や組織は意欲、日本が非公式に中止を結論付けたと英紙
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IOC理事会に権限、開催都市への政治的配慮も-識者
(ブルームバーグ):半年後に迫った東京五輪・パラリンピック大会の開催への悲観論が噴出している。政府や大会組織委員会は開催を繰り返し強調するが、突然の中止発表への警戒感は国内外でぬぐい切れない状況が続いている。
「延期に伴う数々の難題を乗り越えてきた。自信を持って大会準備に当たりたい」。東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎総長は12日、年頭あいさつで開催に強い意欲を示したが、世界の状況はむしろ厳しさを増している。世界的に新型コロナウイルスの感染が再拡大し、感染力の強い変異株の出現で不確定要素が強まりつつあるからだ。
国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド委員は7日に大会断念の可能性に言及した。22日には英タイムズ紙が五輪中止を日本政府が非公式に結論付けたと報道した。
IOCのトーマス・バッハ会長は21日、共同通信のインタビューに開催の代替案はないと述べ、中止や再延期の可能性を否定。坂井学官房副長官も22日の会見で、タイムズ紙の報道について、「そのような事実はないことをきっちり否定させていただきたい」と変更がないことを訴えた。

トライアスロン会場となるお台場海浜公園
大きなプロスポーツ大会の再開やワクチン接種の開始で幾分楽観論も出てきているが、日本では感染者急増に伴う2回目の緊急事態宣言が発令され、国内世論も反対の声が強まるといった逆風も吹き始めているだけに、不透明感は依然根強い。
パウンド氏は昨年2月、IOCや日本の組織委員会に先立って大会の開催是非に言及。翌月バッハ会長と会談した組織委員会の森喜朗会長が「4週間かけて検討することになった」と述べたが、その2日後には、当時の安倍晋三首相が延期での合意を発表した経緯がある。
五輪憲章には大会中止の規定はあるが、延期の選択肢はない。開催都市に契約義務の不履行があった場合には、IOCはいつでも開催を撤回できる権利を持つと定めており、開催地が万全の感染対策で大会運営ができないと判断した場合には、理事会を開催して中止を決めることができる。
日本オリンピック委員会(JOC)の元参事でスポーツコンサルタントの春日良一氏は、昨年の延期決定はあくまでも例外的だとした上で、再延期は「理念的にも現実的にもない」とみる。4年に一度の大会に向け練習を重ねる選手への負担が大きく、IOCが掲げるアスリートファーストの理念に反するためという。
早稲田大学准教授でスポーツ法を専門とする松本泰介氏は、日本の場合は「開催できなければ政治的主導力が弱かったとみられ、政権交代の火種にもなりかねない」とし、IOCは政治的配慮が必要と認識していると述べた。
このため、昨年の延期を安倍首相に相談したように、今回は権威的な組織に判断根拠を求めたいとの意向はあると松本氏は語った。IOCのケバン・ゴスパー元副会長は17日、開催可否の判断を国連に委ねると発言した。松本氏は中止の理由付けとして国際機関の意向などを「必死に模索している」という。
悲観論が大勢を占める中、無観客での開催を提案する声も上がり始めている。24年のパリ五輪組織委員会のトニー・エスタンゲ会長は20日、仏レキップ紙にIOCは安全に競技ができるよう開催に向けて努力していると語った上で、無観客となる可能性も示唆した。
国内外のスポーツ組織は、独自に感染対策ガイドラインを設けて昨夏ごろから競技を再開している。昨年11月には東京五輪・パラリンピック大会のテストケースとして注目された体操の国際大会が都内で行われ、感染者を出さずに終えた。
開催の是非を巡る5つの要因 | |
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