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中国が「ワクチン外交」活発化、WHOの取り組み進まず空白を利用

  • カンボジアやタイ、フィリピンなど中国製ワクチンを受け入れ
  • 中国は東南アジアで影響力拡大、ワクチン買い占めの西側を尻目に

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世界保健機関(WHO)は豊かな国にも貧しい国にも新型コロナウイルス感染症(COVID19)ワクチンが公平に配布されるよう、数カ月にわたり世界各国に団結を呼び掛けてきた。だがもはや、我慢の限界に達しつつある。

  WHOのテドロス事務局長は18日、製薬企業はWHOの承認取得よりも、利益が最大になる富裕国での承認取得を優先させていると批判。貧困国にワクチンを供給するWHO主導の枠組み「COVAX」を通じた配布が遅れかねないと危機感を示した。

  「世界は重大な道徳的破綻の瀬戸際にある」とテドロス氏は述べ、「公平なアクセスを呼び掛けているのに、一部の国や企業は二者間の取引を優先させ続けている。COVAXを避けて価格をつり上げ、列の先頭に割り込もうとする。それは間違いだ」と続けた。

  この空白を利用し、中国はワクチン外交を活発化させている。王維外相は先週の東南アジア歴訪で、100万回分以上のワクチンを供給すると約束した。米国はWHO脱退を通告したトランプ政権からWHO支持の姿勢を打ち出すバイデン政権に交代する直前だが、中国のワクチン外交は地政学的な勝利を意味する。

  ISEASユソフ・イシャク研究所の上級研究員、イアン・ストーリー氏は、「昨年の『マスク外交』に続き、今年は『ワクチン外交』を中国は展開している」と指摘。「目的は同じだ。友好国を増やして東南アジア諸国への影響力を拡大し、新型コロナの流行が1年前に中国で始まったという記憶を消し去ることだ」と解説した。

  中国製のワクチンは、一部要人の支持も得ている。科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)の有効性データは一貫性に欠いているものの、インドネシアのジョコ大統領は先週、テレビがライブ中継する中で接種を受けた。ブラジルも18日、同社製ワクチン600万回分の配布を始めた。中国製ワクチンを昨年、声高に批判していたボルソナロ大統領は態度を一変させた。

  カンボジアのフン・セン首相は先月、WHOが承認していないワクチンを利用することはないと言明していたが、先週になって方針を転換し、中国製のワクチン100万回分を受け入れた。インドネシアやエジプト、中国などで幅広く接種されているほか、実際に接種した王外相が「健康で外遊できている」ことを同首相は理由に挙げた。

  フン・セン首相は15日に内閣のニュースレターに掲載されたメッセージで、「この悲惨なパンデミックから自国と自国民を守らなければならないため、もはや待つことはできない」と表明した。

  このほか、タイはシノバック製ワクチン200万回分を購入。フィリピンとミャンマーに対しては、中国は合計80万回分を寄付すると約束した。

  途上国の多くは自国の規制当局に科学的データを精査する能力がなく、WHOの承認に依存することが以前から多かった。昨年末時点でWHOの緊急使用許可を受けた新型コロナワクチンはファイザー・ビオンテック製のみ。英調査会社エアフィニティーによると、高所得国はファイザー製ワクチンの85%、米モデルナ製ワクチンの全てを買い占めている。

  中国はWHOの取り組みに支持を表明しているものの、中国製ワクチンはCOVAXの調達リストに入っていない。シノバックの広報担当者は、WHOの事前資格審査に向けてデータの提出を始めたところだと説明した。WHO検査官のグループが中国を訪問中で、隔離期間完了後に生産施設の視察も行う予定だと語った。

  WHOが電子メールで回答したところによると、COVAXは依然として年内に20億回分のワクチンを全世界に配布する計画を維持しており、7月までに全参加国の人口の3%に接種させることを目指している。

原題:
As WHO Fumes at Western Drugmakers, China Fills Void on Vaccines(抜粋)

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