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窮地の飲食店は8時の閉店要請無視、不動産や金融に影-緊急事態

更新日時
  • 時短営業では「事業、雇用の維持は無理」と飲食チェーン経営者
  • 借り入れ金は上限、コロナ禍がことし1年続けば「甚大な危機に」
Gonpachi Nishi-Azabu restaurant in Tokyo. 

Gonpachi Nishi-Azabu restaurant in Tokyo. 

 Source: Global-Dining Inc.

Gonpachi Nishi-Azabu restaurant in Tokyo. 

 Source: Global-Dining Inc.

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菅義偉政権による2度目の緊急事態宣言初日の8日午後11時半の銀座。金曜日にもかかわらず人影はまばらだ。空車のタクシーが長蛇の列を作り、飲食店が軒並みシャッターを下ろす中、「カフェ・ラ・ボエム 銀座」の明かりはひと際目立っていた。

  この店を運営するグローバルダイニングの長谷川耕造代表は「午後8時までの営業では事業、雇用の維持は無理だ」などとして、翌9日未明まで店を開いた。小泉純一郎元首相とジョージ・W・ブッシュ元米大統領が会談に使った系列の和食レストラン「権八」西麻布店も通常通り営業した。

Pandemic Places Tokyo Under State of Emergency

1月8日夜の渋谷の交差点

  「GoToイート」が中止され、年末年始の繁忙期を逃した飲食事業者は新型コロナウイルス感染の急拡大を受けた2度目の宣言で窮地にある。政府は当初、首都圏の1都3県だった宣言の対象を愛知県、大阪府など7府県にも拡大。いずれも期間は2月7日までで、各自治体は外出自粛のほか、飲食店には午後8時までの時短営業を要請した。

  大手ファミリーレストラン「サイゼリヤ」の堀埜一成社長は13日の決算会見で「恐ろしいのは大手がつぶれること」であり、大手にも補償を広げないと「しゃれにならないことが起こる」と危機感を示した。飲食業の裾野は、食材生産者や飲料メーカーから、厨房(ちゅうぼう)設備やおしぼり業者、店舗が入る不動産業者まで幅広い。

  居酒屋「博多劇場」などを展開する一家ダイニングプロジェクトは、1都3県にある約70店をいったん時短営業としたが、9日から大半を通常に戻した。武長太郎社長は12日、同社ウェブサイトで「雇用を守ることもわれわれの使命だ」との認識を示した。

  感染リスクに関連して、夜だけでなくランチの時間帯も不要不急の外出自粛を呼び掛けた西村康稔経済再生担当相の12日の発言に、時短要請に応じているサイゼリヤの堀埜社長は「ふざけんなよ」と不満を爆発させた。事業存続をかけた飲食業者と感染を抑えたい政府はコロナ対応でともにジレンマを抱えている。

首の皮一枚

  大手飲食業者の悲痛の声を受け、東京都の小池百合子知事は18日、時短要請への協力金の給付対象を中小飲食店だけでなく首都圏3県と同様、大手チェーンなどにも広げる方針に転換した。都は1店舗当たり1日6万円、1カ月間で最大186万円を用意している。ただ、規模が大きな店舗にとっては足りない可能性もある。

  東京商工リサーチによると、政府の支援策もあり、2020年の倒産件数は過去50年間で4番目の低さとなった。しかし、インバウンド需要の消失や外出自粛の影響が大きい飲食業や宿泊業を含むサービス業に絞ると2596件と最も多く、5年連続で前年を上回る。

  都内で洋食店「グリル 満天星」を展開するファインフードシステムズの三宅伸幸社長は、「飲食店が倒産すると不動産オーナーが傷み、不動産オーナーが傷むと金融が傷む。巡り巡ってみんなが傷む」と負の連鎖を懸念する。金融機関からの借入枠は上限まで使い資金を確保済みだが、コロナ禍が今年1年続けば「甚大な危機に陥る」と危惧している。

  銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会の竹沢えり子事務局長は「食事ついでの買い物がなくなった」と言う。バッグや洋服を販売する銀座大黒屋の安西慶祐社長も、飲食店や観光業の苦境ばかりがクローズアップされているが、都心の繁華街にある物販店も厳しいのは同じだと話す。

  菅内閣の成長戦略会議メンバーで慶応義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏は、昨春の緊急事態宣言以降、失業者相当の休業者が存在し、補助金で支えられていると指摘。企業は「一生懸命止血し、首の皮一枚」の状態にあると語った。日本企業の債務は昨年3月からの3カ月でバブル崩壊時を上回るペースで増加したという。

飲食店いじめ

Prime Minister Yoshihide Suga Delivers Policy Speech As Diet Opens The New Session

菅義偉首相

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  政府・与党は、新型コロナ感染防止策を定める特別措置法改正案を18日召集の通常国会に提出。財政支援を明記する一方、罰則規定を新設する。西村再生相は17日のNHKの討論番組で3兆8000億円の予備費があり、雇用を守るため臨機応変かつ機動的に対策を打つ考えを明らかにした。

  菅首相は13日の記者会見で、「1年近くの経験に基づいて、効果があるものは全て対象とし徹底的な対策を行う」との考えを表明。特に飲食については「かねて感染リスクが最も高いと言われている」として午後8時までの時間短縮を要請すると改めて強調した。

  政府の経済財政諮問会議メンバーであるサントリーホールディングスの新浪剛史社長は、飲食店を一律に「いじめてはいけない」と指摘する。自治体が各店舗の感染対策を細かくチェックし、補助金の給付や要請の仕方についても、店舗の規模や期待される対策の効果に応じて差を付けるべきだとの考えを示した。

  ファインフードの三宅氏は、政府の感染対策が厳しくなるたびに「またわれわれがダメージを食らうのかと毎日、ニュースが怖い」と嘆いた。

(第10段落に物販店の状況について追加しました。洋食店の名称を「グリル 満天星」に訂正済みです)
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